中国はなぜ国際的消費中心都市を建設するのか

上海

商務部の王文涛部長は7月に行われた国際的消費中心都市活動推進会で、「国務院の承認を経て、上海市、北京市、広州市、天津市、重慶市で、全国に先駆けて国際的消費中心都市の育成・建設を展開する」と発表した。中国はなぜ国際的消費中心都市建設のテスト事業を行うのか。なぜこの5都市に建設されるのか。中国の対外開放構造にどのような影響を与えるのだろうか。

 

国際的消費中心都市とは何か

まず、国際的消費中心都市とはいったい何だろうか。

このほど打ち出された関連の指導意見によると、国際的消費中心都市は現代の国際化した大都市がもつ中核的機能の1つである。それは消費資源の集積地であり、さらにはその国の、ひいては世界の消費市場の先端であり、消費による強いけん引・誘導の役割をもつものだという。

2019年初め、商務部が国際的消費中心都市建設テスト事業の展開を打ち出すと、各都市がすぐに呼応した。報道によると、北京、上海、深圳、広州、重慶、蘇州、成都、寧波など域内総生産(GDP)が1兆元(約17兆円)を超える都市20数カ所が消費中心都市の座をめぐる戦いに乗り出したという。

重慶

 

なぜこの5都市なのか

国際的消費中心都市の第一弾として最終的に選ばれたのは北京、上海、広州、天津、重慶だった。なぜこの5都市なのか。

<1>地理的条件

1つ目の理由は、地理的に絶好の条件が整っていることだ。

上海には世界10大港湾のトップに立つ上海港があり、商業で港湾が栄え、港湾で都市が栄えてきた。北京と天津は「首都経済圏」である京津冀(北京・天津・河北)の2つの中心であり、連動効果を生み出しやすい。広州は粤港澳大湾区(広州、仏山、肇慶、深圳、東莞、恵州、珠海、中山、江門の9市と香港、澳門<マカオ>両特別行政区によって構成される都市圏)の中核都市の1つで、珠江デルタの製造業エリアや粤港澳大湾区の開放的システムとリンクして、消費の面でグローバル市場によりよく融合することができる。重慶市は5都市の中で唯一の中西部地域の都市で、東と西、南と北をつなぐ役割を果たしている。

<2>規模と質

2つ目の理由は、規模の大きさと質の高さだ。

今年上半期の社会消費財小売総額を見てみると、上海は前年同期比30.3%増の9048億4400万元(約15兆3823億4800万円)に達して、全国のトップに立った。北京は同21%増の7227億5000万元(12兆2867億5000万円)、広州は同19%増の5034億4800万元(8兆5586億1600万円)、重慶は同29.9%増の6893億元(約11兆7181億円)、天津は同17.2%増だった。

<3>対外開放度

3つ目の理由は、対外開放レベルが高いことだ。開放レベルの高さが5都市の共通性だ。

中国国際貿易促進委員会研究院の趙萍副院長は、「この5都市が擁する国際的ブランドの製品とサービス等はいずれも全国トップレベルで、優れた国際化の基礎を備えている。具体的には、北京、上海、広州は中国国内都市で開放度が最も高い。天津は近代に中国で最も早く通商のために開かれた港湾都市であり、外資が早くから進出し、豊富な商業貿易の基礎を有する。西部大開発の戦略的支点である重慶は、『一帯一路』(the Belt and Road)と長江経済ベルトの連結点であり、その戦略的位置づけがますます重要になっている」と述べた。

成都

 

国際的消費中心都市を建設する意義は何か

今年上半期の全国の社会消費財小売総額は同23%増の21兆1904億元(約360兆2368億円)に上り、国内総生産(GDP)の増加に対する最終消費支出の寄与度は61.7%になった。

専門家は、「感染症の影響の中で、中国国内市場のポテンシャルが持続的に発揮されている。国際的消費中心都市の建設に力を入れることは、消費の振興、経済の持続的で安定した成長の推進に必要な現実的ニーズであり、国内と国際的な2つの循環『双循環』をつなげ、新たな発展構造の構築を加速させるために必要なことでもある」との見方を示した。

広州

 

どれほどの役割を担うのか

専門家は、「現在、中国経済は高度成長から質の高い発展へとモデル転換しているところで、国際的消費中心都市を建設し、経済発展における消費の役割を高めることは、ニーズがサプライをけん引し、サプライがニーズを創造する高水準の動態バランスを促進し、当該都市とその周辺地域の経済の質の高い発展を推進する上でプラスになる」と述べた。