「ダブル11」決算書からみる中国消費の注目点


「ダブル11」後、宅配便が急増した

中国最大のネット通販イベント「ダブル11」(11月11日)は、2019年も相当な成果を上げた。中国商務部が2019年11月14日に発表した最新データによれば、11月1日から11日までの全国オンライン小売額は8700億元(約13兆4267億円)に上り、前年同期比26.7%増加して、過去最高を更新した。この「決算書」から、目下の中国における消費の4大注目点がはっきりと見えてくる。

注目点1
消費エネルギーが巨大

このほど終了した第2回中国国際輸入博覧会では、711億3000万ドル(約7兆7430億円)に達した意向成約額が全世界に中国の強大な購買力をまざまざと見せつけた。輸入博でより明らかになったことは中国企業の「調達力」だというなら、ダブル11が証明したのは中国の人々の「爆買い」への情熱だ。

ダブル11当日、中国の大手ECプラットフォームでは次々に朗報が伝わった。天猫(Tmall)はイベント開始から1分36秒で取引額が100億元(約1542億4360万円)に達し、過去最高を更新した。京東では65インチテレビが8秒で1万台売れ、掃除ロボットが1分で1万台売れた。この2社の取引額は5000億元(約7兆7120億円)に迫り、取引額はルクセンブルクの2018年の国内総生産(GDP)にほぼ相当した。強大で安定した国内需要は、中国経済が下ぶれ圧力に対処し、安定成長を維持するために有利な条件を提供した。

注目点2
消費高度化の流れは変わらず

消費の高度化も引き続き進んでいる。2019年のダブル11期間には、多くの消費財ブランドと海外の新ブランドがECプラットフォームを商品発表の場に選び、携帯電話の新機種やスポーツウォッチなどが人気商品になり、新消費の発表が質の高い消費を牽引した。

新商品やブランド商品を買うだけでなく、「個人のオーダーメイド」が市場で人気を集めたことも消費高度化のもう1つの現れだ。所得が増加するにつれ、中国の人々は自分らしさを表現することができ、個人的なニーズを満たしてくれる商品をますます好むようになり、どれも似たり寄ったりの「人気商品」には目もくれなくなった。フレキシブル生産システム、逆方向のオーダーメイド(C2Mモデル)も新たなトレンドになりつつある。

商務部の高峰報道官は、「ECプラットフォームはビッグデータを通じて、ブランド企業がニーズを踏まえてオーダーメイド商品を生産し、供給チェーンのモデル転換・バージョンアップを駆動するよう後押ししている。ダブル11期間には、マザー・ベビー専用洗濯機、加湿器などの新商品の売り上げが10月の2倍に達した」と述べた。

これまでの「企業が何かを売り、消費者が何かを買う」から、今や、「消費者が何を求めるかで企業が何かを作る」へ。消費高度化は人々によりよいショッピング体験をもたらすと同時に、「中国製造」(メイド・イン・チャイナ)のモデル転換・バージョンアップにも新たなチャンスをもたらした。

注目点3
サービス消費が急成長

商品消費のほか、ダブル11期間にはサービス消費も猛烈な勢いで伸びた。同部のデータをみると、美容医療、オーラルケア、健康体験などの健康消費が新たな注目点になりつつあり、関連サービスの予約件数も5倍以上増加した。オンラインの旅行売上高が100%以上増加し、家事サービスや自動車サービスなども増加傾向を維持した。

アナリストは、「世界の経験から考えると、一人あたり平均GDPが8500ドル(約92万円)に達すると、サービス消費が加速的に発展・拡大する。現在、中国の平均GDPは1万ドル(約108万円)に迫り、市場の消費環境もさらに改善され、サービス消費の持続的な伸びには力強い支えがある。またサービス消費の加速的拡大は消費構造の高度化を促進するだけでなく、新興産業の成長を促進する上でもプラスになり、経済の安定成長により多くのプラスの条件を提供する」との見方を示した。


実店舗ウィンドウにある「ダブル11」の広告

注目点4
「小都市の青年」の購買力

都市化レベルが向上を続け、都市部と農村部の所得格差が縮小するのにともない、「小都市の青年」が強大な購買力をみせるようになってきた。

同部のデータによれば、ダブル11期間に新たに増えたネット通販利用者の約70%が三線都市、四線都市、県の中心地、郷鎮を代表とする新興市場に住んでいる。二線・三線・四線都市や小都市に暮らす青年の旅行商品に対するニーズの伸びは一線都市の住民を明らかに上回った。家電、化粧品、家具などのベストセラー商品をみると、注文の60%が新興市場からきている。

ECサイト・拼多多のバックグラウンドデータによると、11月11日午前に長安汽車をはじめとする自動車メーカー5社がダブル11で販売した「国民車種」がすべて売り切れた。その大半は三線・四線都市の消費者が購入したという。

中国社会科学院財経戦略研究院流通産業室の依紹華室長は、「現在、三線以下の都市が中国消費市場の『新たなブルーオーシャン』になりつつあり、コア消費層が年々若年化し、品質、ブランド商品へのニーズもより強まっている。これは消費の原動力育成に新たな方向性を提供するだけでなく、中国市場の容量をさらに拡大することにもなる」との見方を示した。