中国の海水淡水化プロジェクト

都市の水資源の逼迫、地下水汲み上げがもたらす地盤沈下など、最近頻繁に報道されるニュースは絶えず人々の神経にさわり、また中国の都市の水不足の状況に警鐘を鳴らしている。

 水不足の危機をどう読み解くのか。「源流を拓き流れを抑える」多くの試みの中で、新興の海水淡水化産業が再び人々の視野に入り、目下多くの都市で重点的に育成している水資源の「予備軍」となっている。海水淡水化は都市にどれほどの水をもたらすのか。我々はいつになったら海の水を飲めるのだろうか。

 

給水量への貢献率がアップ

 浙江省舟山市に位置する?泗県は島嶼県で、また水不足が深刻な地区でもある。通常、年間に不足する水は102万1000立方メートルで不足する量は30%に達する。しかし、十数年の工事を経て、海水淡水化による供給水が現在では全体の80%になり、第一の水源となって、もはや「天気頼み」ではなくなった。

 ?泗県はひとつの始まりに過ぎない。延々と続く中国の海岸線に目を向けて見ると、集中的な海水淡水化工事を見ることができる。まさに発展した沿岸都市に「水」をもたらす希望を与えている。

 国家海洋局天津海水淡水化・総合利用研究所のデータによると、2010年までに、中国では既に72の海水淡水化装置が完成しており、日量24万トンの淡水を供給している。建設中と建設予定の工事も56件あり、すべてが完成すれば中国の海水淡水化の日量は220万トンとなる。

これは1日分で過去18年間の合計に匹敵する量だ。またこの数字は、くしくも先日、国務院弁公庁が発表した『海水淡水化産業の発展加速に関する意見』(以下、『意見』)の中で要求している達成目標でもある。

 この『意見』は、「2015年までに中国の海水淡水化能力は日量220万~260万立方メートルとなり、島嶼部で新たに増加する水供給量に対する貢献率は50%以上、沿海部の水不足地域で新たに増加する工業用水に対する貢献率は15%以上」と指摘している。

『意見』はまた、この日量で計算すると、2015年には海水淡水化による年間の淡水生産能力は8億~9億立方メートルとなり、この数字は年間500億立方メートル以上の水が不足している中国で、2015年時点では海水淡水化による貢献が1%を超える、とも指摘している。

 

自治体の給水計画への組み入れ

 海水淡水化はますます重要なだけでなく、「手の届く」ところまで来ている。『意見』では海水淡水化を自治体の給水システムに組み込むことを初めて奨励した。多くの都市もこれに対して計画を策定している。

 浙江省の計画では、今後2~3年で淡水化された海水が都市の水道ネットワークに組み込まれ、多くの家々に供給される。舟山、?泗、岱山、寧波、玉環、台州、温州などの島嶼及び沿海都市で利用される水の半分は将来的に海水淡水化で賄われる。

 山東省青島では2012年下半期までに淡水化された海水が都市部のメイン給水管ネットワークに組み込まれ、人口50万人分の利用を賄うことになる。これは青島市街部の生活用水全体の15%以上で、これにより年間で、〓(山へんに勞)山ダムの貯水量の3分の2に当たる3600万トン以上の水道水が節約できることとなる。

 沿海都市ばかりでなく、深刻な水不足に悩む北京でも淡水化された海水の利用を都市計画に組み入れた。2010年には、海水淡水化は北京市の給水事業活動報告に登場し、予備調査も始まっている。2011年に、北京市は『給水改革の発展をさらに強化することに関する意見』を発表し、「引黄工程(黄河の水利プロジェクト)」、海水淡水化とカルスト水の科学利用などを水資源備蓄増加の戦略措置とすることを明確に打ち出し、海水淡水化を戦略的水源の一つとすることを初めて明確にした。

 

政策面の大きな支持の獲得

 北京市水利計画設計研究院の張?副院長は、海水淡水化はおそらく渤海湾から取水することになるが、コストが高く、予測では出荷価格は1立方メートル当たり6元程度、渤海湾から距離のある北京では1立方メートル当たり9元近くになるだろう、と述べている。

 数年前よりはかなり下がったとはいえ、現在の水の値段からすると、この価格はやはりかなり高い。天津の漢沽区では現在、日量約6000トンの淡水化された海水が市の給水管ネットワークに供給されているが、水道水の値段が1トン当たり4.6元なのに対し、1トン当たりの価格は8.15元で、つまり淡水化された海水1トンにつき3.55元の赤字を出していることになる。

 天津海水淡水化・総合利用研究所チーフエンジニアの阮国嶺氏は、海水淡水化がなかなか普及出来ない最大の原因は、科学的、合理的な水の価格体系と供給の仕組みが欠けていることだ、と指摘している。海水淡水化による水の値段はどんな基準によるべきなのか。政策的な補助はないのだろうか。現在、関係部門で関連政策の研究を急いでいる。

 『意見』では、今後中央は海水淡水化産業に対する税務上の優遇策を強化して支持を強め、金融面、価格面で支持する政策を実施すると明確に打ち出している。具体的には各レベルの政府による財政投入の拡大、貸付の強化、民間資本参入の導入、科学的合理的な水価格形成の仕組みの構築などだ。