低迷する住宅市場で分岐点を迎えた住宅価格
不動産市場――マクロ抑制策継続で来年の反騰はない?!

昨今、不動産市場では購入制限、貸出制限など一連の抑制政策の影響で、全国の商業住宅市場が低迷し、各地で値下げの傾向が顕著になっている。住宅価格の今後の動向について、多くの専門家は今後も下落すると予測する中、抑制政策が緩和されることは決してないとの見方だ。

 

主要デベロッパーが相次ぎ値下げ

 この2年来、中国は一貫して不動産に対する抑制策を継続し、一連の重要措置を打ち出してきた。特に中低所得層向け保障住宅プロジェクトによる住宅建設は住宅価格の引き下げ圧力に対して大きな効果を及ぼした。現状の不動産価格は相対的にはこう着状態と言えるが、緩み始めたのも事実だ。

 伝統的な「金九銀十(9月、10月は秋の収穫期を迎えて消費者心理が緩み、消費が活発になることを表す表現)」も終わり11月に入ったが、ますます多くの住宅販売企業が価格調整に着手し、大手もその例外ではない。

陰りを見せてきた不動産市場は大小デベロッパーが受けるプレッシャーを倍加し、小規模な企業は値下げを余儀なくされている。大手もそれに続かざるを得ず、主要デベロッパーグループも価格値下げに踏み切った。ある企業の販売中物件の値下げ幅は20%にも達する。

 中古住宅についても、成約物件数が次々と過去最低を記録し、一部の都市では不動産仲介業者の閉店が相次いでいる。不動産仲介大手の鏈家地産が先日発表した研究レポートでは、今年に入ってからの北京の中古住宅仲介業者の閉店数はこの3年来最多の1000社前後で、このうち10月だけで177社が閉店し、単月の閉店数が100社を超える月が何カ月も続いている。

そのうちの73%が中小の仲介会社だ。ある仲介会社の経営者は「主な原因は中古住宅の成約物件数が前月を下回る傾向が何カ月も続いているため、市場の低迷下、生きるためには店を閉めるしかない」と話している。

 著名な金融評論家の余豊慧氏は記者に対して、「不動産に対する抑制政策が浸透するにつれてその効果も現れ始めた。住宅価格の高騰は抑制され、値上がり幅は目に見えて鈍化した。不動産市場の取引量も大幅に減少した。土地の成約量が減少して価格も下がり、土地売却収入が減少した。特に喜ばしいのは、既に市場に住宅価格が下がるという予測が出来上がっているため、抑制政策が効果を発揮するという認識を庶民が深めていることだ」と語った。

 

住宅価格下落を予測する3つの要因

 今後の不動産市場の動向について、一部の専門家は既に住宅価格がターニングポイントに入り、価格の下落傾向は明らかで、来年も反騰することはないと考えている。

 中国社会科学院の経済学博士・馬光遠氏は記者に対して「今後住宅価格がどうなるかを現時点で判断することはできないが、来年の上半期になればよりハッキリした予測が可能となるだろう。下がるとすれば、その傾向は今よりいっそうハッキリしたものになる。このまま住宅購入制限を続けさえすれば、住宅価格は元(の低い水準)に戻るだろう」と語っている。

 馬博士は「現在、全体としての価格動向は既に非常にハッキリしており、一連の抑制策の結果、70の大中都市、重点都市を問わず住宅価格は基本的に停滞しており、万科のような大手デベロッパー(開発業者)も含めて既に実質的な値下げの動きが出始めている。これは購入制限などを含めた一連の抑制策の効果が現れ、投資や投機を有効に抑制しているということだ」と具体的に分析している。

 馬博士はまた、住宅価格が下がると判断する3つの要因を挙げる。

1点目は、抑制政策の継続が不動産全体の需給局面に変化をもたらしていること。購入制限は大量の投資や投機目的の不正常なニーズを抑制し、居住用という当然のニーズが当たり前になって来たことで、需給の逼迫が緩んだこと。

2点目は、現状の通貨政策に変化がないこと。多少の微調整の可能性はあるが、それによる資金が不動産に向かうとは考えられない。不動産に対して非常に厳しい通貨政策が採られていることで、デベロッパーの資金フローが非常に逼迫し、値下げしてでも売らなければ破産し、“弾薬(資金)”が無くなれば値下げしてでも回収するしかない、というターニングポイントを迎えていること。

3点目は、転売を狙った投資家であれ、デベロッパーであれ、一般庶民であれ、今後の不動産業界全体に対する予測が“理性的”なものになりつつあること。

 

抑制政策は中止すべきではない

 馬博士は「不動産抑制政策は一度でも緩めたら、住宅価格は収拾がつかなくなる。価格が下がり始めるまでに、これほど長く抑制策を続けなければならなかった理由の一つは、これまで抑制策が最後まで徹底して行われなかったために住宅価格の再度の暴騰を引き起こし、市場予測にも信頼性が欠けていたことだ。なぜ抑制策を堅持しなければならないかといえば、利益を得る構造が非常に複雑で、(抑制に)抵抗する力も非常に強いからだ」と考えている。

 余豊慧氏は「マクロ経済的には継続的な成長、安定成長を求める声は多い。しかも、不動産は伝統的に経済成長を引っ張る原動力のため、抑制政策は様々な議論を呼び、空前の抵抗圧力にさらされている。そのほか、不動産の抑制は地方政府にGDPの減少、土地財政収入の減少、不動産税収減少の三つの減少をもたらすため、地方政府からデベロッパー、投資や投機目的で不動産を入手済みの者などが規制の圧力を緩めることを願っている」と述べている。

 馬博士は「住宅価格がどうなるかは、抑制政策の手綱さばきにかかっている。現状ではまだ抑制政策を緩める理由はない。購入制限はそれに代わり得る政策が現れて初めて緩和することができる。購入制限を緩めた場合に住宅価格がどうなるかさらに慎重に見なければならない」と語っている。