中日経済貿易関係が全面的改善の兆し

全国日本経済学会と中国社会科学院日本研究所、社会科学文献出版社が共同で発表した「日本経済青書:日本経済・中日経済貿易関係研究報告(2015)」によると、中日経済貿易関係は今年、全面的な改善が期待できる見通しだ。中日韓自由貿易区の交渉で大きな進展が見られる可能性もある。

 
2015年4月14日、李克強総理は日本国際貿易促進協会の河野洋平会長と人民大会堂で会談した

APEC後に現れ始めた中日関係改善の兆し

日本経済は2014年、大きな浮き沈みを経験し、非常に困難な時期を迎えた。「アベノミクス」の効果が徐々に薄れ、消費税の引き上げによる影響も加わって、実質GDP成長率は1-3月期こそ高かったものの、4-6月期と7-9月期は2期連続のマイナス成長となり、「自律的後退」の局面に陥った。通年でもマイナス成長と推定されている。中小企業と大企業には政策で受ける恩恵に違いが出ており、地方と大都市の間の経済発展も均衡を欠いている。賃金上昇は物価上昇に追いつかず、低所得者層は生活難に直面している。日本経済は山のような難題を抱えることとなった。安倍政権はその後、消費税率の再引き上げの時期を2017年4月に延期した。今年の経済成長は前年の成長率が低かったことから、一定の反発となるとみられる。だが3本柱とされる消費・投資・輸出のエンジンはかかっておらず、今後の見通しは楽観できない。中日間の経済関係を見ると、経済的な原因のほか、政治関係の緊張による深刻な影響の継続により、2014年の貿易減少幅は前年比で縮小したもののマイナス成長であることに変わりはなかった。両国間の国債相互購入や人民元直接取引も実現せず、中日韓自由貿易区の交渉も実質的な進展を得られなかった。日本の対中直接投資はこれまでにない大幅な減少を示し、「政冷経冷」の傾向がますます強まった。習近平主席と安倍首相が北京APECで会談した後、中日関係はようやく回復傾向を見せるようになった。こうした状況を背景に、今年の中日経済貿易関係は全面的な改善が期待できる見通しで、中日韓自由貿易区の交渉で大きな進展が実現される可能性もある。

エネルギー戦略は、日本の経済発展の歴史的な各段階を貫いてきた。戦後だけで見ても、石炭と鉄鋼の重点発展戦略、石油を主役とし石炭を補助とするエネルギー構造転換戦略、石油代替戦略、エネルギー多元化戦略、オイルショック後の省エネ戦略、石油の戦略的備蓄、3E協調発展戦略などと様々に変化してきた。こうした戦略は、エネルギー資源の極端に不足した日本が、エネルギーの安全を確保し、経済の急成長と長期発展を実現するのに、重要な役割を果たした。だが東日本大地震と福島原発事故の発生で、日本のエネルギー状況はかつてない厳しい局面を迎え、エネルギー戦略は再調整を余儀なくされた。今回発表された報告書は、日本の今後のエネルギー状況の発展についても見通しが示されている。これによると、日本の原発は今年夏頃に再稼働される可能性が高い。再生可能エネルギー発展戦略は高い期待が寄せられていると同時に、大きな挑戦にも直面している。

 

日本の原発、2015年夏頃に続々再稼働へ

報告によると、大飯原発の2013年9月3日の運転停止以降、日本では原発なしの状態がすでに1年半続いている。日本の総発電量に占める原発の割合は事故前、30%に達していた。原発の全停止による深刻な電力不足を補うため、日本は火力発電を用いらざるを得なくなり、現在はほとんど化石燃料に頼っている。日本の化石燃料はほとんど100%が輸入であり、大企業は原発再稼働を強く求めている。原発再稼働は極めて敏感な問題だが、大企業の利益を代表する安倍首相は原発再稼働を積極的に推し進めている。目下の状況から見ると、原発は今年夏以降に続々と再稼働する可能性が高い。日本が再稼働を急いでいるのにはいくつかの原因がある。第1に、大量の液化天然ガスや石油、石炭などの化石燃料の輸入は深刻な貿易赤字を生む。第2に、化石燃料の輸入の増加は電力生産コストの上昇をもたらし、電力価格を高める。第3に、温室ガスの排出削減の圧力がこれまでになく高まっている。第4に、既存の原発の稼働停止は原発が所属する電力会社に巨大な損失をもたらす。第5に、日本の原発国際化戦略に打撃を与える。

 

再生可能エネルギー戦略が直面する試練

報告によると、昨年8月初めから、日本の沖縄電力と九州電力、東北電力、北海道電力、四国電力の5大電力会社は再生可能エネルギーの買い取り中止を次々と宣言した。経済産業省も再生可能エネルギー凍結の通知を出した。この措置は、日本の新エネルギー発展戦略に新たな挑戦を投げかけている。

5大電力会社が再生可能エネルギーによる電力の固定買い取りの停止を決定したのは、再生可能エネルギーとりわけ太陽エネルギー発電所の発展のスピードが想定を上回っていたためだ。太陽エネルギーは夜間や曇りの日には発電できず、安定しない。安定しない電力を過度に買い取れば、送電網が麻痺し、大規模停電が起こる可能性もある。

買い取り政策の停止は日本経済の発展にも大きな影響を与えている。「アベノミクス」の「第3の矢」とされる「日本再興戦略—JAPAN is BACK-」においては、クリーンエネルギーの国内市場の規模は2013年の4兆円から2030年までに11兆円、国際市場の規模は2013年の40兆円から2030年までに160兆円に拡大すると試算されている。その規模は自動車市場に匹敵する。クリーンエネルギーには、再生可能エネルギーや高効率火力発電、蓄電池、次世代ハイテク部品、エネルギー管理システム、次世代省エネ自動車、燃料電池、省エネ家電、省エネ住宅・建築などが含まれ、そのうち再生可能エネルギーが核心的な地位を占める。買い取り停止は日本の新エネルギー戦略に大きな打撃を与えている。