中国本土系ホテルブランド創設の時代

先日、ホテル業のポータルサイト邁点網(Meadin.COM)は『2012年12月全国星付きホテル開業統計報告』を発表したが、その中で中国本土系ブランドの碧桂園(Country Garden、カントリーガーデン)は2軒の高級星付きホテルを開業し、第3位につけている。また、開業数が多い上位10位までのブランドの中に、本土系ブランドは、万達(Wanda)、碧桂園、金陵、開元がランク入りしている。ちょうどこの1年、一部の中国本土の旅行会社と不動産グループが協力し、独自のホテルブランドを打ち出した。安麓(AhnLuh)、諾金(NUO)、唐拉雅秀(TANGLA)、万達嘉華(Wanda Realm)、鉑瑞(Primus)などの新しいホテルブランドがそれだ。今後、本土系ホテルブランドが台頭するのか、さらに国際ホテルブランドとの競争の中で、どのくらいの勝ち目があるのか。

競争の中で成長

「客観的に言うと、我々の近代的ホテルの認識は、国際ブランドに啓蒙されたものだ」。中国国家観光局(国家旅游局)傘下の中国旅遊研究院の戴斌院長は、このように国際ホテルブランドを評価した。中国の近代旅行業の発展は1979年に始まり、その後、外国からの客をもてなすために、続々と「近代的」なホテルが建てられた。北京建国ホテル(JIANGUO HOTEL BEIJING)はその代表例だ。1982年、北京建国ホテルは初の国際ホテル管理グループ―香港ペニンシュラグループのマネジメントを導入した。1984年、中国国務院は『北京建国ホテル経営管理方法の普及に関する事項』を公布し、全国に「建国に学ぼう」ブームを巻き起こした。同年、ホリデイ・グループが中国に上陸、翌1985年には国際ホテルグループのアコー(Accor)が、その後も国際ホテルグループが次々と中国に進出した。

「目下、国際的主要ホテルブランドはみな、中国で加盟ホテルを見つけたと言える」。戴氏は、このような局面には必然性があると考える。「ひとつには、当時、我々自身の管理経験が不足していたため。ほかには、当時国際ホテルグループは主に米国、日本、欧州などの先進国から来ていて、経済的に優位であったため」。しかし、30年余りを経て、局面は静かに変化している。

「中国の顧客市場拡大の速度が速すぎるために、国際ホテルブランド自身の人的資源や、マーケティング面での欠点が浮き彫りになり、経営のプレッシャーが増した」。同時に、顧客市場には大きな変化が生じており、徐々に国外志向型から国内志向型にシフトし、地元客の割合が大きくなっている上、消費水準も徐々に向上してきている。このため、中国の伝統文化や習慣を熟知した地元ホテルブランドは国内顧客へのサービスにおいて優位性がある。そして、本土系ブランドは国際ブランドと“直に”競争する中で絶えず学び、徐々に成長して、一定の市場を占めるようになった。錦江(JIN JIANG)、金陵(Jinglin)、建国、花園(Garden)、維景(Metropark)など本土系ホテルブランドは、ホテルマネジメントの専業化の道を前進し続けている。なかでも、錦江は米国のホテルマネジメント受託会社であるインターコンチネンタルの買収に成功し、中国旅行関連企業の国際的運営のために貴重な実例を提供した。

 

本土系ホテルブランド創設の時代に突入

2005年末、ヒルトン南京(南京希爾頓国際大酒店)が管理協約の利潤指標を達成できなかったことを理由に、株主側は国際的に著名なホテルマネジメント会社ヒルトンとの10年に渡る委託管理契約を繰り上げて中止し、マネジメント権を株主側の1つである港中旅グループに引渡すとともに、ホテル名を南京維景国際飯店(GRAND METROPARK HOTEL, NANJING、南京メトロパーク国際ホテル)と改名した。この引き継ぎの1カ月足らずの間に、シャングリラ・ホテル南京(南京「丁山香格里拉」)も正式に「南京丁山花園ホテル」に改名した。ヒルトンとシャングリラの2つの外資系ホテルマネジメント会社の相次ぐ撤退を、地元南京メディアは「地震」と報じた。

