中国インターネット界大御所の人間模様
時代が変われば人も変る?

起業家は無数でも、大御所と呼ばれる椅子には限りがある。馬雲、李彦宏、馬化騰、雷軍、周鴻?、丁磊、張朝陽……彼らインターネット界の大御所たちの中で財力は誰が一番なのか。一声呼び掛ければ多くの人々が応じる力を備えているのは誰なのか。勢いがあるのは誰なのか。誰が期待の星なのか。

 

《財力比較》

突出する李彦宏、馬化騰

2013年3月、フォーブスが2013年の全世界億万長者ランキングを発表した。中国のインターネット界では百度(Baidu)の李彦宏と騰訊(テンセント)の馬化騰が最上位で、それぞれ172位と173位にランクインしている。

ランキングによると、李彦宏の純資産は69億ドル(約6842億円)で、依然中国国内のインターネット分野で「トップ」となっており、馬化騰が純資産68億ドル(約6743億円)でその後にぴったり着けている。特筆すべきは、この1年来、馬化騰の財力の伸びの速さは驚がく的で、李彦宏の「トップ」の座を脅かしている。

財力第3位の座を射止めたのは馬雲で、純資産34億ドル(約3371億円)、丁磊が第4位で純資産30億ドル(約2975億円)だ。人々を驚かせたのは小米科技(北京科技術有限責任公司)CEOの雷軍が純資産17億5000万ドル(約1735億円)で初めてフォーブスに登場し、第5位を占めたことだ。

 

《出身別》

「ビジネス畑」「技術畑」に強みと弱み

現在の中国インターネット界の大御所は2派に分けられる。1つは技術畑出身の「技術派」で、李彦宏、馬化騰、雷軍、周鴻?が入る。彼らは相対的に考え方がシンプルで、控えめな実務派であり、何より商品の研究開発に熱心だ。馬化騰はスポットライトを浴びるのを好まず、発言も多くない。だが周鴻?は相手の気持ちにお構いなく話すので、至る所に敵を作っている。

もう一方は「ビジネス派」で、例えば師範学院の外国語学部を卒業した馬雲や、復旦大学の経済学部を卒業した陳天橋などがそうだ。こちらはビジネスセンスが鋭く、頭も柔軟で世渡りに長けており、どの業界でも成功するタイプだ。

技術畑出身の李彦宏や馬化騰は、その実力は甲乙つけがたく、また同様に野心満々だが、2人とも高い志を持って国際市場に目を向けている。

馬化騰は微信(WeChat:中国版LINE)の国際化に努力しており、李彦宏は百度の国際マーケットでのシェアアップに力を注いでいる。だが、馬雲の野心は大部分の起業家の枠を超えており、彼の現在の地位が破られるのは、実に容易なことではない。

 

《影響力》

馬雲、張朝陽はそこそこ

大御所たちの影響力はもちろん彼らの実力と切り離せないが、彼らの性格や事に当たるスタイルは周囲に極めて大きな影響を及ぼしている。

馬雲は財力的には3番目だが、彼のインターネットに対する敏感な嗅覚と積極的な自己アピールが彼の財力面での弱点を補い、李彦宏、馬化騰とともに「三巨頭」と呼ばれている。

教師の経験がある馬雲は話し上手で、極めて雄弁だ。彼が話せば、聴衆は学生になったような気分にさせられる。馬雲は人脈を掴むのにも長けている。彼は、「自分は技術は分からないが、管理には李彦宏や馬化騰よりも長けている」と話す。だからこそ、この世界では李彦宏や馬化騰が彼に一目おくだけでなく、多くの人が皆、彼をもてはやす。すなわち、馬雲は年齢、経歴、実力が揃っているということだ。しかも、彼は政府との関係も非常に協調的だ。

影響力という点では張朝陽も非常に特徴的だ。彼はとても目立ちたがりで、美人のスターと付き合うことを喜ぶ。エンターテイメント業界と付き合うことで、自分自身も花形CEOになることに熱心で、さながら捜狐(SOHU:中国の代表的なポータルサイト)のイメージキャラクターだ。

