2016年中国の不動産市場のキーワード

中国の不動産市場では2016年、「過熱」、「不動産価格のコントロール政策」、「冷え込み」などがキーワードとなった。では、2017年の不動産市場はどのような道を歩むのだろうか。

2016年の国慶節(建国記念日、10月1日)前後から11月末の約2カ月の間に、中国の24都市が、50以上の不動産価格のコントロール政策を実施した。現在、その政策実施は終わっておらず、12月21日、鄭州や武漢などの都市が再び、不動産購入抑制を強化する政策を打ち出した。

易居研究院のシンクタンクセンターの厳躍進研究総監は、「鄭州や武漢が今回打ち出した政策は、いずれも元々あった不動産価格のコントロール政策のグレードアップ版。注目が集まる二線都市の不動産価格抑制に対する決意が現れている。今後も、購入規制やローン規制を打ち出す都市が登場し、もしかするとかなり増加するかもしれない。現在、石家庄や青島、長沙、重慶などの都市において、不動産投機の需要が高く、これらの都市の不動産価格が急速に高騰すれば、規制政策が相次いで打ち出される可能性もある」と分析している。

 
2016年12月、福州市に建築中のマンション

キーワード1 過熱

2016年9月30日に不動産価格のコントロール政策打ち出しが始まる以前、中国の複数の二線都市で、不動産価格が数カ月連続で上昇する局面を迎えていた。9月、中国国家統計局が発表した70の大・中都市の不動産価格統計では、63都市が上昇していた。不動産市場の「過熱」の背後で、2016年の夏は土地を超高値で買い取る「地王」の出現が話題になり、中原不動産研究センターの統計によると、16年1~9月期、100億元(約1700億円)以上で買い取られた土地は6件、50億元(約850億円)以上は28件に達した。

2016年、各地が相次いで打ち出した購入・ローン規制などの不動産価格のコントロール政策の目的は、過熱気味の都市の不動産市場を落ち着かせるためだ。一線都市の不動産価格が高騰しているのを背景に、2016年1~9月期、一部の投資、投機資金が一線都市を撤退して、二線都市に流入した。そして、武漢や南京、杭州、厦門(アモイ)、鄭州、合肥などの二線都市で、一線都市のバトンを受けるかのように、不動産価格が高騰した。

しかし、10月に各地で不動産価格のコントロール政策が実施され、不動産市場は急速に冷え込み、「地王」も姿を消すようになった。無錫、蘇州、南京などでは、土地の価格規制まで敷かれた。12月14日の時点で、12月上旬の中国全土で、売却価格が10億元(約170億円)だった土地は26件、5億元(約85億円)以上は56件で、割増率が100%を超えたのはわずか4件、50%を超えたのは13件だった。

 

キーワード2 冷え込み

2016年11月、70都市のうち、新築の商品住宅と中古の住宅の価格が前月より上昇した都市は、それぞれ、前月より7都市と8都市減少した。11月の前半と比べると、11月の後半は15の一線都市と二線都市のうち、北京、天津、上海、杭州など9都市の新築商品住宅の価格が前月比で下落した。

広範囲で不動産価格のコントロール政策が打ち出され、不動産価格の高騰が効果的に抑制されている。中国国家統計局都市司の劉建偉シ二ア統計師は、「統計から見て、一線都市と二線都市の不動産市場は急速に冷え込んでおり、不動産価格の高騰は明らかに抑制されている」と分析している。

張大偉氏は、「不動産価格のコントロール政策が実施され、高騰していた不動産価格は既にターニングポイントを迎えている。中原不動産研究センターが19日に発表した分析によると、今回の政策は6~9カ月実施されると予測され、20都市の不動産価格が10%以上下落する」と分析している。

厳氏は、「11月の不動産価格が前月に比べて比較的大幅に上昇したのは全て三線都市で、主に北京・天津・河北省、長江デルタ、珠江デルタ付近の三線都市。これらの都市は、故郷に戻って就職する人の需要が高まった時に不動産価格が急速に高騰するリスクに備えなければならない」と指摘している。

 
2016年12月、不動産を購入しようとしている福州市民

キーワード3 改革

2016年12月16日に閉幕した「中央経済政策会議」では、「家は住むためのもので、投機のためのものではない」と確認され、金融や土地、財税、投資、立法などの手段を総合的に活用し、国情や市場の規律にマッチした、制度のベース、長期にわたって効果を発揮するメカニズムの構築を急ぎ、不動産バブルを抑制するほか、価格の急速な高騰や下落を防止しなければならないと明言された。

中国都市経済学会の牛鳳瑞副会長は、「不動産投機の問題を解決するためには、まず、不動産価格を安定させなければならない。安定させるためには供給を増やさなければならない」と指摘している。

同会議では、賃貸住宅市場の立法を加速させるほか、賃貸企業の発展を制度化、拡大させなければならないと指摘された。厳氏は、「賃貸住宅市場が発展すれば、都市の各層の賃貸の需要を満たすことができるほか、都市の住宅構造改善にもつながる」との見方を示す。

中国社会科学院都市・競争力研究センターの倪鵬飛センター長は、「一、二線土地の市場で供給不足が原因で地価や不動産価格が上昇している問題は、2つの側面から解決できる。まず、土地供給の指標を拡大し、人口の流動状況に基づいて建設用地指標を分配するスタイルを採用すること。次に、一、二線都市でストックされている土地はまだ多く、活用できる余地がある」と指摘している。

その他、同会議では、在庫処理の面で不動産価格のコントロール政策を分類し、地域の必要に応じた政策を実施し、三・四線都市で不動産在庫が過多になっている問題を解決しなければならないと明言された。そして、在庫処理と人口の都市化促進を結び合わせ、三・四線都市と特大都市のインフラによるつながりを強化するほか、三・四線都市の教育、医療などの公共サービスの水準を向上させ、農業を辞めて都市に出てくる人を引きつけるための魅力を向上させるべきであると指摘された。