行政微信(ウェイシン)は「威信(ウェイシン)」となるか

今年1月、日本のLINEのようなスマートフォン用無料メッセンジャーアプリである微信(ウェイシン。英語:WeChat、ウィーチャット)のユーザーが3億人を突破した。5月12日、一部の微信ユーザーが「今日は母の日、すべてのお母さん、母の日おめでとう! 」という音声メッセージを受け取った。可愛い子どもの声が全国の子どもたちの気持ちを表した。これは南京市党委員会の宣伝部による公式微信アカウント「南京発布」が母の日当日に発信したメッセージである。行政ネットでの発信がはやっている昨今、微信の台頭は間違いなく官民交流に新しいチャンネルを提供している。行政微信は静かに中国人の生活に入ってきている。

 


ウルムチ交通警察の行政微信をスマートフォンで見る市民(亜心網より)

行政微信

住民と「指先で会話」

「平安梅州」は広東省梅州市公安局の行政微信公式アカウントで、24時間情報を提供している。この微信に注目した市民は数字を打ち込むことで、110番通報業務、交通管理、行政事務などについて知ることができる。微信ユーザーは、「平安梅州」は身近にある「携帯できる秘書」になったと語る。

「平安肇慶」微信を開設したメンバーである肇慶市公安局民事警察の彭家祥は、微信を利用した質問は微博(ウェイボー。中国版ツイッター)よりも便利であり、深夜でも自動的に返信できると紹介している。約70%の問い合わせ業務がバックヤードのプログラムによって自動的に回答でき、その他の30%は自動的に回答できず、管理者が一つひとつ回答している。

最新の大まかな統計によると、全国で行政微信アカウントはすでに1200余に達しており、全国的に広がっている。

清華大学公共関係および戦略メディア研究所の高級研究員であり、騰訊(テンセント)の公開微信「行政微信ウオッチ」の侯鍔首席評議員は、行政微信は行政と住民の交流を進めるもので、理論上では時間差ゼロ、距離ゼロを実現しており、特に社会世論、ニセ情報やデマさえあるなかで、行政側の直接の発言を優先的に文明の利器の助けを借りて即時に伝達し、透明度を上げ、公的信頼を打ち立て、「指先での会話」を実現して官民間の相互信頼を深め、中国の転換期における社会管理と総合管理のリスクとコストを軽減させるべきである、としている。

 

微信とウェイボー

長所を合わせられるか

先日、新浪が発表したところによると、行政によるウェイボーの書き込みはすでに6万件に達しており、官民のコミュニケーションに重要な役割を担っているという。今、行政微信が盛り上がっているが、行政ウェイボーと比べ、その優位性はどこにあるのだろうか。

「微信はウェイボーと違い、ユーザーの分類ができるので、興味を持つ住民にスポット的に情報を送れるし、その他の情報に淘汰されることもなく、ユーザーはいつでも見られる。また、微信ユーザーの通信内容はプライバシーが守られ、第三者に見られることもない」と、広東省中山市共産党青年団市委員会の微信担当者である肖冠喬は言う。

広州市公安局宣伝処の張勝春副処長は、「微信ではウェイボーのように毎日数十もの情報を送ることはできず、行政微信の公式アカウントとして1日に1つの重要メッセージしか送ることができない。というのは、行政微信はポイントからポイントへのメッセージ送付であり、1対1やカスタマイズよりも優れたコミュニケーションになっているからだ。我々は主に微信によって住民個人の具体的な現実問題に回答している」としている。

「平安肇慶」微信公式アカウント開設後、多くの微信ユーザーが音声形式で「もしネット上で身分証が他人に盗用されたらどうするか」、「省外の戸籍の暫定住民票と身分証で香港マカオ通行証を取れるか」などの問い合わせを寄せてくるという。彭家祥は、「これが微信のいいところで、音声によるコミュニケーションは味気ない文字よりも親しみがある」と述べている。

侯鍔首席評議員は、「行政機構はウェイボーと微信の両者のメディア性と魅力を理解、把握し、両者の長所を合わせて、官民の交流を促進し、行政サービスの実務レベルと能力を改善しなければならない」と指摘している。

 

ネット行政

「有名無実」を免れる

行政微信が盛り上がっているとはいえ、その発展を制約する要素がなお残っている。現在80%の行政微信が、発信するだけで対話になっていないというデータもある。また、政務微信の認証にも大きな抜け穴と弊害が存在している。

微信の相互コミュニケーションについて、中国伝媒大学ネット世論研究所の李未檸副所長は、どのように新メディアを使用するかが重大な課題だと強調する。ネット行政は「有名無実」であってはならず、行政側は自ら発信する情報を提供するほか、住民の関心に配慮し、即時に住民の疑問に回答し、関連情報を掘り下げて公開しなければならない。

認証については、現在広州市ではすでに行政微信が17アカウントあるが、そのうち4アカウントは認証が必要だということで、「500ユーザーで認証できる」という制限に苦しみ、多くの行政微信は遅々として正規のアカウントとなっていない。

それについて侯鍔首席評議員は、騰訊の微信チームは関連規定を修正し、行政微信開設時にすぐ身分を確認し認証を行い、同時に審査を免除する「グリーン急行レーン」を開設し、行政微信が現在1日に1つのメッセージしか送れないという制限を拡大できるようにすることを認めた。

侯鍔首席評議員は、「いかに微信(ウェイシン)が「威信(ウェイシン)」を確立するか、ポイントは一つひとつの行政微信に実質的な効果を上げさせることだ」とし、「よって行政微信は現実問題を解決するつもりで、正直に一つひとつのメッセージに応えなければならず、微信と各業務とが深く結合しさえすれば、住民の信用を得られ、微信に本来の力を発揮させることができる」としている。

 

*「微信」と「威信」の中国語の発音は同じ