中国の「中産階級」を定める基準は何か

中産階級を定める基準は何か。中国ではどんな人が中産階級と言えるのか。中産階級と呼ばれる人々は、自らが望んだ生活を送っていると言えるのか。もっとも、自らがどんな生活を望んでいるかわかっている人もあまりいないかもしれないが。

中産階級に関する調査によると、中産階級を自認する家庭の収入は月4万5202元(約75万8500円)とされる。こうした人々の生活は、財政的には余裕があっても、生活の保障は十分でないことも多いという。

ではこの月収4万5000元(約75万5100円)の中産階級家庭が送っている生活はいったいどのようなものか。データによると、中産階級を自認する人々は比較的自信を持っており、今の生活に満足していると答えた人は85%にのぼった。将来の生活にも最も楽観的な見方を持っており、今後一年で生活はより良くなると考える人が多かった。

中産階級の人々が改善を期待できると考えているもののトップ3は順に、「資産価値」「可処分資金」「家庭生活」だった。一方、「健康」「レジャーで使える時間」「居住地の周辺環境」についての改善自信度は比較的低かった。人生の目標としては「健康」を挙げた人が7割近く(69%)に達し、「愉快な結婚生活・人間関係」(47%)、「成功したキャリア」(40%)を挙げた人の割合を上回った。

調査ではこのほか、大陸部の中産階級の「成功」と「財産」への考え方も明らかとなった。これによると「成功」と「財産」はかなりの程度リンクしており、流動資産150万元(約2517万円)以上の中産階級では成功を自認する人が71%を数えた。


中国の富裕層の子供たち

たびたび話題となる中産階級だが、中産階級と言われる人はどのような人か。これには8つのポイントが挙げられる。

第一に、月収4万5000元(約75万5100円)、年収50万元(約839万100円)以上。

第二に、安定した収入以外に、100万元以上(約1678万200円)の資産。調査によると、成功を自認する中産階級の回答者の多くは流動資産150万元(約2517万円)以上の人だった。流動資産が150万元(約2517万円)なければ中産階級でも成功したとは言えないということだろうか。

第三に、金銭に加えてマイホーム、マイカーもポイント。中産階級という言葉で多くの人がイメージするのが、金銭、マイホーム、マイカーではないだろうか。一線都市(北京・上海・広州・深圳)に少なくとも1軒の別荘またはマンションを持ち、乗っている車も一流ブランド。中産階級と言われるには、そんな物質的要素が暗黙の基準となるという。支払いはもちろん一括だ。住宅ローンやカーローンを毎月払っているような人は中産階級とは言えない。

第四に、立派な学歴と高い社会的地位。収入やマイホーム、マイカーなど目に見えるものだけでなく、中産階級の重要な判定基準と考えられるのが、学歴や社会的地位などの形のない要素である。一流大学卒業、海外留学の経験、EMBA(Executive MBA)取得などの輝かしい学歴や、CEOや有名企業家、有名大学の博士課程指導教員、何かの分野の権威など、きらびやかなキャリアが中産階級には似合う。

第五に、健康志向とスポーツ習慣。調査によると、大陸部の中産階級の7割は健康を人生の最大の目標としている。中産階級を自認する人々は運動を欠かさず、フィットネスジムやゴルフクラブのカードを必ず1枚は持ち、乗馬やダイビング、登山、スキーなどのハイソなスポーツも得意だ。スポーツの習慣は、中産階級の重要な特徴の一つと言える。

第六に、旅行、ショッピング、レジャー。定期的なリゾート旅行も中産階級家庭には欠かせない。金銭的には問題のない彼らにとって、広い世界に行きたければどこでも行くことができる。お金があればショッピングも欠かせない。気分が晴れないと思ったらブランド物のバッグでも買い、気が晴れたところでヨットパーティーとしゃれこむ。


上海市内の高級マンション

第七に、格調高い生活。「生活は目前のことにだけでなく『詩』と『遠方』にもある」。このセリフは、中産階級の生活の文学的な表現と言えよう。中産階級たるもの、物質的な財産だけではなく、格調高い生活にもこだわらなければならない。億万長者のような豪奢なところに住む必要はないが、インテリアや家具には徹底してこだわる。高価で珍しいものを食べることもないが、食事を楽しむことを知らなければ中産階級とは言えない。ナイトライフも充実している。バレエやコンサートなどに足繁く通い、家でくつろいでいる時はワインやコーヒー、プーアル茶をたしなむというのが中産階級というものである。

第八に、モラル、マナー、教養。金を持っているからと好き勝手に振る舞い、他人を見下した下品な態度を取る人は、中産階級失格である。真の中産階級には、モラルやマナー、教養ももとめられる。他人が心地よくなるような言動を心がけ、人々に尊敬されるようでなければならない。

中産階級の判断基準は人によってそれぞれ異なる。また物質的な意味での中産階級に誰もが急速になれるわけではない。だが自分なりの方法で精神的な中産階級を追い求め、そうした生活を作り出すことは誰にでもできる。健康で楽しく暮らせるなら、物質的な中産階級でなくても良いのではないだろうか。