《寄稿》
中国の「シェールガス革命」は慎重に

米国で起こった「シェールガス革命」は「石油産業にとってここ百年間で最も重要な事件」と称えられ、米国経済と世界のエネルギー市場、地政学的な国際政治のいずれにも多くの面で影響を及ぼしている。現在、「シェールガス革命」は米国の産業ルネッサンスという古いモデルを活性化しつつあり、石油化学、ガラス、鉄鋼、玩具などの産業の米国本土への回帰に春風をもたらしている。

 シェールガスは世界的に石油より広範囲に分布しており、かつ石油や石炭より環境への影響が少ないため、国際的に熱い期待を抱かせている。米国の「シェールガス革命」は制度的のみならず技術的にも多くの国の参考となるモデルを提供しており、世界中の多くの国々がシェールガス分野に全力で取り組む準備をしていると言える。その中には中国も入っている。もちろん、資源的条件、管理体制などの面で各国間には大きな差があり、米国モデルを参考にすることはできても、そのまま模倣できるものではないことも認識しなければならない。

 中国では、シェールガスは疑う余地のないエネルギーの新星となりつつある。中国国土資源部の調査によると、中国の陸地部分に存するシェールガス地質資源の潜在的埋蔵量は134兆4200億?で、潜在的な可採埋蔵量は25兆1000億?だ(青海チベット地域を除く)。これは在来型の天然ガスに相当し、現在世界最大のシェールガス生産国である米国の埋蔵量を凌ぐ数字だ。

 中国政府は現在国外の先進技術と積極的に提携を進め、併せてシェールガス価格の市場化などシェールガスの産業化を助ける政策を推進しているが、中国のエネルギー産業界はシェールガスに対しては依然として及び腰だ。中国は2012年にシェールガスに関する2つのプロジェクトを推進してエネルギー産業界に異常なまでの活気を呼び起こしたが、「熱気は余りあるものの、成約は限られている」状況で、中国の四大石油企業(ペトロチャイナ、シノペック、CNOOCと陝西延長石油)は入札に対して非常に慎重なパフォーマンスに終始した。

 なぜ「上が下より熱く、周囲の方が業界より熱い」という現象が現れるのか。わずか7、8年の間にシェールガスの年産量が600億から1000億?に引き上げられるという構想がなぜ疑問視されるのか。かなりの部分を占める理由は関連する政府部門の石油産業の上流工程(探査と開発)の現状と今後の展望が極めて不透明なことだ。このため計画の策定に当たって、系統的に踏み込んだ調査研究が欠如している。

 発表されているデータから見ると、中国のシェールガス可採埋蔵量は確かに希望が持てる。潜在資源量は世界で最も開発に成功している米国よりも多いとさえいえる。だが、技術的、資金的な障害、土地と水資源による制約、採掘コスト、価格形成メカニズム、パイプライン設備とパイプラインネットワークの管理など多くの制約要因によって、中国が米国のシェールガス革命を模倣できるかどうかにはあまりにも多くの課題があり、その難しさは想像を遥かに超えている。とりわけ技術面での革新的解決に目途が立たないことがシェールガス産業の前途が霧の中から抜け出せない状態を作っている。

 それ故に中国の「シェールガス革命」にはまだ慎重さが求められる。「安定を求め、熱に浮かされない」ことが必要であって、大躍進であるかのように理性を失ったような突進は避けなければならない。指導層トップのデザインに基づいて統一的、計画的に進め、中国独自の「発展型地方政府」(注)によるシェールガス発展に対する推進作用を発揮し、シェールガス開発に関連するマクロ的な管理体制を構築、完備し、シェールガス開発にとって望ましい良好な制度、環境を提供しなければならないのだ。

常識を打ち破り、採掘権管理、採掘プロセス、環境管理、市場応用面などの総合的な革新を進め、改革を加速しなければならない。吸収した技術の上に自国による革新を積み上げ、地域に適した方法で中国にふさわしいシェールガス開発の道を探らなければならない。さもなければ、いわゆる「シェールガス革命」は絵に描いた餅に終わり、実体のない繁栄を導くだけだ。

 

(注)発展型地方政府:経済発展過程において中国の地方政府が演じる役割についての一部の中国人学者による学術的呼称。歴史的、制度的には中央権力の移譲、財産権の地方化、財政分権制度の改革、非科学的な政治業績考課制度などさまざまな原因に起因する。発展型地方政府は中国の経済発展に重要な役割を果たしてきたが、一方で中央政府の権限の削減、地方債務の膨大な増加、腐敗や地方保護主義の横行、産業構造バランスの失墜や持続的発展戦略の貫徹を困難にするなど、無視できない弊害を生んでいる。