モノから楽しさへ
中国消費者のショッピング観に変化

中国国家統計局が11月14日に発表したデータによると、2018年10月には社会消費財小売総額が3兆5534億元(約58兆2758億円)に達して、前年同期比8.6%増加し、増加率は前月を0.6ポイント下回った。これは主に中秋節(旧暦8月15日、2018年は9月24日)が例年より遅かったことと「ダブル11」(11月11日のネット通販イベント)に先立つ一部商品の消費が遅れ気味だったことなどの影響によるものだ。


第1回中国国際輸入博覧会で展示されたソニーの製品

一方で、統計データによると、110月の社会消費財小売総額は同9.2%増加した。グレードアップのための商品売上が速い増加を示した。110月の一定規模以上の企業の商品小売販売額のうち、化粧品類は同11.4%増加して増加率は社会消費財小売総額の増加率を2.2ポイント上回り、通信機器類は同10.4%増加して社会消費財小売総額を1.2ポイント上回った。

業界では、「このほど閉幕した第1回中国国際輸入博覧会も、10年目を迎えた『ダブル11』も、商品やサービスの品質、個性、体験の高度化を求める消費者のニーズを映し出した」との見方が広がる。

博覧会の会場では、肌診断マシンを設置したインタラクティブブロックの化粧品企業のブースに大勢の来場者が長い列を作った。上海市で対外貿易の仕事をする王暁琪さんは、「これまでは(化粧品を)周りの雰囲気に流されて買ったり、高ければよいものだと思って買ったりして、本当に自分の肌に合うかどうか考えることもなく、かなりの浪費だった。プロのアドバイスを受ければ、これからは適切な買い物ができる」と話した。

博覧会のすぐあとの「ダブル11」にもこうした流れがみられた。開始から20分間で、スマート医療機器分野のアボット社製血糖測定器は取引額が同200%増加した。可復美社の医療用フェイスマスクの取引額は同1000%も増加した。阿里健康のデータでは、開始1時間4分で、人間ドック、美容医療、オーラルケアを含む医療関連サービスの取引額が、2017年の「ダブル11」当日全体の取引額を上回ったという。

商品からサービスへ、「安さ重視」から品質重視へ、「高いもの」から「ふさわしいもの」へ、消費者のショッピング観はこの10年間に大きく変化し、「必要だから」、「買い物を楽しみたいから」、「買い物が喜びだから」が消費を駆動するより重要な要因になった。


第1回中国国際輸入博覧会で展示された高級靴

上海ショッピングの「超定番」とされる南京東路にあるデパート第一百貨商業中心は、497日間に及ぶリニューアルを経て、11月13日にオープンした。吹き抜けのフロア、空中連絡通路、超大型のガラス屋根を擁する建物の中に、ここにしかないアディダスアジア太平洋ブランドセンター、楽刻Plusのネットで予約できるフィットネスクラブ、上海の老舗石けんメーカーDIYの「石けん作り工房」があり、「愛しの上海暮らしの記憶」をテーマにした文化展示イベントも開催された。

同中心党委員会の范立群書記兼総経理は、「これまでは業務の約80%が商品を売ることだったが、今は飲食娯楽が50%を占め、テスト営業期間には、家族3人で、3世代一緒に、カップルで、女性同士でいらっしゃるお客様が目立って増加した。消費高度化の流れをつかまえ、今後も引き続きより多くの興味を引く体験を打ち出せるよう努力し、温かみのある、上海らしい融合型商業空間を作り出していきたい」と話した。

実際、2018年の「ダブル11」期間には、オンラインとオフラインの融合が大きな注目点になった。統計によれば、蘇寧易購はのべ5000万人が実店舗で買い物し、蘇寧小店がご近所サービスを提供した人はのべ500万人に上った。

米コンサルティング会社オリバーワイマンの葉俊楠中華圏取締役パートナーは、「オンラインからオフラインに至る新小売モデルには大きな潜在力があり、これは阿里巴巴(アリババ)、騰訊(テンセント)、京東などが次々投資を拡大して、一斉に、先を争ってオフライン小売ネットワークの構築に努めているのはなぜかという問いへの答えだ。今後、これらのネットワークをいかに融合利用するかが成長を維持するカギとなる」との見方を示した。