「モバイル」は一種の病気?

「恋は一種の病気」という歌のタイトルは、モバイルネット時代の世相のようだ。携帯族の携帯依存は中毒となっている。パソコンメーカーとその関連企業は業績悪化という現実に直面している。モバイルネット時代にシェアを広げようと、大企業から零細企業に至るまで、製品の研究開発と利益モデル革新という「陣痛」の真っ最中だ。

 
パソコンがタブレット端末に遭遇

携帯依存は治らない

先週末の昼、私は3歳の娘と食事に行った。料理を待つ間に私が携帯を手に取ると、娘はすぐに「携帯を放して! 」と叫んだ。私は恥ずかしい気持ちでいっぱいになった。知らず知らずの間に、私も「携帯族」の一員になっていたのである。家族との時間、読書の時間は少なくなり、運動の時間はさらに少なくなった。

地球上で最も遠い距離は、携帯をいじっている人のそばにいる時に感じられる。回りを見ると、スマートフォンやタブレット端末の流行が携帯族を激増させている。彼らはモバイルネットの中毒であり、まちがいなく一種の病気である。携帯に生活状態をコントロールされていて、頚椎の痛みや指の硬直、幻聴だけでなく、性格が変わってしまい、精神病や神経症になってしまうことさえある。

ある調査によると、現在スマートフォンでウェイボー、ゲーム、メール、ネットサーフィンをしている人は増える一方で、そのうち77%が毎日12時間以上画面を見ていて、33.55%が24時間オンにしており、65%が、携帯が身近にないと落ち着かないという結果であった。

スマートフォンとタブレット端末がわれわれの生活や仕事を便利にしてくれたり、娯楽を提供してくれていることは間違いない。しかし、自分が携帯に触れる時間や頻度をうまく調整することによって、モバイルネット時代のスピーディーさと長所をさらに享受できるのである。

 

パソコンの不人気

市場でささやかれる「パソコンはもう終わった」という断定は誇張しすぎではあるが、パソコンがモバイル端末の大きな波を前にして戦わないというのも事実である。世界のパソコン市場の需要は軟調で、出荷量も減っている。それだけでなく、伝統的パソコンメーカーにとって現実的な問題は、パソコンの半導体チップメーカーが今後モバイル市場へと方向転換していることである。

大量の資本がモバイルネットにシフトし始めており、パソコンのソフトウェア開発と部品生産関連企業への打撃は大きい。マイクロソフトは力を入れたウィンドウズ8で劣勢を挽回すべく、ハードウエア製造メーカーに、アップルのiPadミニ、サムソンのギャラクシータブ、グーグルのネクサス7、アマゾンのキンドルに対抗してほしいとしている。しかし、多くのパソコンメーカーは、ウィンドウズ8に失望を示し、パソコン陣営のタブレット端末との競争に手を差し伸べていない。

 

モバイル業界の過酷な競争

インターネット分野で利益を上げるのが難しいなかで、モバイルネット分野はさらに苛酷さを増している。大規模なユーザーに使用料を課金することは難しく、新製品の研究開発と新しい利益モデルの開拓が大小を問わずネット企業が直面している最大のプレッシャーとなっている。まさに騰訊(テンセント)の馬騰化CEOが言うように、「モバイルネットという大きな潮流を目の前にしているからといって、少しでも気を抜けば1カ月で船が転覆してしまう」状況である。

良い製品を持てば、企業の覇者としての地位を固められる。目下、並ぶもののない騰訊のスマートフォン用メッセンジャーアプリ・微信(ウェイシン、日本のLINEと同じ)が騰訊帝国を築いたのは間違いない。奇虎360の周鴻?CEOは「当社の50の製品を足しても微信にかなわない」とうらやみながら評価している。

だが、馬CEOは世界インターネット大会の席上で、「多くの会社を大きく強そうだと見てはいけない。実際には一撃にも耐えられないかもしれない。だから、業界の劇的変化に畏敬の気持ちを持つべきだ」と警鐘を鳴らしている。

 

絶えざるイノベーション

「倒産へは永遠に30日間しかない」とは百度の有名な信条である。国内の検索エンジンのトップ企業として、百度はモバイルネットの多くの分野に何度も参入を試み失敗している。傘下に微信を持つ騰訊、ウェイボーを持つ阿里に対して、百度は自社がさらに強力なモバイルネット製品に戦略をシフトする必要があると認識している。現在、百度はPPSを3億7000万ドル(約381億7105万円)で買収し、PPSを愛奇芸に吸収合併すると発表した。買収の目標は明らかで、百度の動画業務をモバイル端末に移動させる戦略である。

「昨年、我社は新興企業であると思っていたが、今年はすでに伝統企業となっている。業界の変化は非常に大きい」と盛大ゲーム社の銭東海総裁は語り、伝統的なゲーマーが急速に携帯ゲームにシフトしているとした。

競争が激烈なモバイルネット市場には、常勝将軍はいない。止まらない技術革新(イノベーション)があるだけだ。新製品を研究開発する過程では生み出す痛みは免れない。生き残るか、滅亡か。成長か虫の息か。モバイルネットが圧倒的な趨勢のなか、モバイル利益モデルを困惑しつつ求める家庭で、ネット企業はシェアの強奪に、買収に、新製品開発に、新しい利益モデル開拓に挑んでおり、プレッシャーは大きいが、しかし希望はさらに大きいのである。