違法な利益追求で市場を撹乱 正常な経済運営を破壊
経済データの漏えいは国家安全に危機をもたらす

犯罪のリスクは小さく利益は大きい

 『中華人民共和国国家機密保護法』は、すべての国家機関、軍隊、政党、社会団体、企業と事業単位及び一般人には国家機密を守る義務があると明確に規定している。国家機密の安全を脅かすいかなる行為も、すべて法的措置の対象となる。国民経済の主要データも、正式発表前は国家機密に属する。それでも一部の人間がリスクを犯して情報を漏らす原因はひとえに「利益」の二文字だ。

 孫振、伍超明の2人の事件が示しているのは、彼らが情報を流した先が証券業界の人間だということだ。マクロ経済に関するデータは、一般庶民にとってはなんのことはないものだが、証券業界の人間にとっては大きな経済的利益につながることを表している。

 業界関係者によると、一見単純なひとつのデータも、実は投機的なビジネスに結びつく可能性を含んでいる。例えば債権市場では、もし事前に知り得た情報が市場の予測より悲観的なものなら、それは事前に売り逃げてリスクを回避し、逆に市場の事前予測より楽観的なものなら、前もって購入し利益を得ることにつながるというわけだ。

他にも、証券会社のアナリストがもしマクロ経済データを正確に把握していれば、その投資ファンドはより多くの利益を得ることができ、またたくさんの投資家が彼の見通しを信じてついてくることで、彼自身の会社からの高額な報酬の獲得にもつながるのだ。

 後述する中国行為法学会副秘書長の陳?天博士が本紙記者の取材に対して語っているように、重要な経済データは様々な段階を経由するため、これを管理することは難しい。重要な経済データに関する犯罪はリスクが小さく、利益が大きい点も情報漏洩事件が度々発生する原因だ。

陳博士は「刑法では機密に関わる犯罪についての規定は比較的完備しているが、一般的に犯罪を予防する効果は“違法必究(法を犯せば必ず法に基づいて処分される)”がどの程度実践されているか、による。情報漏洩事件は発見が難しく、確証を得るのも難しい。立件も難しく、処分されるケースが少ないため、犯罪のリスクはおのずと小さくなる。客観的にリスクが小さく、利益が大きいという状況が容易に犯罪に走らせるのだ」と語っている。

  

情報漏えいは市場の混乱を招く

 一部の人間が事前に重要な経済データを知り、自分でしまいこむことは市場の秩序を乱し、多くの投資家の合法的な権利と利益を犯すことになる。例えば2011年の4月14日、香港のメディアが大陸の経済データを事前に暴露した後、これが原因で世界中の市場が混乱した。ロイター通信の報道では、米ドルのDXY指数(主要6通貨に対するドルの値動きを示す)が約16カ月ぶりの低い数値にまで落ち込み、これより前に漏れていた中国の経済データがアナリストの予測より多少上回っていたため1ユーロ=1.45米ドル近くにまで押し上げたと伝えている。

 陳博士は「重要な経済データは国家のマクロ経済指標を反映している。それは指導層が国家の将来のマクロ経済政策をどう把握し、制御するかに関係するだけでなく、中国経済の将来の動きを判断する風向計だ。経済データが漏れるたびに株式市場には波乱が起き、その波乱の背後で、一部の人間が不当に利益を得る。重大な経済データを漏らす行為は政府の信頼性に影響を与え、経済の秩序を破壊し、経済の正常な運営を妨げる。極論すれば国家経済の安全性を脅かし、その危害は極めて大きい」と考えている。

  

機密管理はますます厳格に

 情報漏えい事件が度々発生する状況に対して、中国の一部の部門は既に厳格な監督管理措置を行っている。国家保密局スポークスマンの杜永勝副局長は、「国家保密局は関係部門と共同で一連の機密管理措置を採る」と述べている。

 データ流出の可能性を減らすため、国家統計局では既に7月から統計データの公表方法を変更し、公表時間を早めるとともに、機密データに関わる人間の数と範囲をさらに限定している。

 中国におけるデータの機密性をどうやって高めるかについて、陳博士は「外的環境を整えることが重要だ。具体的には情報犯罪に対する罰則強化と関連する業界に対する監督強化の二つが急務だ。情報を扱う組織の内部環境については、様々な形で職員と情報関係者の機密意識の強化を図り、法律意識を強化すること。さらにセキュリティー対策の向上により内部管理を強化、専門的なチェック体制の構築などにより内部監督業務を強化することが課題となる」と提案している。

 

(関連リンク)

情報漏えいで統計局と人民銀行の元職員に懲役刑

◆鄭娜 石暢

 2010年5月以来、中国のマクロ経済データが何度も漏えいされている。最高人民検察院汚職・権利侵害検察庁の李忠誠副庁長は10月24日、国務院新聞弁公室の記者会見で、2件の経済データ漏えい事件の捜査状況を報告した。

 それによると国家統計局職員孫振、中国人民銀行職員伍超明は故意に国家機密を漏えいした罪で、それぞれ懲役5年と懲役6年に処せられた。