中国で「 顔面偏差値エコノミー」が急成長

「ずっと恋人ができないのは、君の見た目が悪いからだよ」、「なぜちゃんと自覚していないのか。全ては君の見た目が悪いからだよ」……。最近、「君の見た目が悪いからだよ」と題するラップの歌曲が、中国のネット上で大人気となっている。そのストレートな歌詞に、多くのネットユーザーは、「耳が痛い」と肩を落としている。

河北省石家庄市のある美容整形クリニックの待合室で、中国大学統一入学試験(通称「高考」)を受け終わったばかりの女性・陳さんが、「客室乗務員(キャビンアテンダント)になるための専門学科がある大学に行くために、入学前に目のプチ整形をしたい」とし、その理由について、「将来のため」と説明した。

統計によると、中国美容整形業は現在、毎年20%増のペースで成長しており、美容整形手術も毎年、20%以上のペースで増加している。中国の美容整形は、不動産、自動車販売、旅行に継ぐ、4番目に大きなサービス業界へと成長している。

「画像修正アプリ」や「自撮り神器」、「美顔カメラ」などのアプリが、「顔面偏差値エコノミー」市場で躍進している。「美」にフォーカスしたアプリを開発する「美図(Meitu)」は、2008年に画像加工アプリ「美図秀秀」を打ち出して以降、SNS動画アプリ「美拍」、自撮りカメラ「美図手機」、自撮りカメラ「潮自拍」などを次々にリリースした。サムスンや華為、小米などのスマホメーカーも近年、画像修正機能やフィルター機能などを搭載したスマホを続々とリリースしている。その他、カシオは自撮り用デジタルカメラを発売し、アップル社は自撮り画像の画質を高めるために、フロントカメラの性能を向上させている。

「顔面偏差値エコノミー」の成長により、中国では「顔面偏差値を飯の種」にする人も増加している。近年、微博(ウェイボー)や、動画にユーザーのコメントが流れる機能のあるプラットフォームなどでは、美しくメイクして登場する動画配信者が急増し、関連の化粧品などの販売量が伸びている。また、ライブストリーミングの流行により、「顔面偏差値の高い」配信者が大人気になり、一稼ぎしている。動画配信サイトでは、日本ドラマ「人は見た目が100パーセント」が話題になり、議論を巻き起こしている。

顔面偏差値の高い「人」だけでなく、顔面偏差値の高い「物」や「動物」も大人気だ。英国のスマホゲーム「Monument Valley」はグラフィックが非常に美しく、芸術性が高く、中国のゲーマーの間でも人気を博している。微博で料理の作り方を短い動画で説明するシリーズ「日食記」を配信している配信者は、「顔面偏差値の高さ」から大人気になり、今では920万人以上のフォロワーを抱えている。さらに、ネット上では、ネコなどの小動物の「萌え画像」を投稿するのが大人気となっている。

実際には、「見た目重視」という傾向は中国だけでなく、西洋でも見られる。例えば、ギリシア神話には「最も美しい女神」をめぐる「トロイア戦争」があり、英週間新聞「エコノミスト」は「権利は顔面偏差値の高いリーダーのもの」と主張する記事を掲載し、2016年ブラジルリオ・オリンピックの開幕式には、ブラジルを代表するトップモデルのジゼル・ブンチェンが登場し、「最もセクシーなオリンピック」と呼ばれるようになった。

今の社会では「見た目重視」という風潮がますます高まっていることに関しては、賛否両論が絶えず巻き起こっている。反対派は、「『顔面偏差値』重視というのは、社会が表面的なものを重視する傾向にあることを反映しており、外見重視では、人や物の深い部分を追求することが難しくなる」という見方を示すのに対して、賛成派は、「人というのは直観的な動物で、美しいものを好むというのは人の本性。『顔面偏差値エコノミー』は社会に大きな利益をもたらしており、時代の発展において欠かせないものとなっている」との見方を示す。

ある学者は、「人が顔面偏差値の高い人に対して自然と好感を抱くにしても、時代の影響を受けて考え方の変化が起きているにしても、今の社会は『美』に対する意識が非常に強い。自分の『美』やそれに関係する要素に対する認識を時代と結び合わせ、『顔面偏差値を重視するのは正しいこと』と主張する前に、『顔面偏差値』の重要な意義をよく理解し、オシャレを追求しながらも、『美』とは何かが全く分かっていないという、恥ずかしい状況を避けなければならない」との見方を示している。