「黄金時代」の終息は先 産業発展の余地は巨大
中国に依然として外資吸収のチャンスあり
中国商務部外資司の劉亜軍司長に聞く

外資吸収は全世界を「凌駕」

―― ここ2年ほど伸びが鈍化して、中国はもはや外資利用の面で優位性を失っていると考えられています。当面の中国の外資利用の全体状況について分析していただけますか。

劉亜軍 2001年にWTOに加盟して以降、中国は外資吸収の急成長期に入り、2002年から2008年には実際に利用した外資の年間平均増加幅が9.8%に達しました。しかし、2009年から2013年にはそれが6.9%にまで低下しました。

その原因を探ると、2008年の全世界的な金融危機の影響が甚大で、国境を越えた流動資本の総量が委縮し、同時に地域情勢も不安定で、発展した国々とその周辺国との間の資本導入競争が激化したからです。

国内的にも、ここ数年、中国の国民経済が構造調整期に入ったのに伴って、外資利用も相対的に「規模重視」から「質の重視、構造の重視、効率の重視」へと転換して来ました。これは国民経済発展の要求と態勢に符合しています。

全世界のFDI(対外直接投資)は2009年に33%も激減しましたが、中国での減少は13%です。2010年以降、中国が吸収した外資は一貫して1100億ドル(約11兆円)以上と安定しています。

2013年には発展した国々への資金還流が増加するという状況下で、中国が吸収した外資は2.3%増加し、1239億ドル(約12兆円)に達しました。これは金融危機前の2007年の1.5倍の額で、世界全体の8%を占め、その率は2007年の倍になっています。中国が吸収した外資は世界第2位で、発展途上の国々の筆頭を維持しています。

ですから中国の外資利用の「黄金時代」が過ぎ去ったという考え方には同意できません。その総合的な優位性は突出しています。

第1に、中国市場は依然として世界で最も魅力的で、最も急激に成長していること。第2に、中国の産業配置の優位性は明確で成長の余地が大きいこと。第3に中国中西部地域の資金導入が急成長していること。第4に、中国の生産要素のコストが依然として一定の競争力を備えており、労働生産性の向上の大きな余地があること。第5に金融、通信、エネルギーなどの産業がこれまで以上に開放され、政府が合併再編と過剰生産力の消化を奨励しており、サービス業や企業合併・企業買収が中国の外資利用の新たな成長ポイントになること。第6に、中国共産党第18期中央委員会第三回全体会議(三中全会)が外商投資企業に対して参入前の内国民待遇適用に加えネガティブリストによる管理モデルを実行するための研究を打ち出したことです。

中西部地域がホットスポットに

―― 近年の中国の外資利用はどういった特徴を示していますか。

劉亜軍 総量が安定して成長していることをベースに、産業構造と地域の結びつきが適正化されてきているという点に帰すると思います。

産業面では、2011年以降、サービス業分野での外資が利用外資総額に占める比重が連続して製造業を上回っています。2014年上半期のサービス業使用の外資金額は前年比14.8%増の352億ドル(約3兆5000億円)で、全国的な総量に占める比重は56%に上っています。

コンピューター応用サービス、総合技術サービス、建築、金融、衛生、文化芸術などのサービス分野が外資流入のホットスポットになっており、多国籍企業の地域本部、R&Dセンター、物流センター、決済センターなど付加価値の高い投資が上昇する状態にあります。

地域面では、投資環境が改善されてきたのに伴い、中西部地域の利用外資の伸びが加速し、サムスン陝西電子ハイエンドメモリーチッププロジェクトやGE成都イノベーションセンターなどを含む先端製造業とR&Dセンターが続々と中西部地域に設けられています。

2014年上半期、中西部地域の外資利用状況は良好で、合計107億ドル(約1兆円)に達し、全国の総量に占める比重は17%です。中でも中部地域は実際に利用した外資が前年比9.6%も伸び、全国的な伸び幅全体の39.2%を占めています。

外資利用分野を深化させる改革

―― 政府は次にどんな措置を採って外資の伸びの安定を維持し、その構造を適正化させるのでしょうか。

劉亜軍 今後、中国商務部は国際化、法治化されたビジネス環境の構築に全力を挙げていきます。

また、国内資本と外資に関わる法規を統一し、管理体制の改革を推し進め、投資環境の透明化と利便性向上を促進します。中国(上海)自由貿易試験区の試行経験総括をベースとして、全国規模で外商投資企業に対する待遇や管理方式を探ります。

次に外商投資企業の参入を拡大します。ネガティブリストの制定を通じて、統一的な市場参入制度を実行し、対外開放のレベルを大いに引き上げます。金融、教育、文化、医療などのサービス業分野の秩序ある開放、保育養老、建築設計、会計審査、物流、イーコマースなどのサービス分野への参入制限を開放、自己資本比率や経営期間面の要求を大幅に引き下げます。

さらに地域の外資吸収プラットフォーム構築を強化します。国家レベルの経済技術開発区や辺境の経済合作区、国境を越えた経済合作区に対する分類指導を強化し、国境地帯の開発開放を加速します。産業移転の趨勢と結び付けて、外資の中西部地域への投資に対するサポートを強化し、中西部地域の産業移転の受け皿としてのモデルパーク建設を加速します。