中長期鉄道網計画を発表
中国、鉄道経済時代が全面スタート

国務院の李克強総理は6月29日、国務院常務会議を開催し、「中長期鉄道網計画」を可決した。計画では鉄道発展の規律に基づき、経済的効果と社会的効果の両面に配慮し、鉄道インフラネットワークを拡大し、道路、水路、航空路などと有機的に連携した総合的交通輸送システムを構築することが求められている。また隣接する大中都市の間を1~4時間で結ぶ交通圏と、1つの都市内を30分から2時間で結ぶ交通圏の実現が目指されている。

業界関係者によると、こうした目標を実現するために行われる鉄道交通建設投資の金額は驚くべきものだ。2016年に鉄道網に8000億元(約12兆2983億円)の固定資産投資が投入されるだけでなく、今後5年間で都市軌道交通に1兆8400億元(約28兆2900億円)前後の追加投資が行われる見込みという。


7月5日、試験運行中の滬昆旅客専用線

 5大措置で鉄道建設を促進

15年末現在、中国の鉄道営業距離数は12万1000キロメートルで、うち高速鉄道は1万9000キロメートルに達し、世界の高速鉄道営業距離数の60%を占める。中国は世界で高速鉄道の発展が最も早く、規模が最も大きな国だ。だが中国の鉄道交通の建設には一層の「バージョンアップ」が求められている。

常務会議では、中国の鉄道の密度は先進国より低く、鉄道網の配置が整っておらず、特に中西部で発展が遅れていることが指摘された。鉄道網という国民経済の大動脈を建設することは、成長を安定させ、構造の調整を進めることになり、また有効な投資を増やし、消費を拡大することにもなり、現在に利益をもたらし、未来にも長く恩恵をもたらす「一挙多得」の重要措置だという。

そこで常務会議では鉄道交通建設を促進するために次の5つの措置が提起された。

第一に、沿海地域や北京-上海路線などの「8縦路線」と、陸橋や川沿いなどの「8横路線」を幹線とし、都市間鉄道がこれを補う高速鉄道網を構築し、隣り合った大中都市間を1~4時間で結ぶ交通圏と1つの都市内を30分~2時間で結ぶ交通圏を実現する。

第二に、一般の鉄道網を充実させ、中西部の路線網のカバー範囲を拡大し、東部の鉄道ネットワークの配置を最適化し、地域を結ぶ迅速かつ大容量のルートを構築し、貧困扶助と国土開発につながる鉄道の建設を加速させる。一般の鉄道の幹線ルートのボトルネックや死活問題をうち破り、鉄道交通が県レベル以上の行政エリアを基本的にカバーするようにする。周辺との相互接続を推進する。

第三に、乗り換えが「距離ゼロ」でスムースに行われることを求める声を踏まえ、1つの駅に鉄道旅客駅を中心とし、鉄道以外の交通ツールと連携した総合的交通体系を建設し、コンテナの中心駅や末端の配送業務などからなる貨物集散サービスネットワークを拡大し、各施設・業務が迅速に機能し、駅と都市とが融合した現代型交通ターミナルを建設する。

第四に、高速鉄道経済の新たな業態を育成し成長させ、沿線地域の交流協力と資源の最適な配置を促進し、産業の段階的移転を加速させ、製造業と経済全体のモデル転換・グレードアップを牽引する。

第五に、投融資、価格などの改革を深化させ、中央政府の資金が中西部鉄道建設に投入される割合を増やし、多様な投資主体を育成し、市場参入基準を緩和し、地方政府が民間投資や海外資本を含む社会資本を幅広く吸収して鉄道投資や鉄道建設に参加することを奨励し支援する。鉄道総合企業は自ら改革を推進し、現代型企業制度の構築を加速し、すでにある資産を活用し、市場化された多様なルートで資金を調達し、鉄道建設の発展で重要な役割を発揮する必要がある。

 鉄道建設の投資は巨額

計画によると、2016年の鉄道への固定資産投資は8000億元(約12兆2983億円)に上る見込みだ。専門家は、「今後も中国の鉄道投資はこのレベルを保つ」と分析する。

都市軌道交通の建設の可能性も非常に大きい。都市軌道交通の専門家は、「初期の計画では、20年までに中国の都市軌道交通の営業距離数は7400キロメートルに達し、1兆8400億元(約28兆2900億円)の追加投資が行われる予定だ。二線都市や三線都市の一部が都市軌道交通の建設の仲間に加わるなら、第13次五カ年計画期間の実際の投資額は予想以上になる」との見方を示す。

資料によると、現在、40都市の軌道交通建設計画が認可され、計画総距離数は約8500キロメートルだ。20年までに実際に新規建設される都市軌道交通は5000キロメートルに達し、複合年間成長率は20%を超える見込みだ。

瑞銀証券の徐賓アナリスト(専門は交通輸送・インフラ建設産業)は、「16年から20年までの鉄道の年平均固定資産投資は8100億元(約12兆4520億円)に達し、11~15年に比べ15%増加する見込みだ。今後5年間の都市軌道交通の年平均固定資産投資は、15年に比べて76%増加するとみられる。都市軌道交通への投資は第13次五カ年計画期間に鉄道投資に追いつくことが予想される」と述べる。