造語ブームが「言葉メディア」を生む

「元芳体」(時代劇ドラマをまねた言い回し)、「圧力山大」(プレッシャーが山のように大きい)など、流行語には新しいストーリーが背景にあり、無数のネットユーザーの頭脳が凝縮されている。人気の交流サイト『互動百科』では、現在数百万人のネット新語の「知識ボランティア」が「言葉」という独特の形式で現在進行形の歴史を記録している。それにともない、新しい概念として「言葉メディア」が生まれている。

造語好きのネットユーザー

『互動百科』の潘海東CEOは、ネット新語には事件のキーワード情報が凝縮されており、またネットユーザーの視点と立場も含まれるなど、メディアの属性を備えているため、「言葉メディア」と呼んでもいいのでは、と語る。

一般人のネット造語ボランティアは何かの専門家や、特定の領域の愛好者である。新語を編集し、流行語として伝え、分かち合いの精神でネット時代の知識普及の代表者となっている。

「日々進化する知の世界にあって、国家建設のためには科学技術の先進性だけではなく、科学知識の普及が不可欠です。われわれは正確な知識を普及させてくれる人たちに感謝しなければなりません」と、中国科学院計算所の研究員である中国中文情報学会の倪光南理事長は評価している。

データによると、『互動百科』のウェブ上でユーザーが創り出した単語は、2008年の60万個から2012年末の681万個にまで増加し、文字量は68億7千万に達した。

ネット上の「グローバル・ブレーン」

『互動百科』は2005年からこれまでに延べ100億人の検索リクエストに応えており、この数は全国の公共図書館5年分の入場者数であり、1250館の国家図書館、77冊の『中国大百科全書』、61冊の『ブリタニカ百科事典』に相当する。

人々は新語の作者や知識の伝達者となることも、情報を享受することもできる。各業界の専門家、各領域の愛好者が、専門的知識を紹介したり、問いに答えたりして、共同で垣根のない「知識大学」を建設しているのである。

「ネットは神経のように、十数億人の大脳をつなげてグローバル・ブレーンに変えたのです」と倪光南理事長は言う。

 伝統的メディアとの融合

「言葉メディア」の情報拡散は、直接的で迅速、低コストであり、新しい知識伝達媒体、伝達ルートをもたらし、ネットユーザーの断片的な閲覧スタイルにマッチしている。

言葉はまさにこの時代を記録している。先日行われた「知識中国2012年度人物」賞の授賞式の席上、新聞出版総署情報センターの劉成勇副主任は、国家の重大プロジェクト「中華文字庫」の作成に国は5億元(約66億円)を投資し、中国の歴史上のすべての古漢字、現代漢字、少数民族文字を収録し50万字からなるデータバンクを完成させることを明らかにした。

とはいえ、「言葉メディア」の隆盛は伝統的なメディアの没落を意味するものではなく、2つのメディアのどちらかがもう一方に取って代わるというものでもない。境界を超えて融合することが今後の発展的な方向であるというのが多くの専門家の見方である。