「でっちあげ」は名を上げるため、関心を引くのは利益のため
中国のデータ・指数は実態を反映しているか?!

2010年の中華民族復興指数は0.6274、2011年の中国の家庭の平均住宅面積は116.4平米、中国の家庭の純資産は米国に比べ21%上回るなど…、近頃、さまざまな経済社会統計データや指数を新聞の片隅でよく目にするが、そのうちの一部が大きな論争を巻き起こしている。

専門家はこう言う。「現在、いろいろな機関が熱心に指数を発表しているが、それは経済的な効果と利益をもたらすからだ。だが、一部の指数は作成し公布するにあたり、指標の構想、サンプリング範囲、分析結果などで科学的緻密さが十分ではないうえ、社会の実態を正確に反映していないため、民衆の期待や政府の政策を間違った方向に誘導している。統計データや指数の公布に対して規定しようとするなら、業界の自立と監督管理制度の導入など多面的な措置により実現する必要がある」。

データを用いて話すのが主流

「以前、中国政府は政策決定に統計をあまり重視していなかったが、ここ20年、中国人は数字を用いて話をする習慣が身につき、データは社会の発展を判断する重要な指標となった。それにより、さまざまな指数が機運に乗じて生まれている」

中国社会科学院人口と労働経済研究所の張翼研究員は本紙記者の取材を受けて語った。漠然とした知識による判定から具体的なデータで状況を説明するようになったことは社会的な進歩であり、主流にもなっている。

現在、公式な統計部門以外に、大学、研究機関、企業からメディアに至るまで、日常的にさまざまな指数や調査研究データが発表されている。庶民は過去には知り得なかった情報を知る機会を得て、その情報源にしてもより多くの選択肢が出てきた。

「専門的指数が官庁以外の機関により発表されるのは、社会の専門化・分業化が進んだ結果であり、専門機関が社会に奉仕していることを表すものだ」。北京工商大学経済研センターの周清傑主任は本紙記者にこう話す。「一部の専門的指数は、経済・生活の中で非常に価値のある『風向計』になっており、政府、企業、国民が専門知識の力を借りて、経済向上の意思決定をするのにプラスになっている。例えば、匯豊銀行が発表する『中国PMI指数』、中央テレビが発表する『央視(中央テレビ)財経50指数』などだ」。

なぜ「たたかれる」指数が示されるのか

「賃金と物価はウサギとカメの競争のようだ。民族復興指数は62%(0.6274)に達したが、我々はまだ茶碗一杯の小麦粉が得られるかどうかに思い悩んでいる。どうやら我々は猛スピードで『復興』しなければならない一群のようだ。でなければ民族全体の『復興』の偉業に影響を与えてしまう!」

先日、某学者が打ち出した「民族復興指数」を、ネットユーザーはミニブログ上でこんな風に揶揄している。多くの指数や研究報告が国民の視野に入ってくるにつれ、世論から「たたかれる」「痛烈に批判される」ものも多くなってきた。統計データの中にはネットユーザーから「能無しデータ」呼ばわりされるものまである。

「中には、どう導き出したのかわからない、現実的意義に乏しい指数もある。一部のデータは現実社会から遊離していて、一般民衆が身をもって感じることと大きなギャップがあるため、極めて大きな論争を巻き起こした」と、首都経済貿易大学金融科の謝太峰教授は本紙記者に率直に言った。

「例えば民族復興指数、これを数字化することは難しい。『復興』とは、どの時期、どの国に照らして言うのか。この種の指数が社会発展に何か役立つのか。さらに言えば、某研究報告は農村と都市のデータの平均をとり、それを中国の1人当たりの住宅面積が36平米であると結論付けているが、これが中国住民の住宅問題の根本的解決のために意味があるのかどうか。現在、社会格差が深刻ななかで、平均値が現状を反映しているとは言えず、社会問題解決の助けにはならない。いたずらに民衆の反感を買い、社会の対立を激化させるだけだ」と謝氏はこのようにも述べた。

周清傑氏は、「中国では指数化された情報の公布と利用は、まだ発展の初期段階にあり、玉石混淆の感を免れない。一部機関では基礎データを収集する能力も備えておらず、必要な人材や予算を投入していない。指数を作る過程で、作成法に非科学的な面があり、データの数も少なすぎる。処理方法も科学性に欠け、不透明であるなどの問題があり、発表された指数の価値は低く、政府や民衆を間違った方向に導くこともある」と認める。

