世界最大の宅配ネットワークの強みと課題
【インタビュー】 向愛兵（国家発展改革委員会主任研究員）

「十四五」で加速した

中国の宅配インフラ整備

――　第14次五カ年計画（「十四五」）期間中に、中国は世界最大の郵便・宅配ネットワークを構築しました。この成果の背景にある政策的な要因について教えてください。

向愛兵　郵便・宅配業は、都市と産業、オンラインとオフラインを結びつけ、生産工程や消費シーンにも深く関わる産業です。その着実な発展を支えてきたのは、多方面からの政策的な後押しでした。

たとえば、「第14次五カ年計画および2035年までの長期目標綱要」では、複数の章において、宅配業の成長を後押しする施策が盛り込まれています。第11章では、支線空港や貨物空港の整備、総合的な交通インフラの一体化推進などが掲げられ、宅配サービスを支える交通基盤の整備が着実に進められました。第15章では、サービス業のデジタル化、スマート物流の推進、新たな流通モデルの育成などが明示されており、宅配業のデジタル化とスマート化に明確な方向性を示しています。

現在では、中国全土を網羅し、農村部にも深く浸透する郵便・宅配ネットワークが構築され、世界200以上の国や地域とも接続されています。村レベルでの宅配サービスのカバー率は95％を超え、製造業の生産前・生産中・生産後の各段階を支える体制も整っています。こうした成果は、「十四五」期間中に各種政策が着実に実行されたことによるものです。

宅配が生む新ビジネスと

経済循環

――　宅配業の発展によって、新たなビジネスモデルが次々と生まれています。たとえば衣類の返品が簡単になったり、地方の特産品が遠方まで届けられるようになったりしています。こうした変化は、中国経済にどのような影響を与えているのでしょうか。

向愛兵　郵便・宅配業は、生産活動を支え、消費を活性化し、経済の循環をスムーズにする重要な先導的産業です。産業チェーンやサプライチェーンの安定を維持し、新たな経済モデルの構築や質の高い成長に貢献しています。

宅配網が発達することで、都市と農村、地域と地域のあいだで資源や人材が効率的に移動できるようになり、国民経済の大きな流れと生活に根ざした小さな流れの両方がスムーズになります。これにより、国内外の経済循環が互いに刺激し合い、生産から流通、消費にいたるまで、あらゆる要素が効率的に連動するようになりました。

また、宅配業そのものの急成長が実体経済に新たな原動力を与えています。供給面では、迅速で効率的な配送がサプライチェーンの中核を担っており、需要面では、宅配の利便性が消費者の選択肢を広げ、新たなニーズやビジネスモデル、商品流通の形が生まれています。たとえば、ネットで衣類を購入したり、農業資材を遠方から取り寄せたり、地方の名物を自宅で楽しんだりと、私たちの日常の中にも宅配がもたらす変化が溶け込んでいます。

宅配高度化で

競争力と成長を後押し

――　宅配業の発展は、今後の物流コスト削減や企業の競争力強化にどうつながると考えますか。また、今後も持続的で質の高い成長を維持するために必要な取り組みは何でしょうか。

向愛兵　「十四五」期間中、中国の宅配・物流分野では、コスト削減と業務効率の向上において目に見える成果があらわれました。超大規模かつ多層的な配送ネットワークが本格的に稼働し、輸送ルート、中継拠点、配達網が一体となって機能する体制が整いつつあります。無人車両やドローン、無人倉庫、スマート仕分けや自動検査、クラウド型の倉庫管理など、最新のテクノロジーも現場で広く導入されるようになっています。

また、「ドア・ツー・ドア」の配送サービスや、全国をひとつのネットワークで管理するシステム、共通の送り状で完結する配送方式など、新たなサービスの形も確立され、民間の活力ある事業者も続々と台頭しています。こうした基盤の整備は、物流全体の効率向上やコスト削減を促すだけでなく、企業の競争力や国際的なプレゼンスの強化にもつながっています。

とはいえ、依然として課題は残っています。たとえば、農村部や海外向け配送におけるインフラ整備、物流ハブでの集荷・仕分け体制などには、改善の余地があります。小さな宅配便一つをとっても、実際にはモノや経済的資源の流れを支える重要な要素であり、物流全体の効率をさらに高めていく必要があります。

今後は、インフラの整備と接続の強化を進めるとともに、AIなど先端技術の活用を一層促進し、新たなサービスやビジネスモデル、消費スタイルの創出にも取り組むことが求められます。あわせて、物流サービスの裾野を広げ、「宅配経済」や「ハブ経済」といった新たな経済圏を育てることも重要です。企業による技術革新を後押しし、世界に通用する総合物流企業を育成することが、これからの大きな課題となります。