注目される中国経済をめぐる疑問に回答

世界第2位のエコノミーで、世界経済の成長に対する1年当たりの寄与率が30%以上の中国。その経済に世界中の注目が集まっている。中国経済の動向は今後どうなるのか。不動産価格は上がるのか、下がるのか。中国から外資が大量に流出しているのか。人民元のレートの動きは正常な範囲なのか。中国国内外が注目するこれら中国経済をめぐる疑問の答えは、3月5日に全国人民代表大会の審議に提出された政府活動報告から見つけることができる。


3月5日に人民大会堂で開幕した第12期全国人民代表大会(全人代)第5回会議

17年の中国経済の行方

2010年に10.6%伸びた中国の経済は15年は6.9%、16年は6.7%と、成長の速度が鈍化しているものの安定している。では、17年の中国経済はどうなるのだろうか。

中国政府活動報告によると、今年、国内総生産(GDP)は約6.5%成長すると予測されており、さらにその上の数字を目指して業務が実施される。

全国政協委員を務める、中国国家発展改革委員会の張暁強元副主任は、「各種指標からして、経済成長の鈍化が底をうったのは明らかだが、注目すべきは経済の質と効果の向上、発展エネルギーの転換などの効果が顕著である点」と成果を強調する。

今年に入って以降、複数の先行指標が継続して好転している。例えば、2月、製造業の購買担当者景気指数(PMI)は51.6%で、5カ月連続で51%以上を保っている。また、1月の工業の生産者物価指数(PPI)は前年同期比6.9%増で5カ月連続の増加となり、貿易のデータもV字回復へ向かっている。

中国は今後も「安定を保ちつつ経済成長を促す」という原則を堅持し続け、金融リスクの予防・防止を重要な位置に据える。全国政協委員を務める、大唐西市集団の呂建中・董事局主席は、「つまり、本物の成長を一層追求しなければならないということ。経済成長はそれほど速くないかもしれないが、企業家の予測は安定する」との見方を示す。

不動産価格の行方

昨年不動産市場の分化が際立ち、北京、上海、広州、深圳などの一線都市と一部の二線都市の不動産価格が高騰した。一方、三、四線都市は在庫処理の圧力が依然として大きい。では、今年の不動産価格はどのような動きになるのだろうか。

政府の業務報告によると、現在、三、四線都市は不動産の在庫が依然として多く、比較的安価な分譲住宅と都市に移動する人の不動産購入の需要をサポートしなければならない。また、不動産市場が長期にわたり安定して、健全に発展するためのメカニズムの構築、整備を加速しなければならない。

昨年9月以降、複数の都市で不動産価格抑制政策が集中的に打ち出された。中国国家統計局の統計によると、今年1月、15の一線都市、二線都市のうち、11都市の新築の商品住宅の価格が前月比で下落し、北京、杭州、成都の価格は同比で横ばい、広州が同比で0.6%増だった。

全国人民大会の代表を務める、全国人民大会財経委員会の辜勝阻・副主任委員は、「今年、不動産市場は、『価格高騰の抑制』と『在庫削減』が重要課題で、国情にマッチし、市場の規律に適応した基本制度や長期にわたって効果を発揮するメカニズムの構築を加速しなければならない。また、課題の種類に適する指導を堅持し、都市に合った対策を講じ、地域、都市によって、土地、金融、税収などの面で状況に応じた調整を行うことで、不動産市場を健全に安定して発展させなければならない」との見方を示す。


廈門、建築中のマンション群

中国は魅力のある投資先

報告によると、海外からの投資環境の最適化に力が入れられている。開放度が一層拡大されれば、中国は海外の投資家にとって最も魅力ある投資先となるに違いない。

全国人民代表大会の代表を務める、娃哈哈集団の宗慶後・董事長兼総経理は、「中国経済の発展のポテンシャルは大きく、外国の投資家にとっては依然として魅力がある。海外からの投資環境を最適化し、クオリティの高い外資を引き込めば、中国経済、特に実体経済の新たな発展を推進することができる」との見方を示す。

張小済氏は、「中国はすでに、『外資の呼び込み』から『外資の選択』の段階に入っている」と指摘する。高性能、高品質の商品、サービスを提供することや中国の消費市場を重視している外資系企業は、対中国投資が適している。

経済学者の張燕生氏は、「新たな時期に入り、外資を呼び込むためには新たな思考パターンが必要」と指摘する。報告は、高基準、高水準の自由貿易試験区が11カ所設置され、外資の呼び込みの「制度の高地」が構築されるとしている。その他、産業発展の長期的計画を少しでも早く策定し、的を絞って、段取り良く、産業の開放を推進し、世界のバリューチェーンにおける中国の地位を向上させなければならない。

人民元レートの動き

報告によると、為替の市場化、改革の方向を一貫して保ち、世界の通貨体系における人民元の安定した地位を保たなければならない。

1月、人民元は対ドルで小幅高となった。全国政協委員を務める、交銀施羅徳基金公司の謝衛・副総経理は、「対ドルでずっと人民元安となることはない。その上がり下がりは正常な範囲。ドルがずっと強い状態であることは難しく、人民元にとっては調整スペースが残されている」と説明する。

全国政協委員を務める、中国人民銀行の易綱・副行長によると、「他の両替可能な通過と比べて、人民元レートの動きは全体的に安定している。中国は責任感ある大国で、人民元安を利用して輸出を促進したり、通貨安競争をしたりすることは絶対にない。全体的に見て、中国の政策は人民元を合理的な範囲で基本的に安定させることを目指している」という。

全国政協委員を務める、中国国家為替管理局の潘功勝・局長は、「為替市場で波が生じるのは普通のこと。波も短期的なものばかりで、最終的に通常の範囲に戻る。為替市場は安定しており、良い方向へ向かっていることが日に日に際立つようになっている」と強調している。