中国人は何にお金を使っているのか

中国社会科学院がこのほど発表した「社会青書:2016年中国社会情勢の分析と予測」(以下、「青書」)は、「国民の消費の特徴が、個性化、多様化している。情報消費の成長速度が、社会消費財小売売上高の平均成長速度をはるかに上回り、15年の最大の注目ポイントで、消費の主要な成長エンジンとなっている」と指摘した。


春節用の食材を購入している合肥市の市民

支出最多は衣類、食品

調査によると、回答者の6.1%が昨年の消費総額が5000元(約9万円)以下、18.6%が「5000~1万元(約18万円)」、29.9%が「1~2万元(約36万円)」、19.7%が「2~3万元(約48万円)」、25.2%が「3万元以上」と答えた。

支出で最も多かったのは衣類で73.0%。以下、食品69.2%、交通・通信48.0%、教育、文化娯楽42.3%、化粧品41.9%、旅行39.8%と続き、医療・健康サービス、住宅はいずれも32.2%だった。

例年と異なり、15年は回答者の情報消費が消費総額に占める割合が突出していた。調査によると、回答者の32.5%が情報系製品のハード、ソフトを「15年に購入した」と答えた。また、15年の情報消費における支出について、36.9%が「1000元(約1万8000円)以下」、43.0%が「1000~5000元(約9万円)」、14.1%が「5000~1万元」、3.9%が「1万元以上」と答えた。

情報系製品のハードの種類では、スマホが76.8%、タブレットPCが32.9%、スマートテレビが25.3%、ウェアラブルデバイスが14.0%、PCが13.8%、ナビゲーションシステムが12.9%、IPTV受信機が12.4%だった。

情報系製品のソフトの種類では、映画・音楽の会員45.1%、小説を読むための会員30.2%、スマホゲーム29.5%、ソフトのVIP会員29.0%、微博(ウェイボー)・微信(WeChat)のチップ支払い23.4%、その他19.1%だった。

中国人民大学国家発展・戦略研究院の劉元春・執行院長は、「現在、中国国民の消費情勢は全体的に見て順調。社会消費財小売売上高は10%以上増となり、現在世界でも上位。全体的に見ると、経済が低迷している状況下で、依然としてこのような成長スピードを保っているというのは、大きな注目ポイントだ」との見方を示す。

また、「現在、中国国民の国民総生産(GDP)は平均8000ドル(約94万4000円)程度。生産者物価指数(PPI)予測は、1万ドル(約118万円)を超えている。こうなると、消費全体がレベルアップ、スピードアップし、構造的な転換が現れる。ただ、生活必需品、特に住宅、交通の支出が多く、食品類の支出も急減しているものの、それでもまだ多い。一方、文化類の支出が少ない」と分析する。


ミルクを購入している海南省の市民

59.4%「娯楽のための情報消費」

情報消費の目的について、北京の大学院生・田暁甜さんは、「娯楽のため。音楽を聴くのが好きで、微博で曲を買ったこともある。高音質の音楽を聴くために、ある音楽サイトの会員にもなった。また、本も好きで、『盗墓筆記』の作者・南派三叔の微博アカウントでチップを支払ったこともある。これも、著作権の保護の一種。このためのお金は惜しまない」と話す。

調査では、情報消費の目的について、回答者の59.4%が「娯楽」、56.2%が「情報源を得るため」、44.8%が「社交的な活動」、35.5%が「自己向上」と答え、17.7%が「周囲の人の影響」とした。

「青書」は、「現在、中国の情報消費成長の注目ポイントは2点ある。1つは、スマホ、スマート家電、系製品のハード関連の消費が急成長していることであり、もう1つは、スマホゲームやスマホ文学といった情報コンテンツ、情報媒体の消費が急成長していることである」と指摘している。

劉執行院長は、「現在、国民の消費が中国のGDPの安定化装置で、15年の経済全体の構造において非常に大きく変化している。しかし、課題もある。第1に、公共サービス系の消費、特に、教育費、医療費が高いという問題が突出している。第2に、ミドル・ハイクラスの消費が制度の圧迫を受けている。例えば、消費に関する税金が多く、供給が不足している。第3に、地域ごとの消費、消費者層別の消費の開きが拡大している。例えば、都市と農村の消費の開き。第4に、所得水準は消費能力に直接影響するため、所得の問題にも注目すべき。消費のレベルアップを促進する『動力源』について改めて考え直す必要がある」と指摘する。

また、情報消費について、「情報消費は、消費全体の中で主な成長源となっている。インターネットプロジェクトやビッグデータプロジェクトが実施されるにつれ、情報消費はさらに成長するだろう」としている。