深刻な購買力の海外流出を解決するには

供給と需要、これが市場経済に内在する関係の2つの基本的側面だ。両者の関係は、本質的には生産と消費の関係だといえる。マルクスは社会の再生産の過程を研究する際に、生産、流通、分配、消費の各段階の関係を分析した。核心的な観点は、生産が消費を決定し、何を生産するかで何を消費するかが決まるということ、消費がさかのぼって生産に対し極めて大きな影響を与え、生産の発展を牽引したり抑制したりするということだ。


9月1日、海南島三亜市にオープンした世界最大規模の免税店の様子

改革開放がスタートしてから、中国経済は高度成長を続け、これは消費の牽引による部分が大きい。中国は長期にわたり「不足の経済」の状態に置かれ、人々の生活改善の需要、すなわち消費需要は、長らく満たされることがなかった。改革開放が始まったのはこうした状態を改善し変えるためだった。改革スタート当初、消費需要が爆発的に吹き出し、ラジオ、自転車、ミシン、腕時計から、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、ビデオデッキへ、さらには携帯電話、コンピューター、自動車、住宅へと需要は移り変わり、こうした「4大神器」の模倣型で波が押し寄せるような波濤式の消費は30年間続き、経済の力強い伸びを牽引した。企業は長らく、作れば売れる、売れればもうかるという時代を過ごし、ニセ物や粗悪品も横行した。

今は「不足の経済」がもはや存在せず、構造的な生産能力の過剰が出現する時代だ。これは経済が30数年にわたって高度成長を続け、個人所得が持続的に増加し、中間所得層が持続的に拡大し、国民の生活レベルが目立って上昇した結果であり、経済発展が新常態(ニューノーマル)に突入した根本的原因でもある。

新常態の下、消費需要には大きな変化が生じ、模倣型で波濤式の消費は基本的に終わりを告げた。消費のレベルが上がり、個性的で多様な消費が徐々に主流になっている。相当な数の消費者において、製品の品質の追求が価格に対する考慮を圧倒的に上回るようになった。国産品は需要を満たすことができず、人々は海外に行って海外製品を買うようになり、ここ2年間は海外での「爆買い」の総額が年間1兆元(約15兆3365億円)を超えている。これにはインターネットの海外通販は含まれていない。

経済が目下直面する困難は、需要の不振ではなく、需要が変化したのに、供給される製品が変わらないこと、または需要の変化に供給が追いつかないことだ。一部の製品は売れず、無効な供給となっている。欲しい製品は買えず、需要の外部流出が起こり、購買力の流出は深刻だ。

問題の複雑さは、こうした変化が構造的なものだという点にある。消費のバージョンアップは構造的なもの、生産能力の過剰も構造的なもので、中級高級志向の消費需要が増加し、トレンドになる一方、低級志向の消費需要にも引き続き市場があり、低級製品を製造するメーカーはまだ完全に立ちゆかないという状態には至っていない。変化のこうした「構造性」が、企業の情勢に対する研究や判断に影響を与えている。だが確実なことは、作れば売れる、売れればもうかるという時代は、もはや過ぎ去ったということだ。


ウルムチ市内にあるショッピングモールの様子

供給と需要という対立物は統一され、相互に依存しあい、お互いがお互いにとって条件となる。需要がなければ、生産された製品は売れず、供給は実現しない。新たな需要は新たな供給を促す。供給が無ければ、買いたいものも買えず、需要は満たされない。新たな供給は新たな需要を生み出す。つまり、生産力の水準が消費の水準を決定するということだ。国の経済の発展は、根本的には供給側の牽引作用に依拠する。科学技術革命や産業革命が起こるたび、生産力の飛躍がもたらされ、新しい製品や消費体験が生み出され、かつてない供給能力が形成され、市場は活発な取引という形でこれに答え、経済の発展が推進されてきた。

国務院弁公庁はこのほど「消費財工業『3品』特定行動を展開し良好な市場環境を創出することに関する若干の意見」を下達し、製品の種類を増やし、品質を高め、ブランドを樹立する戦略を実施し、消費財の有効な供給の能力水準を着実に引き上げることをうち出した。人々の消費のバージョンアップへの需要をよりよく満たすことが狙いだ。