ネット有名人による新たな経済モデル

ネット有名人を指す「網紅」という言葉は、目下の流行り言葉であり、また1つの時代を表す言葉だ。今という時代の中で、ネット有名人のモデルは風雨にさらされてさまざまな変遷を遂げ、ネット有名人の経済や生態圏が生まれており、今後はネット有名人が現金を稼ぎ出す経済モデルが出てくるとみられる。


2016年4月、ネット有名人らが参加した「網紅経済」に関する交流会の様子

ネット有名人の実態

モバイルインターネットの時代には、中継アプリケーションを利用して、誰もがネット中継できるようになり、ネット有名人になることがますます容易になった。遠くない将来には、ネット有名人が現金を稼ぐ経済モデルがますます明確になるとみられ、これは一つの流れであるだけでなく、こうした職業がごく当たり前に存在するようになることが予想される。

ネット通販の専門家・丁辰霊さんは、「今日のユーザーは雑誌を読まなくなった。トレンドは今やネット有名人から生まれる。ユーザーはネット有名人から情報を得るし、ネット有名人のライフスタイルに強い関心を抱いている」と話す。

たくさんのきれいな女性が芸能人にならず、ネット有名人になるのはなぜか。それは売上高の10~20%を受け取れるから、利益の30~40%が手に入るからだ。ネット通販企業(主にアパレルのネット通販企業)にしてみれば、淘宝でアクセス数を獲得する努力をせずに済むということで、40~50人のネット有名人と契約すれば、彼らがアクセス数もフォロワーも連れてきてくれるので、在庫管理、物流、配送、モデル設定、運営などのサービスさえしっかりやっておけばよい。

ネット有名人はファンと双方向(インタラクティブ)に交流しようという意欲や交流のレベルがスターをはるかに上回る。双方向の交流はもうけを生むからだ。スターはイメージが傷つくことを恐れ、一般的にファンに直接ものを売るということはしない。ネット有名人はどちらかといえばライフスタイルの提唱者に似ており、ファンと双方向に直接交流し、商品を直接販売する。

ネット有名人は本質的には情報通信(IT)産業ではなく、コンテンツ産業だ。ユーザーを引き寄せるのはそのコンテンツだからだ。ネット有名人経済誕生の背景にはモバイルインターネット世代、動画世代がいて、大勢のユーザーの視線を引きつけるのは個人のブランドだ。

これまで消費者がブランドの情報を得るルートは広告だったが、ネット有名人の時代にあって、消費者はネット有名人からの口コミでブランドを知るようになる。ネット有名人はつなぐ役割を果たしており、消費者と消費者をつないでいる。


2015年8月、上海で開かれた「網紅経済研討会」の様子

未来のビジネスの新たな人気ツールに

ネット有名人経済で現金を稼ぎ出すモデルは、実際には「コンテンツ+ソーシャルネットワーキングサービス+ネット通販」モデルの延長、または別のビジネス現金獲得モデルの延伸だ。産業ごとに細かな違いはあるが、最も根本にあるのはコンテンツが勝負ということだ。コンテンツとソーシャルネットワーキングサービスにネット通販が加わった現金獲得モデルでアパレル製品を売ることができるのは、そこに感情的なつながりがあるからだ。

今、目にしているネット有名人経済はアパレル製品が中心だが、将来のチャンスはより大きいとみられる。

淘宝(タオバオ)のモバイル顧客端末でも中継機能をうち出している。淘宝の達人は中継コーナーを開設し、淘宝の心得をそれぞれに語る。ネット有名人も広告を打ち、それぞれのおすすめ商品を直接販売する。

今後は、先進的な中継プラットフォームと質の高いフォロワーを抱えたネット有名人のプロデュース役が広告投資の主流を担い、実物商品のネット通販を誘導する巨大な潜在力をもつようになるとみられる。報告書の分析では、将来の中継プラットフォームによるビジネスモデルでは、広告と実物のネット通販がより重要な役割を果たすと予想する。

今後、中継がネット通販の関係者に人気のツールになり、中継という形態とスターのネット有名人化の流れを利用して、ユーザー獲得コストの引き下げを測るのが新たなやり方になるとみられる。消費のバージョンアップと汎娯楽(総娯楽化)という2つの大きなテーマが今後、ネット通販の中継プラットフォームで相まみえることが予想される。