ジム・ヨン・キム世界銀行総裁が語る
中国は戦略的思考で経済問題に対応


記者会見でのキム総裁

11月30日、ジム・ヨン・キム世界銀行総裁は北京で記者会見し、自身初の訪中の慌しいスケジュールの中で、中国政府の貧困撲滅のための努力を目にするとともに、取り組む「中国政府のオープンな態度を感じ、中国は発展成功の模範例であり、その前途は明るいと確信している」と述べた。

貧困撲滅で大きな成果

キム総裁は、中国政府が貧困に終止符を打つために全力を尽くしていることに深い感銘を受けたと述べた。同氏は、記者会見に先立ち、四川省の綿陽、徳陽などを視察し、再建した母子保健病院などを訪問した。保健病院は地震で深刻な被害を受けていたが、同氏は被災地の人々が困難を克服して再び素晴らしい郷土を築いている姿を目の当たりにしたのである。

四川省でキム総裁は、「世界銀行の目的は貧困に終止符を打ち、共に繁栄を築いていくことです。私は今回の視察で目にしたすべてから、ますますその思いを強くし、鼓舞されました。四川の人々の努力にとても啓発されました」と語った。キム総裁によれば、張さんというある女性企業家に中国人が豊かになる典型を見たという。この女性企業家は、元はレイオフされた労働者だったが、解雇された後、1軒の自動車修理工場を創業した。工場は2009年から現在までに徳陽銀行から計7回の貸し出しを受けて、14㎡の修理工場から総面積5000㎡近い、従業員158人の自動車サービス会社に発展したのだ。

中国は貧困撲滅の面で顕著な成果を上げており、過去30年で6億人を貧困から脱出させている。同時に、今でも貧困人口の総数が世界第2位という大きな困難を伴う任務に直面している。

オープンな取り組みを評価

2030年には中国の人口の3分の2が都市部に居住していると予測されているが、研究では都市化は経済成長と生活向上を推進するが、同時に環境や食料の安全、医療衛生や教育サービスなどに大きな課題をもたらすという結果が出ている。

中国はこの課題に対応出来るのだろうか。ダウ•ジョーンズ兼ウォール•ストリート•ジャーナルの記者は「都市化の問題は戸籍制度改革や農村の土地制度改革などの様々な分野に及ぶが、これらの問題はどれも非常に困難かつ複雑な課題だ。中国政府はこうしたデリケートな問題の解決推進を願っているのか?」との質問を投げかけた。

キム総裁は中国政府の取り組み態度は非常にオープンだと賞賛している。同氏は記者の質問に「自分が李克強副総理と会談した際、副総理は『中国では今後、毎年平均1400万人の人口が都市に殺到すると予測されており、都市の戦略的な発展は経済成長をさらに推進する上で非常に重要な政策で、都市化の過程で生じる一連の問題を全面的に解決する必要がある。中国はこれまでに得た経験を参考に、困難であっても実施することが利益につながる問題の解決には力を注いでいく』と明確に指摘した」と答えている。

課題克服へ多方面で考慮

中国の経済状況はどうか。キム総裁は、「メキシコシティーで開かれたG20サミットでの世界銀行の報告には2つのポイントがある。1つ目はヨーロッパと米国経済の発展状況に対する懸念、2つ目は最近の中国経済のパフォーマンスが人々を鼓舞している点で、過去10年間、中国の経済成長率は10%に達し、10%を超えた時もあった。2012年は成長が鈍化しているが、中国経済の強靭なパフォーマンスは依然として人々を鼓舞している、」と答えている。

中国経済の成長に存在する「不均衡」「まとまりのなさ」「持続不可能」という問題について、キム総裁は「現在の中国政府は中国の発展の現状を自己診断し、どの面で成功したのか、さらなる成功を収めるにはどういった措置が必要かを自己評価したいと願っている。例えば、中国政府は都市化の問題を検討するに当たって、既に教育や衛生、交通、環境保護などを含む多くの分野の問題を検討しており、中国経済が不均衡、まとまりのなさ、持続不可能などの問題を解決できるよう心から望んでいる」と答えている。

キム総裁は最後に、「中国の新しい政権は中国経済の発展の中で生じる問題に戦略的ビジョン、戦略的思考によって取り組み、解決したいと願っており、こうした問題に対する議論と思考を深めることを希望している」と肯定的に語った。