中国経済、GDP信仰から「新常態」へ

 2014年は改革の全面的な深化がスタートした年であり、中国経済にはさまざま重要な変化が訪れた。

 

「新常態」が経済発展の一大論理に

2014年の中国国内総生産(GDP)の前年同期比増加率は第1四半期(1~3月)が7.4%、第2四半期が7.5%、第3四半期が7.3%だった。2014年の中国経済は高度成長に別れを告げ、「中くらいのペースの成長」という「新常態」(ニューノーマル)を迎えることになった。

「新常態」は2014年最も熱く議論された経済キーワードで、誕生からわずか7カ月にもかかわらず、すでに政治の新たな理念となり、中国の経済発展の一大論理にもなっている。

中国人民大学財政金融学院の張錫軍副院長は、「新常態は中国経済の法則や段階的な特徴に対する客観的な認識だ。新常態の下で、これまでのような規模の拡大に頼り、安い人件費、安い土地コスト、安い環境コストに頼る発展モデルを続けることは難しく、未来の経済発展に向けては質と効率の引き上げを重視することが必要であり、構造調整とイノベーションによる駆動を重視することがより必要であり、以前のような『経済が落ち込めばすぐに活性化策をうち出す』といったやり方は捨て去らねばならない」と話す。

 
2014年12月、北京のCBD(Central Business Distric)区にある工事現場の様子

マクロ政策の新たな理念

この1年間に、中国経済は「新常態」という理念を手に入れただけでなく、新しいマクロ調整の理念と方法、すなわち的を絞った精度の高い調整「ターゲットを絞った調整」という考え方を身につけた。

中国国務院の李克強総理は2014年になって「ターゲットを絞った調整」という考え方を提起して以来、たびたびその実施を強調してきた。「ターゲットを絞った調整」は2014年の国務院常務会議に頻繁に登場したキーワードでもある。同年6月11日、7月23日、8月27日に開催された国務院常務会議では、「ターゲットを絞った調整」が強調され、これに対応した一連の措置が打ち出された。

「ターゲットを絞った調整」という理念に指導される形で、中国は「パワーをあちらこちらに分散させて成果が得られない」というやり方に別れを告げ、全面的な強い刺激策を採ることはなくなった。突出した問題に照準を当て、調整の「ターゲット」を絞り、時期や地域や産業の実際の状況に基づいて精度の高い措置を打ち出している。

国家統計局中国経済景気モニタリングセンターの潘建成副センター長は、「ターゲットを絞った調整を実施し、強い刺激策を採用しなければ、経済に後遺症を残すことを防げるとともに、資源配置における市場の決定的な役割を発揮させる上でもプラスになる」と話す。北京大学の劉偉常務副学長は、「ターゲットを絞った調整の展開にともない、中国のマクロ調整はより方向性を絞ったものになり、『表面的な問題も根本的な問題もともに取り除く』ことが可能になる」と話す。


2014年11月10日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)・CEOサミットが開催中の北京国家会議センター

GDP信仰に別れを告げ、雇用や所得の指標を重視

2014年になって中央政府が「GDPばかりを追い求めることはしない」としきりに強調するようになった背景には、多くの省・自治区・直轄市で市や県(区)に対するチェックが調整され、多くの県市でGDPのチェックが取り消されたり、位置づけが変わってあまり重視されなくなったりしたということがある。「GDP信仰」に別れを告げる道を、中国は急速に歩んでいる。

GDPのチェックの意味合いを軽くすると同時に、国民生活の状況が、とりわけ雇用と所得の状況が、政府のより重視する経済指標となった。2014年に入ってから、李総理はいろいろな場面で、「十分な雇用を実現しさえすれば、個人所得を継続的に増やし、質と効率を絶えず向上させ、経済成長率を7.5%より少し高いか少し低いレベルにとどめることは可能だ」ということを強調している。

 

経済改革に新たなトップダウンプラン

改革の全面的な深化の重点として、2014年は経済体制改革で「たくさんの矢が一斉に放たれ」、いくつかの重大な飛躍を遂げ、多くの重点分野で新たなトップダウンのプランが登場した。

不動産の統一的な登記については、国務院が12月22日に「不動産登記暫定条例」を発表し、2015年3月1日から施行されることになった。

戸籍制度の改革については、国務院が7月30日に発表した「戸籍制度改革の一層の推進に関する意見」により、農村戸籍と非農村戸籍の区別が撤廃された。

新型の都市化については、2014年3月に発表された「国家新型都市化計画(2014~2020年)」により、新型都市化の目標と道のりが明確にされ、未来の中国の都市化推進の「施工図」が提供された。

年金制度改革については、2014年2月に国務院が「統一的な都市部・農村部住民の基本年金制度の構築に関する意見」を発表し、新型農村の社会年金保険と都市部住民の社会年金保険が統合された。これにより人口の流動と都市部・農村部の統一的な発展が大々的に促進されることになった。

金融改革については、「預金保険条例」(意見募集稿)が12月から意見募集を開始し、中国に預金保険制度を構築すること、預金保険では限度額内で補償を提供すること、最高補償額は50万元(約970万円)とすることが規定された。この条例は預金者の利益を守り、金融リスクを予防する上で重要な保障を提供するものとなる。