馬雲や張朝陽に比べると、李彦宏や馬化騰は控えめで目立たず、何時も危機感を漂わせている。2人は表面上はともかくとして、実際は陰で密かに争っている2013年の両会では一方は新たに全国人民代表大会の代表に当選し、もう一方は全国政治協商会議の委員に当選するという、政治面での活動も甲乙つけがたい。

丁磊もまた控えめな人間だ。彼は環境保護やエコに大変熱心だ。また、養豚が好きで、大規模にやっている。最近、網易(ネットイーズ:中国の代表的なポータルサイト)がクラウドミュージックを打ち出したことで、彼の動きは活発になってきた。

周鴻?は「破壊的イノベーション」の概念にこだわって中国のインターネット業界を掻き乱しており、そのため敵の数も数え切れない。彼は「自分が倒れることを多くの人が望んでいる」と称している。

周鴻?と李彦宏との恩讐は10年に及ぶ。さそり座の2人は10年間に4度矛先を交えた。最初の3721と百度との検索エンジン争いから3Q大戦、小3Q大戦、3B大戦まで、どの戦いも中国のインターネット業界に大波を惹き起こした。

インターネットの三巨頭が互いに協調し、讃えあっているのと比べると、周鴻?はまるで「四面楚歌」であり、誰からも嫌われている。 一匹狼の周鴻?は今後、すべての人物を押しのけて群龍の主になれるのだろうか。

 

《今後の展望》

雷軍、張小龍が最後の頑張り

インターネットの未来はどこに行くのか? それは間違いなくモバイルインターネットだ。例えばクラウドコンピューティング、モバイルソーシャルネットワーク、モバイル決済やモバイルバンキング、イーコマース、デジタルコンテンツ、推奨エンジンとディスカバリーエンジン、人工知能およびビッグデータ革命などだ。

百度はコストを顧みず事業を拡大し、モバイルインターネット入口のほとんどを占有している。微信(WeChat)のユーザーが3億人を突破したことで、馬化騰は米国、東南アジアに進出している。彼は、米国市場を占領してこそ国際市場の最先端に立てるということを理解しているのだ。

陳天橋は26歳で起業し、30歳ですでに40億元(約642億円)を超す額を稼ぐ身分だった。だが、最近の彼はいくらか孤独だ。「盛大」は長年にわたって総合ゲーム、音楽、動画、文学と映画など多くの業務を通じてネットディズニーランドをつくるという壮大な夢を抱いていた。だが、昨年来、「盛大」がこの夢からますます離れてきている。

他にも2人の人物について語らねばならない。1人は雷軍、もう1人は張小龍で、2人とも中国の「(スティーブ)ジョブズ」と呼ばれている。

雷軍はインターネット界のベテランの大御所だが、実はソフト産業からこの業界に移った人物だ。現在、彼は小米や、決済、サーバー、ゲーム、オンライン教育、デジタルコンテンツ、オンライン医療などを含むモバイルインターネットのそれぞれの側面への布石を通じて独自のモバイルインターネット帝国を形成している。

張小龍は15年前、中国でもトップ10に数えられるプログラマーだった。現在、彼は微信(ウェイシン、WeChat)の生みの親として、インターネット界の「無冠の帝王」と呼ばれている。彼はほとんど大衆の前に姿を現さないが、プロダクトマネージャーやユーザーにとっては中小商店主にとっての馬雲と同様、あたかも神のような存在だ。馬化騰の優れているところは、自分の回りに別の「神」が現れることに鷹揚で、それを養護することだ。今後、張小龍が独立して起業し、より大きな潜在能力を発揮するだろう。

もちろん、現在のインターネットの大御所模様にあるいはすぐにも変化が生まれ、次世代の大御所に取って代わられるかもしれない。例えば覇気溢れんばかりの劉強東、準備万端の王小川などだ。いずれにせよ、時代がヒーローを生み、ヒーローも世につれて変化する。今後も新たな人間模様が展開されるだろう。