なぜ2大石油企業は巨額損失を出したのか

 

先ごろ、2大石油企業である中国石油化工集団公司(中石化)、中国石油天然気集団公司(中石油)は相次いで2011年の業績報告を発表した。

産業リンケージ(連鎖)においての位置が適切だと見られている中石油は、全体の利益が1330億元(約1兆6800億円)、1日平均利益が3億6400万元(約46億円)だが、製油部門の欠損は600億元(約7560億円)、1日平均の損失は1億6400万元(約20億円)に達した。国内最大の製油業者である中石化も昨年の製油部分の欠損が348億元に達していた。

なぜ、「2大勢力」の製油業務上で1千億を超す巨額な欠損が生じたのか。巨額の欠損が石油製品の価格を引き上げているのか。

あるいは、中国の石油製品の定価メカニズムには、もっと根深い問題が存在するのだろうか。

これらの問題について、中国国際経済交流センターの陳永傑副秘書長にインタビューした。

 

怪しい突然の巨額損失

―― 2大石油企業の製油業務に1千億の巨額な損失が出現しましたが、水増しがあるのでしょうか。

陳永傑 両社の発表したデータに基づいて計算すると、中石油の加工石油製品は1億3300万トンで、損失は600億元(約7560億円)に達し、1トンにつき450元(約5670円)の損失、そして、中石化の加工原油は2億1700万トンで、損失は348億元(約4380億円)、1トンごとの損失は160元(約2000円)です。

 注目に値するのは、中石油の加工原油中、自社生産原油は約90%を占めており、原油買付価格の比率は比較的低いことです。

しかし、中石化の自社生産原油は加工原油の20%にもならず、80%近くは輸入に頼っていて、原油の買付価格の比率は比較的高いですが、両者の石油製品の売り値は基本的には同じです。

しかし、中石油の1トン当たりの損失額は中石化の3倍近くです。それに、2011年と2010年を比較すると、国際原油価格・輸入原油価格と、国内石油製品価格の差に大きな変化はありません。

ならばなぜ、2010年の製油の利益が、中石油は1トンにつき50元余りあり、中石化は75元あるのに、2011年には大きな損失が出たのでしょうか。

 さらに、製油で巨額の損失があったのに、2010年の幹部と従業員の賃金・福利が明らかに引き上げられたのはなぜなのでしょうか。

これは明らかに、2011年の製油の1千億元を超す巨額損失は、二大石油会社が損失補てんとしての石油製品の値上げを要求したのだと言えます。

 

損失は値上げの口実には

ならない

―― 人々にとって高い石油代を払うのは理にかなっているのでしょうか。

陳永傑 たとえ2大石油企業の製油業務上で巨額の損失があったとしても、上中下流の全業種業務で、各部分全体では利潤を上げていて、利益率も相当高いのです。

両石油企業の年次報告のデータによると、2011年の中石油全体の純資産利益率は12%を超え、中石化全体の純資産利益率も15%を超えていて、明らかに全国工業平均レベルより高いです。

 では、製油部門では、間違いなく損失が出ているのでしょうか。実際はそうではありません。現在の定価制度の下では、中国の石油業界の上流部門の石油調査と採掘利潤は厚く、中流部門の石油加工である製油は、損失になる時も利益が出る時もあり、下流部門の石油製品の販売利益は少なくはないです。

石油化学工業は一般的には市場平均の利益ですが、業界全体・産業チェーン全体で見ると、明らかに利益率は社会の平均水準より高いのです。

 さらに、「2大勢力」以外のすべての製油企業にも損失が出ているのでしょうか。それもちがいます!石油加工領域においては、一部の民営製油企業は国際的に低品質な燃料油を輸入し、その他の製油企業は国内の市場価格の原油を受け入れざるを得ません。

とはいっても、民営製油企業は、基本的には利益を出し続けており、ほとんど損失を出してはいません。民営製油企業は損失が出ないのに、国営製油企業は損失が出る。これは裏返して言えば、国有製油企業にも経営管理する上で減損を黒字転換する潜在力が存在するということです。

 ならば、どこから国に損失部分の助成を要求する理由が出てくるのでしょう。損失が出たから値上げするなどという口実はあり得ません!

