物質から精神へと変化した中国の消費

データによると、2015年第13四半期の国内総生産(GDP)に対する消費の貢献度は58.4%にも達した。また2015年110月の社会消費財小売総額の前年同期比増加率は1011%を保ち、大いに目を引いたという。

政策面での好材料が次々に登場し、ショッピングイベントがますます増え、親戚や友人の間はますます親密になり……「掃一掃」(QRコードのスキャン)、消費者ローン、全球購(海外通販)が登場し……親指を動かすだけで物が買える時代の中、2015年の中国人の消費傾向には静かに、だが確実に大きな変化が起きている。


2015年5月、西安市西安北駅、漢服姿の職員が一日漢服体験ツアーをPRしている。
観光客はQRコードを読み込んでいる

政策面の好材料消費バージョンアップを促進

年初以来、政府は海外通販を奨励する一連の関連政策を相次いでうち出した。6月10日には李克強総理が国務院常務会議を開催し、海外通販の健全で急速な発展を促進するための計画について話し合い、開放型経済の発展バージョンアップを推進した。「インターネット+対外貿易」モデルを用いて貿易の質を重視する「優進優出」を実現させ、消費の拡大や新たな経済成長源の育成にプラスになった。

11月24日には国務院と国務院弁公庁が共同で「新消費の誘導的役割を積極的に発揮させ新たな供給源と新たな動力の育成形成を加速させることに関する指導意見」、「生活型サービス業の発展を加速させ消費構造のバージョンアップを促進することに関する指導意見」という2つの重量級文書を発表して消費のバージョンアップをうち出し、新たな供給源と新たな動力の育成に乗り出した。

また政府は一部の衣類、スキンケア製品、紙オムツといった海外の日用品の輸入関税を引き下げ、免税店を増設し、「インターネット+流通」計画をはじめとする消費にプラスとなる一連の政策を集中的にうち出した。その狙いは、国内の消費環境を改善して消費バージョンアップの流れに合致した商品とサービスの供給を増やすことにあった。

要求が多様化物質から精神へと変化

ここ数年、中国の経済構造は日進月歩の変化を遂げつつある。クレディスイスが発表した「2015年度グローバルウェルスレポート」のデータをみると、中国は中産階級の人数が1億900万人に達し、世界で最も中産階級が多い国になった。中産階級は拡大を続け、人々の生活スタイルも衣食住交通などの基本的ニーズに関心を寄せる段階から、精神的な側面の充実をはかる方向へと徐々に移り変わっている。

近距離海外旅行、家族旅行が持続的な伸び

中国観光研究院が発表した最新のデータによると、中国の海外旅行者数と海外での購買力は3年連続で世界一になった。15年の海外旅行者数はのべ1億2000万人を超え、海外消費額は1兆1000億元(約20兆4640億円)に達する見込みだ。

15年の春節(旧正月)連休期間に日本を訪れた大陸部の観光客はのべ45万人に上り、日本に1125億円の消費額で貢献した。その原因として、日本と韓国の大陸部住民向け査証(ビザ)の発行要件の緩和政策、人民元レートの上昇、海外旅行産業の持続的な改善、中国人の持続的な資産の蓄積、消費財に対する中産階級の要求の高まりが挙げられる。また2015年は米国が大陸部住民向け査証の緩和政策をうち出したため、米国を訪れた大陸部の観光客の増加率が39%に達した。

子供の学校が休みになると、親たちは休みを取り、家族旅行の人気がますます高まっている。調査データによると、15年の夏休みの海外旅行者のうち、家族旅行が占める割合は50.1%に達した。両親は夏休みの海外旅行は家族の絆を深めるとともに、子供の能力を伸ばす機会であると考える。また「パパ、どこ行くの?」といった旅バラエティ番組の人気が親子旅行を側面から盛り上げる。観光地や旅行社の多くが親子旅行をテーマにした旅行商品を次々にうち出し、科学的知識を織り込んだり、教育的配慮をしたり、参加型にしたりするなど、あれこれ工夫をこらしている。


文化娯楽消費が急速に伸びている。写真は北京市内にある国家大劇院

文化娯楽消費が急激な伸び

第13次五カ年計画の提起では、2020年をめどに文化産業を国民経済の基幹産業に発展させることが明確にうち出された。1520年の6年間に、文化産業の生産額は名目GDPベースで5兆元(約92兆9178億円)に達することが予想される。

15年に文化娯楽方面で最も注目を集めたのは映画産業だ。統計をみると、12月3日までの興行収入は400億元(約7433億円)の大台を初めて突破し、前年同期比47.4%増加した。年末までに440億元(約8176億円)に達する見込みだ。北京大学の張頤武教授は、「中国が将来、世界一の映画市場になることに、いささかの懸念もない」と話す。

イノベーションが駆動伝統からスマートへと脱皮

15年3月5日、李総理は第12期全国人民代表大会第3回会議での政府活動報告で「インターネットプラス」を初めて言及した。すると、「インターネットプラス」が引き起こした消費ブームが勢いよく押し寄せた。この波は大きな刀でスパスパと斬りつけるように、人々の消費体験を大きく変えた。

それから今日までの間に、タクシーの予約、料理の注文、野菜や果物の販売、宅配クリーニング、家庭教師探しなど一連の新しい消費モデルがネットで利用できるようになり、今も盛んな勢いで発展を続けている。

交通手段も変化が

現在、人々の生活リズムはますます加速し、「時は金なり」が不変の真理となった。今ではタクシーを呼ぶのが交通手段の筆頭だ。データによると、配車アプリ「滴滴快的」は国内ネット配車市場でのシェアが80%に達し、一日あたり利用者はのべ約300万人に達するという。

地域別にみると、配車ソフトの利用者は一線都市の居住者が中心だ。15年上半期の配車ソフト利用者都市別ランキングでは、北京、上海、広州が上位3位に並んだ。