「エコ交通時代」到来!
新エネルギー車への期待高まる

自家用車、タクシー、路線バス…。

中国・北京で10月12日、4日間の日程で開幕した「2011中国国際新エネルギー自動車産業促進ウィーク」では、今話題の新型電気自動車(EV)が続々登場。試乗会では大勢の「新しもの好き」がわれ先にとハンドルを握った。その盛況ぶりは環境に優しい「エコ交通」時代の幕開けを暗示しているかのようだ。

 

2015年までに100万台

 展示会場では大連のメーカーが開発した赤と緑の2台の電動カートがひと際来場者の目を引いた。屋根と車体に太陽電池パネルが搭載されている。初お披露目となったこの太陽光発電自動車は緊急時に貴重な電気の供給源になるほか、移動式の充電スタンドとしても利用できるという優れものだ。

 新エネルギー車の普及率が中国ひいては世界でも最大規模を誇る深センでは現在、ハイブリッドと純電気式の大型路線バスが2050台、純電気式のタクシーが300台運行している。

 中国工業情報化部の統計によると、今年7月現在、モデル都市に指定された25都市の省エネ・新エネルギー車の保有台数は1万台を超え、走行距離は3億3000万キロメートルに達した。

 中国工程院院士で世界電気自動車協会主席の陳清泉氏は「中国の純電気自動車の保有台数は世界一で、電気自動車王国になる日も近い」と話す。また、米EVベンチャー・CODA(コーダ)社のフィリップ・マートーCEOは「2015年までに少なくとも100万台の電気自動車が街を走るようになり、2020年には中国が世界最大の新エネルギー車市場となる」との見方を示している。

 現在、世界各国は新エネルギー車の発展と応用を自国の自動車産業発展のための重要戦略と位置付けている。中国も独自開発のピッチを上げ、自動車大国から自動車強国へと華麗なる転身を遂げたい考え。また、持続可能な経済発展に向け、省エネ・排出削減を推進していきたいとしている。

 

自家用車としての普及が課題

 北京は長い間、交通渋滞の緩和や二酸化炭素排出量削減のための一環としてナンバープレートの発行数制限などの措置を講じてきたが、根本的な解決には至っていない。新エネルギー車は都市住民の「エコなお出掛け」を実現させるものとして期待が高まっている。

 中国環境保護部が発表した「2011年上半期環境保護重点都市の空気の質状況」によると、北京を含む45都市の空気の質は基準値を超えており、自動車の排気ガスがその主な原因となっている。新エネルギー車の推進後、路線バスをハイブリッドに変えただけで省エネ率は20%~30%に達し、二酸化炭素の排出量も大幅に削減した。

 また、デロイト・トウシュ・トーマツのレポートによると、中国の大多数のドライバー(93%)が電気自動車に興味を持っているが、今のところ25のモデル都市で自家用車として購入された新エネルギー車はわずか1000台余り。保有台数全体の10分の1程度である。市場は成長途中の段階で、一般家庭への普及までにはまだ時間がかかりそうだ。

 

まずは公共交通から

 新エネルギー車の大衆化を待つ間、先に公共交通への導入が進められている。国家エネルギー委員会専門家諮問委員会の張国宝主任は「電気自動車の発展のカギは蓄電池の性能。稼働時間を長くすると同時に小型軽量化も必要で、技術的課題は山積みだ。まずは路線バスのような走行距離が短いものから導入していけば良い」と語っている。

 今年7月、中国科学技術部が発表した「国家『第十二次五カ年計画』科学・技術発展計画」には、新エネルギー車を今後5年間、重点的に支援することが盛り込まれた。各地では新エネルギー車普及への近道を開拓すべく、新たなビジネスモデルの模索が始まっている。中国で初めて純電気式の路線バスを導入した合肥市では蓄電池の「ファイナンスリース」方式を採用した。バス本体と蓄電池を切り離して考えるという発想だ。深センでも検討が始まっている。

 送電最大手である国家電網公司の劉振亜社長は「今後5年で電気自動車の充電・電池交換スタンドを新たに2900カ所、充電ポストを54万カ所建設する予定。これで80万台の電気自動車に対応できる」との方針を示している。