膨大な規模の外貨準備は6000億ドル強の対外債務に比べれば大きい
中国の対外債務に償還リスクなし

世界経済は日増しに国際化し、各国は対外債務による借り入れで経済発展をはかる政策を採っているが、中国の対外債務残高は既に6425.28億米ドルに達している(香港特別行政区、マカオ特別行政区、台湾の対外債務を除く) 。

中国の対外債務はどこから借りたもので償還能力はどうなのか。この問題について専門家に聞いた。

対外債務は生産の発展に利用

対外債務6425億米ドルの大口の借り手は国内の金融機関と外国投資企業だ。統計から債務者別で見ると、登録された対外債務残高中、国内金融機関の債務残高は45.39%、外国投資企業の債務残高は30.38%を占める。

また、外資の金融機関の債務残高は13.01%、国務院の省、委員会が借り入れたソブリン債(各国の中央政府や政府機関によって発行された債券)の残高が9.77%、国内企業の債務残高が1.41%となっている。

ではこれらの組織や企業はいったい誰から借りているのか。債務の類型で見ると、登録された対外債務残高の内、国際的な銀行ローンの残高が3346.41億米ドルと全体の83.07%を占め、その比重は2010年末より3.09%上昇している。また外国の政府ローンと国際金融機関からのローン残高が681.87億米ドルで16.93%を占めている。

改革開放以来、中国は一貫して「対外借入を恐れず主に生産の発展に投入する」という考え方を受け継ぎ、借入金を交通や製造業に重点的に投下してきた。最新の統計では、償還期限を定めた登録済みの中長期の対外債務残高の内、製造業向けが23.79%、交通運輸、倉庫向けが12.53%、電力、ガス、水の生産と供給向けが8.1%、情報技術サービス向けが3.85%、不動産向けが5.03%となっている。

対外債務額は世界的にも上位

中国は膨大な外貨準備を抱えているのに、なぜこれを投資に回さず逆に国外から借金をするのかと問う人がいる。

中国社会科学院の李茂生研究員は次のように述べている。

「対外債務と外貨準備は形成される仕組みが異なる。外貨準備は企業の為替決済によって形成されるもので、理論上は国家の富とも言え、投資に向けることも出来なくはない。

しかしながら、現時点では外貨準備を投資に向けるための枠組みが出来ておらず具体的なチャンネルがない。外貨準備はむやみに使うことは出来ず、そのリスクをどうするのかは、さらに研究する必要がある。

現在、専門家たちが外貨準備をどうやって活かし、その利益を最大化するかを研究している最中だ。我々の考えは民間の大企業に、彼らの資産を担保にして活用させる方法である」。

同研究員は「中国は対外債務の額でいえば世界でも上位にあるが、膨大な外貨準備と比べればその規模は大きいとは言えない」と指摘し、中国の対外債務の規模は安全圏内であるとの見解を示している。

国際的には、一国の外貨準備は対外債務償還のベースであり償還能力を保証するものだ。首都経済貿易大学金融学院の謝太峰院長は次のように計算して見せた。

「中国には3兆2千億ドルの外貨準備があり、6000億米ドル強の対外債務の比重は小さい。同時に、もうひとつの国際的な指標である負債率(対外債務残高がその国のその年の商品と労働力の輸出収入に占める比率)で見ると、負債率が100%を超えなければ安全圏内であり、越えれば債務過剰と言える。2011年1月から6月まで、中国は商品輸出だけで8742億米ドルに達しており、6000億米ドル強の対外債務は商品輸出収入の100%を超えていないばかりか、もし労務輸出の収入を加えれば比重はさらに低くなる。マクロ的に見れば、中国の対外債務の規模は小さいとはいえ、償還リスクは根本的に存在しないばかりか、債務危機に陥ることなどあり得ない」。

対外債務の安定性を高めるべき

今回の統計では、短期対外債務残高の比重が高いことが一部の人たちに懸念を引き起こしている。1980年代のラテンアメリカの債務危機、90年代のメキシコとアジアの金融危機の際には、いずれも短期対外債務の管理の制御不能が引き金になった。短期債務は、一般的には1年以内に元本に利子を加えて返済することが求められ、もし短期債務の比重が大きいと返済圧力が高まり、一国の対外債務の安全性に影響する。国際的な参考水準は25%だが、中国の2011年6月末時点の短期対外債務残高は残高全体の71.92%に達している。

このことについて国家外貨管理局は、中国の短期対外債務のうち、貿易関連の短期ローン残高が全体の75%を占めており、その内貿易ローンが52%、貿易融資が23%と実際の輸出入取引の裏付けがあり、中国の外債の安全性には影響を及ぼさないと考えている。

「短期対外債務の比重が大きいことは外貨準備が少ない国には圧力となるが、中国について言えば問題ではない」と謝太峰氏は指摘している。専門家たちは、中国は対外債務の安定性を高めるべきだと指摘している。

構造的には短期債務を極力減らし、中長期プロジェクトローンを増やすなり、国債を発行して企業の借金の安定性を高めるべきである。調達先で言えば、外国政府や国際金融機関からの低利のローンを増やし、高利の商業ローンを減らすべきだ。利率の仕組みで言えば、国際的な利率市場に対して十分な予測を行い、利率の上昇時には固定金利で、利率の下落時には変動金利でのローンを増やすべきである。

李茂生氏は「マクロ的には中国が対外債務を利用するのは特に問題ないが、ミクロ的には多少の問題がある。例えば、あるプロジェクトは借入金の使用効率が低く、効果も十分でないなどだ。償還リスクを減らすために、地方政府や国有企業は対外債務の利用効率を高めなければならない」と指摘している。