中産階級が世界最多
高品質輸入品のニーズが高まる中国

2018年3月に行われた中国第13期全人代第1回会議で、国務院の李克強総理は政府の業務報告の際、「ここ5年、中国の国民の生活は継続的に改善した。住民の所得は年間平均7.4%のペースで増加し、経済の成長ペースを上回った。そして、世界で最も多い中産階級を抱えるようになっている」と説明した。

中国はその中産階級の総数が世界最多になったのと同時に、人々の生活に対するニーズもまた基本的な衣食住を満たすものから、品質の高い商品やサービスへと転換しつつある。

国務院関税税則委員会は先週に公告を発表し、7月1日より、一部の輸入日用品の最恵国税率を引き下げることを決定した。引き下げの対象には、食品、衣類靴類帽子類、家具、日用雑貨、文化スポーツ娯楽用品、家電製品、日用化学製品、医薬品健康用品など8項目の日用品1449品目が含まれ、「輸出入税則」の課税対象となる日用品品目の70%を占める。

 
輸入商品を紹介する北京ウォルマートのスタッフ

高品質の輸入商品が人気

北京、上海、天津、広州など多くの都市のビジネス街やショッピングセンターを見てみると、輸入商品の専門店がますます増えているだけでなく、一般的な総合スーパー、コンビニエンスストアチェーンでも、タバコ、生産食品、飲料、菓子類、日用品などの輸入商品のコーナーが設置されているところがどんどん増えていることがわかる。商品の選択肢が広がり、消費者のショッピング体験が向上しているといえる。

一部の地域では、春節(旧正月)の正月用品の買い物や社会的なつきあいの中にも輸入商品が入り込んでいる。これと同時に、「オンライン+オフライン」モデルにより、輸入商品はこれまでよりさらにスムースに一般庶民の暮らしに入り込むようになった。北京市中関村のインターネット企業で働く李莉さんは子どものためによく菓子類、おもちゃ、日用品の輸入商品を購入する。「数年前までは、海外旅行に出かけた時に大量買いをしたり、海外に行く友達に頼んだりしていた。今は越境ECがあるので、人気の輸入商品のほとんどが手軽に買えるようになった」という。

商務部は輸入日用品の供給と需要を正確に把握するため、さきに主要日用品の需給状況統計調査を実施した。

それによると、所得水準が上がると消費者の質の高い輸入商品に対する消費意欲が持続的に上昇することがわかった。世帯月収が2万元(約34万円)を超える消費者は全員が輸入商品を購入したことがあり、過去1年以内に購入したか、購入の意欲があると答えた人が86.6%に上った。消費者の食品、衣類靴類帽子類、化粧品への注目度が高い。化粧品、ベビーマタニティ用品、時計眼鏡類に分類される輸入商品の割合が高く、今後半年以内に購入を増やすことへの意欲も高かった。

 
輸入商品を確認している青島市民

消費者は供給の多様化に期待

消費者の輸入商品などに対する需要には、国内の商品供給の不十分さが反映されてもいる。たとえば化粧品について、同調査報告によれば、消費者で購入する化粧品に占める輸入化粧品の割合が10%を超えるという人が61.4%に上り、30%を超える人も36.1%に達した。消費者の今後半年間の輸入化粧品の購入意欲は強く、これまでと同じくらい買うとした人は49.3%。もっと買うとした人は38%に上り、買う量を減らすとした人は12.7%にとどまった。

同調査では、今後1年間は化粧品類製品の輸入について現状を維持する計画と答えた企業が83.6%に上り、増やすとした企業は9.2%だった。このうちフレグランス、スキンケア製品、ケークアップ製品はどれも輸入の割合の増加幅が10%を超えた。

輸入化粧品を取り巻く状況は典型的だ。同調査によれば、消費者が輸入商品を購入するとき、主に重視するのは安全性、価格、品質などだという。

実際の場面では、輸入商品が中国市場に流入して市場競争に参加するようになって、国内メーカーにとっては「ナマズ効果」が生じている。環境整備サービスを提供する深圳保時捷のバストイレ部門の葉長青営業販売総監は、「一部の輸入商品はこれまで中国にはなかったもので、中国の消費に対する認識を刷新し、中国関連産業に無から有への進歩を促す可能性がある。数年前、中国の消費者の多くはスマート便座というものを知らず、中国メーカーの多くは海外ブランドの受託製造を行っていた。その後、輸入が増加して、中国の消費者の間での認知度が高まり、需要もどんどん高まって、多くの国際メーカーが勢いに乗じて登場し、中国は独自ブランドをもつようになっただけでなく、日本などに研究開発センターを設立するようにもなった」と話す。

中国国際貿易促進委員会研究院(中国貿促会研究院、CCPITA)国際貿易研究部の趙萍部長は取材に答える中で、「輸入の拡大は人々のますます増大する素晴らしい生活へのニーズをよりよく満足させるための重要な措置であり、必然的な要求だ」との見方を示す。

また趙部長は、「短期的にみれば、各国の高品質の商品の輸入を拡大すれば、消費バージョンアップがもたらすさまざまな需要に素早く対応できる。長期的にみれば、輸入商品の増加が模範的な役割を果たし、『供給が需要を促進する』効果を発揮し、消費の基盤を拡大し、ひいては経済成長全体における内需の基本的役割を強固なものにする」と指摘する。