成熟した経験を活かし海外市場を積極的に開拓
中国の高速鉄道が世界を走る日は近い

ASEAN経済貿易閣僚が

高速鉄道に乗車

先ごろ、ASEAN(東南アジア諸国連合)経済貿易閣僚代表団が高速鉄道に乗車し、上海から北京に移動した。全長1318 kmに及ぶこの高速鉄道は、全行程を約5時間で運行する。開通して2年経つが乗車率は急速にアップしており、ピークの時間帯には最短5分間隔で発車している。

李克強総理は代表団と会見した際、ASEAN経済貿易閣僚が中国南部から北京への移動に高速鉄道を利用したことを、「これは中国の高速鉄道にとって名実共に『ロードショー』だ」と賞賛した。

同時に、各国でも高速鉄道建設のペースは加速している。オーストラリアはインフラ拡大に積極的で、初の高速鉄道建設に向けて実現可能性の調査を行っている。タイ運輸省の高速鉄道建設計画によれば、タイでは今後7年以内に高速鉄道4本の建設を完成させる予定だ。米国、ロシア、マレーシア、シンガポール、ブラジル、トルコなども高速鉄道建設計画に積極的だ。

中国は営業運行距離が世界最長の高速鉄道を有し、積極的な姿勢で海外の高速鉄道建設に参与している。中国企業は海外で高速鉄道展を開催し、中国の指導者もさまざまな場面で中国の高速鉄道をPRしている。

 

李克強総理が自らセールス

李克強総理は10月にタイを訪問した際、タイのインラック首相と共に“中国高速鉄道展”に出席した。『中国・タイ関係発展の長期計画』によると、中国はタイの高速鉄道建設プロジェクトに参加する意向だ。さらに、建設費用の一部をタイが農産物で支払うことが検討されており、タイ側も歓迎を表明している。この提携方式は「米と高速鉄道のバーター貿易」と形容された。

その後間もなく、李総理は北京でオーストラリアのブライス総督と会見したが、その際にも中国の高速鉄道を紹介。「中国の高速鉄道の技術は先進的かつ安全で信頼性が高く、コスト面でもメリットを備えている。双方でこの件について提携を検討していきたい」と語った。

 

中国の高速鉄道が持つ

3つの競争力

中国高速鉄道の競争力を構成するのは、技術・安全性・コストの3大メリットだ。

中国鉄路総公司(China Railway Corporation、略称CR)科学技術管理部の周黎部長は、「中国は長年にわたり、世界の先進的な高速鉄道技術を絶えず吸収して消化すると共に、それらを学んで参考にし、自主革新を通じて独自の技術を作り上げた。これは世界各国の高速鉄道の技術力を結集したものだ。中国は世界各国の高速鉄道技術を集約する能力と経験を兼ね備えている」と述べた。

中国高速鉄道の営業運行距離は、すでに1万kmに迫っている。快適かつスピーディーな高速鉄道は、中国の人々が外出する際の幸福感を大幅に上昇させた。京滬高速鉄道公司は、「今年6月30日に京滬高速鉄道(北京―上海間を運行)は開通2周年を迎えたが、乗客数が前年同期比で4割増加した」ことを明らかにした。

中国工程院の会員で鉄道専門家の王夢恕氏は、「中国の高速鉄道の1 km当たりの費用は1億3000万元(約21億3800万円)だ。これに管理費用と立ち退き料を加えても1 kmあたり約2億元(約32億9000万円)なので、日・英・独などの国よりも安い。中国の高速鉄道がネットワークを形成してからは、産業化によるメリットでさらにコストが引き下げられた」と説明する。

中国高速鉄道の海外進出はテンポが加速している。このほど、中国南車集団公司(CSR Corporation Limited、略称CSR)はイタリアから受注を獲得し、高速鉄道のコア部品であるボギーを提供することになったが、これは中国の高速鉄道のコア部品が欧州市場で認められたことを意味している。これまでにも、中国高速鉄道のアルミニウム合金車体のモジュールが欧州向けに販売されたことがある。

北京交通大学経済管理学院の李紅昌准教授は、「高速鉄道の全面的輸出は単純な貿易輸出ではなく、経済や貿易、金融などのさまざまな要素と関連しているため、双方の高官が共同で推進していく必要がある。中国とタイの高速鉄道提携モデルが形成されれば、その他の国家での普及に期待できる」と語った。

李准教授は、「中国の時速200 kmおよび250kmの高速鉄道は、応用面においてかなり成熟した経験を持っており、高い国際競争力を備えているため、対外輸出の重点分野になるはずだ」と分析している。