中ロを結ぶ石油ルートが発展を導く

エネルギー協力の新たな道筋

 ロシアのプーチン首相が中国訪問中の10月11日、中ロ両国の首脳が北京で第16回定期会談を行った。今回の会談の共同コミュニケは、プーチン首相と温家宝総理がともに中ロのエネルギー協力の実り多い成果と大きな将来性を指摘、双方がパイプラインによる原油の貿易価格問題で一致したとしている。長年議論されてきた東西間の石油資源ルートに新たな道筋が付けられた。

 ここに至るまで、中ロのエネルギー協力は、既に一つの大きなプロジェクトで活発な進展を遂げている。中ロ原油パイプラインは既に2011年1月1日からロシア側からの中国向け供給が開始されている。これは両国のエネルギー協力の重要な進展を示すもので、ロシアに安定した原油輸出市場を提供するとともに、中国にも原油の安定供給をもたらした。原油はシベリアから中国の大慶に向けて絶えず送られている。この陸上のパイプラインはホルムズ海峡からマラッカ海峡、シンガポール海峡をつなぐ石油シーレーンに次ぐ、太平洋まで通じる新たな東への「石油ライフライン」となった。

  

 「生命線」で多発する紛争

 エネルギーの安全は各国の安全と密接に結びついているため、「生命線」に関わる事には誰しもが自身の利益獲得に躍起となる。

 エネルギー大国ロシアにとっては、全世界の確認石油埋蔵量の12%、天然ガス埋蔵量の3分の2が集中していることから、石油・天然ガスの輸出はロシア経済を蘇らせる大動脈である。中ロのパイプライン建設により双方のエネルギー協力を拡大することは、元々はロシア側から提案してきたことだ。

2001年、中ロはアンガルスク~大慶間の石油パイプライン建設プロジェクトについて共同で経済・技術的な実現可能性調査(フィージビリティースタデイ)を行う協定に調印した。しかし、双方の関係部門によるパイプラインの事前準備活動が鳴り物入りで進められている折もおり、2002年にロシアの連邦安全保障会議は計画を変更し、パイプラインの終点をロシア極東の太平洋西岸の港であるナホトカに変えた経緯がある。

 アンガルスク~大慶パイプラインに問題が生じた直接の原因は中国が東アジアのエネルギーをコントロールすることを日本が恐れたことにある。ロシア側にも、一部に中国がロシアのエネルギープロジェクトに投資することを懸念し、これを制限しようとする考えがあった。当時、ロシアのエネルギー政策研究所所長のウラジミール・ミーロフは「ロシアが、自国の自然資源分野への外国の直接投資を制限しようとするならば、真っ先に考慮するのは『中国のファクター』だ」と率直に語っている。結果的にロシア側は、多くの論証に基づいてアンガルスク~ナホトカラインに大慶への支線を設けるという折衷案を選択することになる。

 太平洋西岸の国々にとってもうひとつの「生命線」の源であるアラブ湾岸地区では、絶えず戦争や混乱が起こっている。湾岸地区からの原油輸出の75%以上がアジア向けであり、それはまるで東に向けて流れる大動脈のようだ。2010年9月以来、アジアのエネルギー需要の拡大と、中東からの輸入原油への依存などの多くの要因により原油価格が25%上昇し、インフレをさらに加速した。ホルムズ海峡は湾岸からの石油輸入の唯一の水路であり、“世界で最も重要な石油生命線”と呼ばれている。かつてイランはアメリカやイスラエルがイランの核施設を攻撃するなら、イランはホルムズ海峡を封鎖する、と威嚇したことがある。

 

上策はルートの多様化

 ロシアの石油パイプライン開通は多くの国々に恩恵をもたらす。ロシア自身にとっては豊富な石油資源が安定した市場を得ることになり、極東地域の資源開発促進と経済社会の発展に重要な意義を持つ。中国、日本にとっても、石油資源の輸入先の多様化をもたらすことになる。

 しかし、2年前、ロシアとウクライナの天然ガス争いがウクライナにもたらした困難は関係国を震撼させた。前述の極東の石油パイプライン問題もロシア、中国、日本におけるエネルギー問題の複雑さとデリケートさを浮き彫りにした。中東情勢は世界の原油価格とエネルギーの安定にさらに深く関わっており、特に石油を輸入するすべてのアジアの国々は中東での事態の推移に脅かされることになる。予測では、中国は2035年に石油の輸入依存度が72%に達するとされている。

 エネルギー協力において発生する問題に、どのように最善かつ合理的に対応し、最大の利益を得るか。中国とロシアにとって大きな課題であり、それ以外の各国にとっても対応しなければならない問題だ。このように、一面ではエネルギー輸入の多元化を絶えず進めると同時に、一面では国際ルールを守り、相互信頼、相互利益、平等、協力に基づく新たな安全保障の枠組みを作り上げることが東西間のエネルギーの大動脈がスムーズにつながる保証となる。

かつて、ロシアの「独立新聞」が発表した「パイプラインは友誼の道を敷くのか、それとも友誼を埋めるのか」と題する論文が指摘するように、ロシアと中国の原油パイプラインプロジェクトはドラム缶でもルーブルでも計れない、もうひとつの重要な要素がある。それはすなわち、両国の人々の長期にわたる友好的感情である。