≪独占取材≫辜勝阻(経済学者)
「経済・国民生活の五大争点」を語る

2月27日、第12期全国人民代表大会代表で中国民主建国会中央委員会副主席でもある経済学者の辜勝阻氏に独占取材を行った。辜氏は、「両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)では都市化、改革の深化、小規模企業支援、社会保障制度の再構築、空気と飲料水の安全などをめぐる争点が高い注目を浴びるだろう」と予想した。

 

■都市化

農民から市民へ――就業の安定が必要

辜氏は、「新しいタイプの都市化の最大の特徴は人に力点を置いた都市化だということである」との考えを示した。この都市化を推進するには、人の都市化と土地の都市化の関係をきちんと解決していくこと、つまり流動人口の市民化のプロセスを速めて、出稼ぎ農民の「職業では農業から非農業へ、地域では農村から都市へ、身分では農民から市民へ」の三次元の転換を図ることが必須であるということだ。

同氏は、流動人口が「市民化」できるか否かの鍵は安定して就業できるかどうかにあると考える。そのためには、出稼ぎ農民、特に新世代出稼ぎ農民(80年以降に生まれ、農業の就業経験がない)の職業研修システムと起業支援システムを構築し、起業を奨励する環境を作り出し、その起業・就業能力を増強し、就業の質を向上させ、彼らが都市社会にもっと溶け込めるようにする必要がある。また同時に、都市建設の基準を見直し、多くの中小都市を作り出し、さらに多くの流動人口を地元で都市化・市民化させ、「人がどこかに移動する」という問題を解決する必要がある。

 

■改革

独占業種に競争メカニズムを導入すべし

辜氏は、さしあたり体制改革を深化させるために、トップダウン設計と基本計画を重視するだけでなく、ほかに政府の体制、独占業種、所得分配、金融体制、財政・税務体制など重点領域の改革を適切に推進していくことが必要だと考えている。当面、最も重要な改革は政府の行政体制改革であり、改革により政府と市場の関係を改善していくことが必要で、それは、1つには「権限の委譲」、2つには「分権」、3つには「権限の限定」、4つには「越権」と「権利の侵害」の防止である。

辜氏はまた、「独占業種改革を急ぐ必要があり、業界の監視・管理体制を整備し、公平な競争を促進するべきだ」と考える。「独占業種の政企分開(行政と企業の職責分離)、「政資分開」(行政管理者と国有資本所有者の職責分離)をさらに推進し、政府の職能転換を急いで、不必要な行政的独占を一つひとつ取り除くべきである。独占業種に対してできるだけ競争メカニズムを取り入れて、競争性のある分野の市場拡張、資本多元化の改造、競争可能な部分の分離等の措置を通して、競争の中で国有経済の活力、支配力、影響力を増強するということだ」。

 

■医療保険

医療保険制度の再構築

辜氏は、目下、中国は異なる4つの医療保障ネットワーク、つまり公費医療、労働者基本医療保険、都市住民医療保険、新型農村合作医療制度が併存する医療保障体制である、と認める。

同氏は、以下のように提案する。まず都市医療保障の「3つを1つ」にし、「一家多制」を変え、「都市基本医療保険制度」を作り、徐々に実質補償比率を80%まで引き上げ、個人負担率を20%に下げる。第2に、農村社会医療保険を作り、全農村住民をカバーする制度を実現する。第3に、都市・農村の医療保険の併存を許容する。第4に、2020年以前に社会医療保険の全国民加入の目標を実現する。現在は、福利制度、強制保険制度・任意保険制度が併存しており、保障水準の差が大きいので、改革を速める必要がある。

 

■小規模企業

付加価値税・営業税の徴税最低基準の引き上げ

辜氏は、金融革新を通して多層的な金融体系を構築し、小規模企業の融資難・高利融資問題を緩和すべきであると考える。それは、民間金融の健全で秩序ある発展を導く必要があるが、それは民間資本が都市コミュニティーの中小銀行を大きく発展するように導いて、銀行が小規模融資サービスを展開することを奨励し、多チャンネルで融資提供を拡大するということだ。

同氏は言う。「ほかに財政と税務体制の改革を深化させて、小規模企業に対しての大規模減税・費用の追加控除・負担軽減を推進すべきだが、小規模企業の減税は百億台から千億台まで増やして、小規模企業存続に対する苦境を積極的に改善していくことが必要だ。付加価値税と営業税の徴税最低基準をさらに引き上げて、所得税の徴税優遇を拡大し、費用の支出計上基準を緩和し、営業税を付加価値税に変えるペースを速める必要がある。税制改革を速め、起業して間もない小規模・零細企業に対しても免税措置を実行する必要がある」。

 

■空気と水

「毒のある」「血を伴う」GDPを拒絶

辜氏は、全国都市化率が52%を超えたことで、中国は「大都市病」の集中的勃発期に入ったが、もしうまく解決できなければ、「血を伴うGDP」と「毒のあるGDP」という結果を招き、特に大気汚染と水質汚染は、都市住民が生存する上での最低ラインを直接脅かすことになるであろうと考える。

彼は、「さらに厳格な環境保護制度を確立するために、汚染物質排出量(例えばPM2.5)を国家の制限指標に盛り込み、汚染のモニタリング・早期警報・リスクアセスメントのメカニズムを整備し、環境監督システムの建設を進め、企業の汚染排出を厳格に規制し、大気と水質汚染への対応システムを整えるべきである」と提案している。