機が熟せば自然に成功 人為的な加速は逆効果
人民元の国際化を急いではならない

この数年来、人民元の国際化の度合いは深まるばかりだ。SWIFT(国際銀行間金融通信協会)の調査によると、人民元の伝統的貿易金融(信用状(L/C)および取立為替条項)の占有率は2012年1月分の1.89%から、2013年10月分の8.66%まで増加し、関連市場で米ドルに次ぐ第2の常用通貨となっていることが明らかとなった。だが、人民元の国際化の程度は依然として低い。全国人民代表大会常務委員会の成思危前副委員長は数日前、「中国人民大学金融研究所が発表した国際化指数によれば、米ドル52.3、ユーロ23.6に対し、人民元はわずか0.87だった」と語っている。専門家は、「人民元の国際化は機が熟せば自然に成功する。人為的に加速してはならない」と指摘する。

 

 

全世界の貿易は

貨幣通貨がリードする

一国の貨幣がもし国際的な通貨となれば、その利点は非常に多い。「貨幣鋳造税」を享受するだけでなく、国際金融資源の配置に参与し、影響力を強めることができる。一国の通貨の国際化の基準には、決済通貨から投資通貨、さらには備蓄通貨の機能の実現が含まれる。

成思危氏は、人民元の国際化が実現するには5つの段階があると指摘する。第1段階は、人民元の国外における使用流通が可能となること。第2段階は、貿易建値通貨となること。第3段階は、貿易決済通貨となること。第4段階は、投融資の通貨となること。第5段階が、国際的備蓄通貨となることである。

「第1段階は、今や可能となっています。周辺地域だけでなく、多くの地域で直接人民元を両替することができるし、人民元のクレジットカードが国外でも使用できるようになっています」と成思危氏は語る。

第2段階、第3段階にも突入し始めている。SWIFTの報告によれば、人民元はすでに世界で8番目の交易通貨となっており、同ランキングでは9月初めに国際決済銀行(BIS)が発表した順位を1つ上げているのだ。

SWIFTアジア太平洋地区の支払いおよび交易市場の主管担当者は、「人民元が全世界の貿易金融をリードしているのは明らかで、アジア市場では特に突出している」という。SWIFTの商業情報統計によれば、中国の輸出入企業やその交易対象は現在人民元を使って信用状を作成、まさにこの傾向を反映している。統計によると、2013年の前8カ月の人民元支払いは2兆8000億元(約47兆3876円)であり、対外貿易総額のシェアの13%を占めているが、2010年、2011年、2012年の同シェアはそれぞれ2%、7%、10%だった。

 

国際化のプロセスを

高く見積もってはならない

人民元の国際化はめざましいものの、一方で専門家は「人民元国際化はなお初級段階にある」と指摘する。

現在、人民元が流通する国家は増えているが、これは人民元が国際化したに等しいという訳ではない。重要なのは、貿易決済通貨、投資通貨、ひいては備蓄通貨となりうるかという点にある。今のところ、人民元を備蓄通貨として取り入れている国家はごく少数である。

「オフショア市場の人民元の預金量は全世界の1%に満たず、人民元の決済限度額はわが国の輸出入の10%を占めるに過ぎません。全世界の大口商品の定価において人民元は発言権を持っていないのです」。上海国際金融センター研究員の専門家丁剣平氏は語る。

中国人民大学金融研究所が発表した国際化指数に基づけば、「人民元の国際化の度合いはとても低い」と成思危氏は指摘する。

シンガポール開発銀行(DBS)の経済学者周洪礼氏は、「貿易融資通貨より支払通貨のランキングの方が重要な可能性がある」と考える。SWIFTの報告によれば、10月分の人民元の全世界における支払通貨としてのランキングは12位で先月と変わらなかったが、支払通貨としての市場占有率は9月の0.86%から0.84%へと微減している。このため、人民元が世界第2の貿易融資通貨であることについて必要以上の分析を行ってはならない。

 

10年以内に国際化は

実現可能

いずれにしても、人民元の国際化はすでに大勢の赴くところであり、専門家は「現在やらなければならないことは、人民元の国際化プロセスの基礎をしっかりと固めることだ」と指摘する。

清華大学中国世界経済研究センターの李稲葵主任は、「人民元の国際化は長期的かつ徐々に進めていく過程のものであり、実務を漸進的に進め、中国自身の金融改革を基礎としなければなりません。金融市場の成長を完全なものにし、利率の市場化、為替相場の構造改革や資本プロジェクトの開放など、推進していく過程でやるべきことはたくさんあります」と指摘する。

米国マサチューセッツ工科大学のロバートレッグボーン教授は、「人民元の国際化を実現するには、経済規模マクロ経済政策の安定資本プロジェクトの開放為替相場制度の柔軟性成熟した資本市場外部ネットワークの6つの要素を必ず備えていなければならないでしょう。現在、中国のマクロ経済政策は安定、経済規模の大きさや外部ネットワークの発展は良好ですが、残りの3つの要素はまだ満足できるものではありません」と語る。

「だが、中国は世界第2の経済体であり、国際化の目標は人民元が最終的には米ドルユーロと同様に国際通貨になることであるべきです。10年以内に国際化を実現することは可能なはずです」と成思危氏は語る。

成思危氏は、「現在為替相場の改革を推進しているのは、柔軟な二重目標区制度の設立、つまり、一定の範囲内で通貨の為替レートを自由に変動できるよう認めるのです。通貨が国境を越えたときにはじめて中央銀行は市場化の手段として「干渉」、すなわち、買い入れたり売りに出したりして運営するのです。始めの為替レート目標境界はやや狭く設定することができるでしょう。その後、人民元の国際化が進むにつれて、この境界を次第に広げ、最後には取り払えばいいのです」と考えている。