介護サービス業に外資の参入を

市場の潜在力を引き出し、経済の構造転換と高度化を推進 先頃招集された国務院常務委員会会議において、政府は「基本を維持し、金を出す」という基本方針のもと、民間パワーを介護サービスの主役とするよう推進し、民間による専門的介護機関設立をサポートし、さらに外資の介護サービスへの投資を奨励すべきとの指摘がなされた。専門家によると、中国の人口の高齢化は日々深刻化しているが、介護サービスはまだ発展の初期段階にあり、公的なパワーだけに頼って介護のニーズを満たすことは難しいとしている。民間投資、外資の介護サービス業への参入を促すことは、介護問題を解決できるだけではなく、国民生活を改善し、また投資構造を調整し、消費ニーズを掘り起こし、経済の構造転換と高度化を推し進める切り口・重点ともなる。

  

一般的な高齢者にも

介護サービスを

中国民生部が発表したデータによると、2012年末時点の中国の60歳以上の高齢者人口は1億9400万人に達し、全人口の14.3%を占めており、13年末には2億人、34年には4億人を突破する見込みである。また、12年末の全国の高齢者1000人当たりのベッド数は21.5床と、都市部の介護機関の「ベッド不足」は深刻である。

「公的な力にだけ頼っていても2億人近い高齢者の介護問題は解決しない」。中央財経大学の社会保障学部の?福霊主任は、「政府が現在重点を置いている介護サービスの対象は、主に民政の重点となっている『三無』(仕事をする能力がなく、収入がなく、身寄りがない)や、生活保護を受けていたり困窮している高齢者である。しかし、一般的な高齢者に対するケア能力がないため、市場と手を結んで、市場の力を借りて社会的資源の合理的な配置を行い、一般の高齢者も完全な介護サービスが受けられるようにする必要がある」と話す。

8月16日に行われた国務院常務委員会会議では、各層に分けて各種介護サービスを提供しなければならない、と指摘があった。公的な介護サービスは、「三無」で要介護要支援の生活困窮高齢者に無償か低料金のサービスを提供することに重点が置かれている。簡便化と規範のルール化を通して、行政の行う費用の徴収を減免し、民間パワーが専門的な介護機関を立ち上げることをサポートするとしている。

「これは介護サービスにおける政府と市場の資源配置の境界を明確化するのに役立ち、政府の経済的職責を明確にすると同時に、民間の介護サービス参入の規制緩和となる」。中国老齢科学研究センターの党俊武副主任は、「民間の介護サービス業における役割を十分に発揮させ、市場に頼って高齢者サービスの増加とサービスのレベルアップを推進すべきだ」と語る。

 

外資の導入で

消費ニーズの開拓を

「中国は60歳以上の人口が世界で最も多い国家であり、要介護要支援の高齢者人口と80歳以上の超高齢者人口も世界最多である。この大きなサービスのニーズは家庭や地域、政府に頼るだけでは解決できない」と党俊武副主任は言う。「民間投資、海外からの投資の介護サービス業への進出を開放することで、高齢者の各層のニーズを満たし、国民生活を改善することができ、さらに市場の活力を呼び起こし、業界発展の『欠陥』を補填できる」。

「介護は重大な社会問題であるだけでなく、強大な経済的ポテンシャルを秘めている」と指摘するのは中国国際経済交流センター・コンサルティング研究部の王軍副部長だ。彼は「政府が基本的な介護サービスを保障するという前提のもとで、民間投資の奨励を通して介護サービス業を発展させることは、不足している分野に投資を導くだけではなく、新しいニーズを効果的に掘り起こすこともでき、中国経済の将来の発展の原動力を強化できる」と語る。

市場関係者によると、介護サービスは高齢者の衣食住と交通手段、生活のケア、用品の生産、医療サービス、文化健康レジャーなど多くの分野をカバーし、関連する面は広く、産業リンケージは長く、発展の潜在力は巨大である。現在多くの経済分野の投資が飽和に向かい、生産能力の過剰が深刻である背景のもと、介護サービス業の発展を加速し、特に民間投資と海外からの投資を奨励することは、投資構造の調整、消費ニーズの開拓に役立ち、中国経済の構造転換と高度化を推進するとしている。

 

多角的な介護ニーズに

応えるために

近年、中国の多くの地方では介護サービス業への外資の参入を奨励する政策・措置を打ち出している。海外の介護サービス機関も中国の介護市場の様子をうかがっており、中国の国情に合った、中国の消費の特色に合った介護サービスを模索し、先進的な専門的介護サービスシステムを構築している。

現在、中国の介護サービス業はまだ初期的な段階にある。専門家は、海外資本の導入を奨励することにより、海外の介護サービス業の先進的な管理方法とサービス理念を吸収し、その経験と技術の優位性に学び、関連産業のサービスの質とレベルを向上させることができるとしている。

また、「中国の介護サービス業への外資導入は中国の巨大な高齢者市場に照準を合わせたものだ」との指摘もある。外国投資家がこの産業の将来性に目をつけているのは、膨大な数の急速に増加する高齢者人口と高齢者市場の不足部分を見抜いてのことである。

?福霊主任は、「一部の海外の介護サービス機関は中国の中流以上の顧客層をターゲットにしているが、社会的介護システムの建設は介護ニーズを出発点としなければならない。この意味から言えば、海外からの投資による介護サービスは、価格は高目になり受益者も限られているものの、介護ニーズは日々多層化し多元化しているため、中国の介護システムを補填する有益なものと見なすことができる」としている。