「データ」「指数」の背後に利益

頻繁に疑問と批判を招いているのに、なぜ機関や学者は依然として飽きもせず指数の発表を行うのか。専門家は、これら指数発表の背景には利益になるという考え方があるからだと指摘する。

周氏はこう言う。「現代人は情報の価値を重視しているので、指数の発表がうまくすると、その機関の輝かしい名刺になり、知名度と競争力をアップするのに役立つからだ。商業機関にとっては、よりよい経済効果があることを意味している」。

「学術界にも一種うわついた気風があり、一大センセーションを巻き起こすために、奇をてらった指数を作り出すこともある。研究が客観的で正確であるなしにかかわらず、結果が発表されさえすれば、人の関心を引き、社会に影響を与え、成績と利益につながるのだ」

謝氏は、「メディアの中には、その風潮を助長しているものもある。指数の発表者は“落ち”を作って名を上げたい、メディアはホットな問題を追い求めている、双方の利害が一致することにより『呆れた』指数やら研究報告が広く出回ることになる。これは芸能界のゴシップとまったく変わらない」と分析する。

プロジェクト経費や企業助成を受け取ることも、指数を発表する機関の金儲けの方法なのだ。「それらの助成を受ける研究の多くは、まず結論があり、あとからデータを探して証明をする。データは助成する側に有利な観点のものであり、金を出す側の代弁をしているのだ。不動産業者が助成する研究では、得られたデータは必ず不動産価格は高くないというものだ。このような指数が発表されると人々は惑わされ、社会に悪い影響を及ぼす」と謝氏は述べた。

指数発表には強硬な制約を設けるべき

「我々の眼に入る指数の中には、指標設計とサンプル抽出の上で非科学的なものがあり、これは研究者としての素養が低いことと大きく関係する。中国で統計分析に長けている人材は少ないのに、さまざまな指数や調査研究報告は星の数ほどある。その多くを、まったく統計の原理も知らない者が作っているのだ」

張氏によれば、「先進国である欧米では、指数の作成は専門機関と統計分析の能力のある人によって作られ、出てきたデータの精度と信憑性も高い。中国は目下データ発表に対して公式な基準がなく、学術界でも一致した見解がない。これによって指数乱発の現象が起こっている」ということだ。

周氏はこう考える。「指数を成熟させ、科学的なものにするには、発表する機関の運用に規制を加え、専門的能力を絶えず引き上げていくことも含め、多方面からの努力が必要だ。例えば、機関同士の良質な競争関係を作り、適合したものだけが生き残るようにする。メディアはさらに理性的に、真の自己判断力をもって、風潮を追わず、大げさな宣伝をせず、曲解しない。政府は公式にデータ発表する範囲を拡大し、信憑性を高める」。

彼はまた、指数発表に対しては、「強硬な制約」を設けるべきだと提案している。例えば、業界の主管部門・監督管理機関が規則を制定し、指数の発表を規範化する。業界の協会と業務執行資格制度を設立・整備し、業界の敷居を高くすることなどだ。

 

【資料】

最近、物議をかもしたデータや指数

●北京大学が発表した「中国国民生活発展報告2012」の、昨年の中国全家庭の平均住宅面積が116.4平米、1人当たりの住宅面積は36.0平米である、というもの。

●国家開発改革委員会研究院社会発展研究所の楊宜勇所長の、「2010年中華民族復興指数は0.6274で、62%の復興任務を達成した。これは2005年の民族復興指数(0.4644)から大幅に上昇した」という発言。

●西南財経大学発表の「中国家庭金融調査報告」の、現在中国の自宅所有率は89.68%を上回り、世界の60%前後の水準(米国65%、英国70%、日本60%)を遥かに超えた。中国家庭総純資産は69兆1000億米ドル(約5483兆7800億円)、米国家庭総純資産57兆1000憶米ドル(約4531兆4600億円)に比べ21%上回っている、というもの。

●中国科学院管理所が完成させた「世界と中国の都市化の道」報告で、北京、上海、天津の調和指数が全国の上位3位に入り、そのうち北京の調和指数が最高の0.79で、「調和都市」「住みやすい」都市と呼ばれている、ということ。

●中国人口宣伝教育センターと中国社会科学院が共同で発表した「2011年中国家庭幸福感調査」で、70%以上の回答者が幸福と感じている、と示したもの。