 

石油価格の国際的リンクに

8つの問題

―― 石油製品の価格が上がり続け、定価が国際的にリンクするメカニズムは理にかなっているのでしょうか。

陳永傑 私は、目下の石油価格の国際的リンクのメカニズムには、主に8つの大きな問題が存在すると見ています。

 第1は、「上がるのは速く、下がるのは遅い」、「値上げ幅は多く、値下げ幅は少ない」ことで広く社会から批判が出ています。原油価格の国際連動改革があった2009年1月15日以来、石油製品価格は17回の調整がありましたが、12回は上方調整、5回は下方調整でした。改革3年で、国際原油価格は上下動がありましたが、中国の原油価格は値上げ幅は大きく、値下げ幅は小さくて、公正さを欠いています。

 第2には、人民元切り上げは軽視され、米ドル換算の石油価格の値上がり分は相殺されて、国際原油価格の実質値上げ幅が誇張されています。

石油製品の価格調整は米ドル換算の国際価格が基準となっていますが、この3年あまり、人民元は上がり続けているので、もし人民元に基づいて実価格を計算したなら、これほど高くはないはずです。

つまり、人民元に照らして計算した価格なら、2011年に輸入石油価格は2008年より高くはならないのですが、中国のガソリン価格は同期には40%も上昇し、今年はまた10%以上も上昇しています。

 第3に、「22日、上下4%振れ」での価格調整メカニズムが、一定程度になると、国内石油製品の価格決定権を国際的石油独占勢力に譲り渡すことになります。

国際的石油ブローカーが22日間の振幅を4%前後にコントロールしさえすれば、それは形を変えて中国の石油価格をコントロールできるということで、国際石油市場での中国の発言権と影響力に損害を与えたのです。

 第4には、「原油価格国際リンク」改革政策を発表した時、国内原油価格は高く、国際原油価格は低かったのですが、国内原油の定価を起点として大幅につり上げられました。

2009年1月の原油価格改革時、国内原油価格は1トン当たり5440元(約6万8500円)で、米ドル換算では同約780米ドルでした。しかし、金融危機を受けて、国際原油価格は同約360米ドルに下落しました。

この最低点が基準となったので、中国の原油価格は国際原油価格の上昇に伴ってさらにかさ上げされることになりました。

 第5は、国際原油価格によって製油企業がコストを高く見積もるのを促進し、企業の実質的消化能力が過小評価されることで、国際的なインフレのプレッシャーが直接国内に転移されているのです。

 第6には、中国の海外での割当原油と外交的関係に基づいた原油が、中国の輸入原油の実質価格をさらにつり上げていると考えられていないことです。

データによると、中国の海外石油割当は目下6000万トン余りに達していて、このうち生産コストと買入価格の大部分は、明らかに国際水準を下回り、国内よりも低いものさえあるのです。

 第7は、国内原油価格は国際原油価格に「便乗」し、明らかに石油企業の実質的独占利益を拡大させています。2社の年次報告によれば、2011年、中石油の原油1トンごとの加工の営業利益は1600元(約2万円)余りであり、中石化では330元(約4160円)でした。

 第8は、現行の税収の構造によって、国際原油価格が国内原油価格値上げをもたらすブースター(増幅器)となっているということです。2011年、中国の原油生産の付加価値税は31.7%増加、原油生産所得税は77.5%の増加で、全国税収の倍の増加幅でした。

石油・石油製品の生産と流通部分の付加価値税と消費税は、国際原油価格の値上がりに伴って上昇し、加えて徴収される石油特別収益金と資源税の引き上げも、国内原油価格のさらなる値上がりを推し進める大きな要因となっているのです。