中国の太陽光発電産業は春を迎えられるか?

2013年3月、中国太陽電池パネル大手である無錫尚徳太陽能電力有限公司(サンテックパワー)が「破産手続き・会社更生」に入った。無錫尚徳は中国最大、世界の四大太陽光発電企業の1つである。中国の太陽光発電産業は、欧米の「双反(アンチダンピング調査と反助成調査)」の影響と国内の生産能力の深刻な過剰といった二重の試練を受けている。中国の太陽光発電産業は春を迎えることができるのだろうか?

産業全体の衰退ではない

中国太陽光発電産業連盟のデータでは、目下世界の太陽エネルギー発電の生産能力は実際の需要の1.5~2倍である。

中国太陽光発電産業連盟の王勃華秘書長が明かしたところによると、2011年の統計では太陽光発電企業の数は262社だったが、2012年にはすでに112社に減っているということだ。「これは、半分以上の企業が太陽光発電から撤退したことを意味するが、そうだとしても、2012年の中国で建設された太陽光発電モジュールの生産能力は4500万キロワットで、それは2009年の700%である」。

アナリストは、「尚徳の破産は中国の太陽光発電産業の最も風見鶏的なシグナルとなり、政府がこれ以上無制限に太陽光発電企業に“輸血”をせず、市場に生き残りの決定をゆだね、中国の太陽光発電産業が新たな再編期に突入したことを意味している」との考えを示した。

江蘇の、ある太陽光発電企業責任者は、「クリーンエネルギーとして、太陽光発電産業は依然として明るい前途がある」と述べた。その理由として、

(1)太陽エネルギー発電のコストは下がり続けているが、化石エネルギーのコストは上がり続けている。

(2)持続可能であるかという角度から考えると、化石エネルギーは枯渇に向かっている。

(3)環境保護への影響。重大なスモッグの発生源として、火力発電所は将来絶対に制限を受ける。

米国のマサチューセッツ工科大学の雑誌『技術評論』では、「中国の太陽光発電整理再編は必ずしも悪いことではない。さらに多くの企業が倒産することが、産出量の供給過剰・価格の急激な下降の局面を緩和することができる。そうなれば、企業はさらに多くの設備投資・新技術投入をすることができる。長い目で見ると太陽エネルギーの能力と化石エネルギーが優劣を競うということだ」と語られている。

専門家は指摘する。「現在、中国の太陽光発電産業はすでに再編の時期に入っている。歴史的経験から、適切な時期に再編を行うのは、決して関係産業の発展の妨げにならないし、逆に関係業界にさらに大きな発展の余地を与えることになるだろう」。

 

安価な送電網が実現可能

国家エネルギー局新エネルギー・再生可能エネルギー司の王駿司長は、「ドイツの分散型屋上太陽光発電所を例にとると、今はもう『表に記入して取付けるだけ』の段階である。住民はただ企画部門に行って申請票に記入するだけで、銀行は屋根の面積・照射条件などを現地考察し、貸付金を確定する。そして、業者が出向いて屋根に太陽光発電機を設置するのだ」と説明した。

今年1月の常州高新区粤海工業団地1570キロワットの太陽光発電プロジェクト併合発電、これは国が小型太陽光発電所無料併合政策を発布した後の、江蘇省の最初の正式な併合プロジェクトである。

「発電コストが高いことから、太陽光発電産業はまだ『育成誘導期』にあり、以下のように各方面でコストを分担する必要がある。一つは、政府からの助成に頼る。二つ目は、銀行あるいは保険会社の長期介入。三つ目は、太陽光発電企業自身の進歩」。中国太陽光発電産業連盟秘書室の王世江氏は、このように語る。

現在、ドイツ、オーストラリア、ブラジル及び米国の一部の州、例えばカリフォルニア州などは、すでに「格安送電網」を実現しており、太陽エネルギー発電のコストが従来の発電のコストと同等になっている。

「太陽光発電産業を発展させることは、『市場拡大』と『コスト引下げ』を同時に推進する過程である」と王勃華氏は指摘する。そして、「国内の太陽光発電企業の市場拡大とコスト引下げによる発展を助け、一方で市場の力を借りて旧式の産業能力を淘汰し、競争力のある企業の生き残りを図らなければならない。また一方では、関係の補償メカニズムを築き上げ、太陽光発電製品の高いコストを分散させ、国内消費市場にこの製品を使わせるようにするべきだ」と述べる。

 

「農村部への普及」を推進

現在、中国工業情報化部が音頭をとって、「太陽光発電の農村部への普及」をテーマとした計画を制定する準備をしている。それは、太陽光発電が大規模に農村市場に入るのを推進して、将来の都市化建設の「シェア・カー」に乗ることを旨としている。

だが、業界内の農村市場に対する太陽光発電の忍耐力に対しては、まだ数多くの懸念がある。太陽光エネルギーの専門家である韓啓明氏の分析では、国内の中級の省エネ企業の経験に照らすと、半ムー(約3万3000平方メートル)を占める農村の大規模ビニールハウスに数キロワットの太陽光発電システムを取り付けるには、およそ12万~13万元(約193万円~210万円)に及ぶ投入が必要であり、財政からの助成は3~4万元(約48万円~64万円)、農民は2~3万元(約32万円~48万円)の投入で、残りは銀行の借り入れで解決できる。

事実、国内各地で、今年は新たな太陽光発電の活用支援政策を実施する契機となっており、金太陽示範工程(ゴールド・サン・モデル・プロジェクト)・分散式太陽光発電大規模活用モデル地区など、国の分散式活用プロジェクトをチャネルとして、国家新エネルギーモデル都市・グリーンエネルギーモデル県・太陽エネルギーモデル村の創建などが結びつき、全面的に太陽光発電の活用を推進している。