港中旅の接収管理後すぐに、南京メトロパーク国際ホテルはヒルトンの経営時の長期に渡る赤字経営の苦境から脱した。「中国の国情にマッチした管理体系がある」、メトロパークブランドはこのように自分たちの成功体験を総括した。戴氏は、本土のホテルマネジメント会社が中国人の消費需要をより熟知していると指摘する。「洋食と中華料理、コーヒーと中国茶、中国人はやはり後者を選ぶ傾向にある。このような消費習慣の違いは、ある程度ホテルの経営に影響する」というのだ。

華美ホテル顧問機構のチーフ・ナレッジ・オフィサーである趙煥?氏は「現在、国際的ホテルグループが徴収するベース・マネジメント・フィー(基本管理費)はホテル全体の営業収入の8%で、少ない支出ではないため、これがさらに多くのホテル業者の、自らホテルマネジメントを行うという選択を促す原因となっている」と指摘する。シティ・コンプレックスとツアー・コンプレックスの建設により、まとまった規模のホテルを蓄積してきた万達グループは自己持株のホテルブランドを発表した。ほかにも、碧桂園、緑地(グリーンランド)、富力、恒大、世貿などの不動産業者がホテル業の領域で手を広げる戦略を練っている。このことから、戴氏は、中国本土のホテルブランド創設の時代はすでに到来していると考えている。

 

国際的ブランドからの学習はまだまだ必要

近年、中国の旅行業は迅速に発展し、ホテル業に強大な牽引作用を及ぼした。最近のニュースでは、中国ホテル市場の先行きの楽観的予測に基づいて、インターコンチネンタルが新ブランド華邑ホテル(HUALUXE)を今後15~20年以内に中国の100都市で展開する。計画では、成都、西安、泉州、海口、張家界などの二線都市(地方の中核都市)、三線都市(二線都市以外の地方都市)を主要な用地選定地域に加えたという。国際ホテルブランドの目にかなった二、三線都市は中国本土系ホテルブランドにとっても主戦場だ。

「しかし全体的には、今のところ国際ホテルマネジメントグループの優位性に根本的な変化は生じていない」。戴氏の指摘では、現在の中国の5つ星ホテルの中で、本土系ホテルブランドが占めるのは10分の2か3である。また、台湾中油ホテル管理公司取締役の高天明氏も、「多くの国際ホテルグループもすでに経営管理戦略の調整を始め、その公式予約サイトに中国語ページを加え、さらに多くの中国人顧客を引き付けている」と言う。多くの国際ホテルグループがすでに、あるいは現在、中国顧客をターゲットとした仕組みや消費習慣のホテル商品やホテルブランドを開発しており、中国市場でのシェアを我先にと占有、強化している。

本土系ホテルブランドは国際ホテルブランドと対等にふるまいたくても、まだ多くの点で国際ブランドのホテルに学ばなければならない。戴氏は、「国際ブランドのホテルは品質の維持を重視し、時によりコストの維持にはこだわらない。同時に、彼らはみな完璧な国際的営業ネットワークを持っており、確立したメンバーシップ・システムには我々も学ぶべきだ」と指摘する。また「過去にはホテルは労働密集型の業種であると考えられていたが、実際には、ホテルは資本密集型、技術密集型の業種である」とも言う。「スマートホテルが将来のホテルの発展すべき方向であるが、現在大多数の本土系ホテルはインターネットによるマーケティングシステム、メンバーシップ・システムが不十分だ」。

将来、ホテル間の競争は、ますますブランド力の勝負になるであろう。国際的及びハイエンドな顧客市場において、国際ブランドは強力なアピール力を有している上、すでに固定客層が形成されている。中国の本土系ホテルに欠けているのは、まさに影響力のあるブランドである。現在、中国の多くのホテルマネジメント会社は、マネジメント輸出のレベルにとどまっており、ブランドの拡大には至っていないので、加盟ホテルの拡大は緩慢だ。戴氏は、「ホテルのブランド建設には強大な人的資源と情報資源の支えは欠かせないが、同時に、長期にわたる計画と必要資金の投入も重要である」と指摘した。