中国富裕層分布図を解明する


四川省成都市天府広場の夜景

興業銀行とボストンコンサルティンググループ(BCG)はこのほど、中国のプライベートバンキング事業の全面的な発展報告書「中国プライベートバンキング2015年 千の帆が競うように海を渡る、風に乗って進もう」を共同で発表した。全国の省・自治区・直轄市から代表的な18省区市を選んで調査研究を行ったもので、600万元(約1億1430万円)以上の金融資産をもつ中国の高資産顧客約1200人を無作為に抽出した。

同報告書によると、2013年から15年の3年間に、中国の個人資産の規模の年平均成長率(CAGR)は21%に達し、背景には国内総生産(GDP)の高い増加率、人口メリット、資本市場の急速な発展といった要因がある。15年は投資可能な個人資産は約110兆元(約2095兆5400億円)に達し、このうち高資産顧客の世帯資産が約41%を占め、金額にして44兆元(約838兆2200億円)に上った。今後5年間は、中国経済が新常態(ニューノーマル)に突入するのにともなって、個人資産の累積ペースが一層鈍化し、年平均成長率は13%前後となり、資産総額は196兆元(約3733兆8700億円)に達することが予想される。

高資産世帯の地域分布図をみると、沿海地域は「昔からの金持ち」(世帯資産が何世代にもわたって蓄積され、個人資産の大部分を相続によって手に入れた人を指す)を代表し、中部(長江デルタベルト、京広鉄道沿線)では新たな富裕層が生まれつつある。今後5年でGDP増加率と富裕層の密度が高い地域は減少し、北京市、上海市、広東省といった豊かな地域の成長はさらに鈍化するとみられる。中国の経済成長の重心が内陸地域に移転し、個人資産の規模といった基礎的条件が整い、政策のメリットが大きい省区市、たとえば四川省、河南省、内蒙古(モンゴル)自治区、重慶市などはさらに大きな発展への潜在力を秘めるとみられる。

具体的にみると、中国の高資産世帯の地域分布は、今でも環渤海地域、長江デルタ地域、珠江デルタ地域といった経済が発展した地域が中心だ。BCGの中国資産市場のモデル予測によると、15年には広東、北京、江蘇省、浙江省、山東省、上海の東部沿海6省市は、高資産世帯の数が10万世帯を超え、高資産世帯全体の約半分を占める見込みで、各種の資産管理機関の顧客争奪戦の主戦場になることが予想される。四川は高資産世帯の数が最も多い内陸の省区市で、以下、河北省、遼寧省、河南省、湖北省などの経済が発展した省が続く。

高資産世帯の資産額をみると、広東、江蘇、北京、山東、上海、浙江の6省市が23兆元(約438兆1600億円)に上り、全国の高資産世帯の資産総額の約半分を占めた。これらの地域は中国で最も個人資産が集中する地域となっており、中でも広東は6兆元(約114兆3000億円)で全国トップだ。河北、四川、河南など豊かな地域の高資産世帯の資産総額もそれぞれ1兆元(約19兆円)を超えた。

北京、広東、江蘇などは、高資産世帯の密度が濃く、個人資産の全体的な規模が大きいが、過去3年間に年平均成長率が少しずつ低下している。こうした地域の成長を牽引する主な要因は、特殊な政治的位置づけと経済的地位にあり、富裕層の資産管理事業とプライベートバンキング事業の争奪戦ではこれらの地域が「攻略しなければならない場所」となっている。

BCGのパートナー兼董事総経理(取締役社長)は、「増加ペースは相対的にゆっくりだが高資産世帯の密度が高い地域は上海、浙江、山西省、遼寧、天津市だ。これらの省市には経済大省市が多く、高い経済的地位と天然資源での強みも備えている。こうした地域の高資産世帯の増加率は全国平均を下回るが、高資産世帯が集中し、資産の蓄積が相当成熟し、プライベートバンキング事業を深く開拓するための潜在力が依然として大きいといえる」と述べた。

同報告書によると、高資産世帯の数は急速に増加しているが密度が比較的低い地域は、山東、四川、河南などで、先端の資産管理事業を展開できる条件が整っている。重慶、内蒙古などはストックが少なく、増加率が高く、主に政策のメリットと資本の投入によって発展しており、今後の飛躍的発展の潜在力を備え、未来のプライベートバンキング事業の重点取り組み地域になる可能性があり、先発組の強みをつかむことが必要だ。また寧夏回族自治区、青海省、西蔵(チベット)自治区は高資産世帯の数が最も少ない省区だ。