一人当たり17万円の税負担は高いか低いか

先日、中国社会科学院財経戦略研究院による『中国財政政策報告2013/2014』が発表された。席上、中国はすでに「一人当たりの税負担1万元(約17万円)の段階に入っている」と述べた研究者がいた。この言葉は大きな波紋を呼び、すぐに社会の広い関心と討論を引き起こし、さらにネット上では「一口のご飯の半分は税金」と話題になった。一人当たり1万元の税負担とはいったいどのような概念なのだろうか。他の国々と比べ、このレベルは高いのか、低いのか。

 

一人1万元の税負担とは

「一人当たり1万元の税負担」とは「一人当たりの財政収入」であり、中国は世界の主要国よりはるかに低い。

データによると、2013年の中国の財政収入は12兆9000億元(約213兆6700億円)に上り、人口13億人の一人当たりの平均を出すと、「一人当たりマクロ税負担が1万元に近づく」という結論となる。

「一人当たり1万元の税負担とは、一人が1年で平均1万元の税金を納めるということ? 高すぎる!」と、北京市朝陽区の新光天地商業区のビジネスマンは話す。ネット上の書き込みを見ると、多くのネットユーザーが同様の見方をしている。

「上記のような計算法では、財政総収入が平均で13億人が負担するということで、一人当たりマクロ税負担が出されるが、実際には一人当たりの財政収入である。同じ指標だが二つの呼び方で受け取り方も大きく異なる」と中国財政部財政科学研究所の劉尚希所長は説明している。

では、一人当たり税負担または一人当たり財政収入が1万元というのは、高いのか、低いのか。

中国財務部の公式サイトによると、国際的な計算方法では2011年の中国の一人当たり政府財政収入は同年の平均為替レートで1528ドル(約15万5542円)である。

アメリカ、日本、ドイツ、イタリア、イギリスの一人当たり財政収入は平均1万4000ドル(約142万5130円)以上であり、中国の一人当たり財政収入はこれらの国々の10分の1前後である。2010年、中国のこの数字は世界では100位前後にランキングされている。

これは、もし公共財政収入の3分の2を社会保障に支出しているとすれば、欧米先進国では一人当たりの社会保障費は9000ドル(約91万6150円)を超えているが、中国ではわずか1000ドル(約10万1800円)と、その差は9倍と開いていることになる。これは理解しにくいことではない。中国の公共サービスと社会保障は低水準にあり、先進国との差は大きいのである。

 

低負担、高保障のリスク

低負担、高保障を求めすぎると、財政リスクが極めて大きくなり、持続できなくなる。

一般に、収入は支出の源であり、国家の財力は国民生活を保障し改善する基礎である。「一人当たり税負担」と「一人当たり財政力」はコインの両面であり、共に増減するしかない。

劉尚希所長は「人びとは一般に福祉は大きい方がいいと言うが、私は社会福祉を最大化する主張には反対だ。世の中には棚からぼたもちということはなく、政府が多く支給するなら、多く集めなければならない。集めすぎれば、発展のラストスパートが効かなくなる」と、財政は国家管理の基礎であり、重要な支柱であるから、国家の財布と国民の財布という二つの財布のバランスが必要だとしている。

専門家によると、国家の税負担の高低は一般に政府財政収入のGDPに占める割合、つまりマクロ税負担のバランスによって決まる。政府部門と一部研究機関が予測した結果から、採用する政府収入の規格によって、マクロ税負担の結果も大きく異なってくる。

中国社会科学院財経戦略研究院が先日発表した報告によると、2012年公共財政収入はGDPの22.59%で国家収入全体がGDPに占める割合は35.33%であった。

「マクロ税負担の世界平均レベルはGDPの約40%であり、中国の税負担レベルは合理的な範囲にある。よって、中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)では、税負担を安定させ、構造改革、社会的公平の実現に有利な税制をつくらなければならないと決定した。

 

将来いかに社会保障支出を増やすか

税負担の安定化は、財政収入とは政府が徴収したいだけ徴収することではないことを意味し、経済成長と軌道が一致する。いかに綱渡り式に限られた財政収入を使って社会保障レベルを改善させ向上させるのだろうか。

社会科学院財経戦略研究所の報告やこれに参画した専門家や研究者は以下のように提案している。

①予算管理をすべての税収入で正しく実行し、政府収入体系の改革を推進し、新しい基本的財政モデルを模索し、全収入の予算管理によって、各種の財政収入の規範を調整する。

政府支出は規模を安定させ、同時に構造転換しなければならない。徐々に直接税の比重を増やし、構造改革に有利な、社会的に公平な税制をつくる。

②国有資本の利息は全国民が享受すべきであり、現在の利息比率は低すぎる。 国有資本は真に公共支出、公共サービスのために役割を発揮すべきであり、この分野の改革の余地は大きい。

③社会インフラ建設ピーク時と社会保障体系の設立を同時に推進することは、中国の特殊な事情であり、これは発展途上国の歴史には未曾有のことである。中国のインフラ建設のピークはすでに終盤に入っており、将来の中国の財政支出の重点は必然的に社会保障支出に傾いていく。

今後は適度なコントロール規模で、公共事業支出と政府の投資を圧縮し、社会保障分野の支出の比率を挙げ続けなければならない。