中国の先端製造業が世界経済をけん引

ドイツ最大の鉄道会社・ドイツ鉄道が、中国から車両やその部品を調達することを検討していることや、中国が独自の知的財産権を有する原子力発電技術「華竜一号」の国際説明会に、英国やフランス、米国、カナダなどの代表が参加したこと、大連機車公司が、インド鉄道省からインド第3の都市コルカタの地下鉄南北線に投入される112両の地下鉄車両を受注したことなど、中国の製造業界は最近、嬉しいニュースが続いている。専門家は、「近年、中国の設備・製造業は継続してモデルチェンジ、グレードアップを行っており、規模や競争力は拡大を続けている。しかし、世界的な産業分担のランクはまだ向上の余地がある。関連の政策、計画が着実に実行されるにつれ、先端製造業が、中国、ひいては世界の経済を牽引するようになるだろう」と予測している。

 

「新陳代謝」が加速

「棚からぼたもち」ではない。海外からの受注などの嬉しいニュースが続いている背後では、新しい物や変化を追求し続けてきた中国の製造業の努力がある。新エネルギー車を例にすると、今年1-4月期、生産台数が3万4400台と、前年同期と比べて3倍近くに増加した。うち、完全電気乗用車とプラグインハイブリッドカーが、前年同期比約3倍増となり、完全電気商用車は同5倍増となった。

中国の製造業の着実なグレードアップに、国際資本も注目している。中国商務部の統計によると、今年1—5月期、製造業の外資参入が伸び悩んでいたのに対し、電子設備製造業や交通運輸設備製造業、化学原料・化学製品などの先端製造業の外資実際利用額は、それぞれ4.8%増、4.4%増、2.0%増となった。

北京工商大学経済学院の周清傑教授は取材に対して、「中国の製造は、『シャツ』や『靴』、『靴下』などをキーワードとする時代から脱皮しようとしている。近年、中国の製造業は、大きな進歩を遂げ、ハイテク、高付加価値の『中国ブランド』が次々に出現している。これは政府が産業政策を調整している以外に、政府の先端設備・製造に対するサポートや国有企業の改革などの要素と密接な関係がある」と指摘した。

 

「大きい」から「強い」へと変わるための政策

工作機械の生産量は世界の38%、造船工事完成量は世界の41%、発電設備の生産量は世界の60%……。現在、中国の設備製造業の規模は世界の総量の約3分の1を占めるようになっている。そして、多くの設備製品の生産量は世界一を誇っている。中国の製造業は既に非常に大きくなっている。しかし、いかに「大きい」から「強い」への徹底した変化を実現するかが課題となっている。

李克強総理は6月15日、中国核電工程有限公司や工業・情報化部を視察に訪れ、座談会を主催した。「中国の製造は、中国の総合的な国力向上において大きな貢献をしている。しかし、国際的な産業分担においては、中・低レベルに位置している。『中国製造2025(中国製造業10ヵ年計画)』を実施し、製造業を『大きい』から『強い』に変え、一般消費品の分野だけでなく、高い技術力が求められる設備など、最先端の製造分野でも先頭に立てるようにしなければならない」との見方を示した。

また、起業やイノベーションを奨励することで、クリエイティブ、設計から生産、製造に至るまでの潜在能力を発揮できるようにし、製造業と現代サービス業の融合を促進する異なる業界同士の融合の機会をとらえ、ビッグデータやクラウドコンピューティング、モノのインターネットなどの技術が製造業の全産業チェーンにおいて総合的に運用されるように促進し、製造スタイルの変革を促す。最先端の基礎技術を把握し、基礎的な部品の品質や基礎的なコア素材の製作水準を向上させる。省エネ・環境保護の発展に力を入れ、工業の効率やクリーナープロダクションの水準を向上させる—など4つの対策が打ち出された。

「初期段階において、我々は政府を通して競争力の向上を主導する。発展が深化するにつれ、競争力の向上は、企業の科学研究能力や資本運用能力、ブランド意識などにかかっている。そのため、李総理が推進する民間の『起業』と『イノベーション』の潜在能力を刺激し、行政のスリム化と権限移譲の改革を実施するという政策は、中国の製造業がさらにハイレベルへと進むための橋渡しだ」と周教授は語る。

 
中国独自の知財権を備えた第3世代原子炉『華竜一号』の建設現場の様子

産業の空洞化防止に力

重要なものを作ることができて初めて自信を持つことができる。最近発表された「国務院の国際生産能力と設備製造の協力に関する指導意見」において、鉄鋼や非鉄金属、建材、鉄道、電力、化学工業、軽工業・紡績、自動車、通信、工事用機械、航空・宇宙、船舶、海洋工事など12の業界が 国際生産能力と設備製造の協力における重要な業界と見なされており、製造業の先端化が全面的に推進されている。

専門家は「中国の製造業は大きな発展の余地があり、最終的には中国経済のハードパワーとなるだろう」と話す。「工業は一国の経済の本当の実力を示す。米国の教訓を銘記し、第三次産業が第二次産業を超えたからといって、工業を軽視し、産業の空洞化を招いてはならない。中国の工業化はまだ完全に終わっておらず、競争力や要素利用率、国際的な分担構造において、特別高い位置にいるわけでもない。製造業の潜在能力は依然として大きい」と周教授は語る。

中国機械工程学会管理工程分会の常務理事である金達仁氏は「今後10年の間に、『中国製造2025』が実施されると、中国の製造業の企業はスマート工場へと発展すると同時に、そのメリットは低コストから品質や費用対効果へと変化し、粗放型製造は環境に優しい製造へと変化し、機動力は要素駆動からイノベーション駆動へと変化するだろう」と予測している。