販売鈍化で 自動車ディーラーが危機に

2015年の自動車産業は、産業全体が「新常態」(ニューノーマル)に突入するのにともない、販売の伸びが鈍化し、もともとあった主な矛盾点がさらに顕在化している。


福建省泉州市市内にある駐車場の様子

調査研究の結果によると、今年上半期に自動車メーカーと自動車ディーラーの緊張関係が続いた主な原因として、ディーラーの投資利益率が低く、ディーラーが損失を被る側面が持続的に拡大し、ディーラーが生存の危機に直面していることや、業界の在庫水準の平均が警戒ラインを超え、実際の販売価格が出荷価格を下回る価格の逆転がよくみられる現象となり、ディーラーの利益構造がバランスを失っていることがあるとわかった。メーカーはその強みを利用して独占的に振る舞い、ディーラーが受け取るべき利益をいろいろな面で損なっている。

気を吐く独自ブランド在庫問題が引き続き悪化

中華全国工商業連合会自動車ディーラー商会(CADCC)が8月21日に発表した「中国自動車ディーラー満足度調査報告(2015年)」によると、中国独自ブランド車のディーラーの満足度は軒並み合弁企業より高かった。またディーラーの間で損失の拡大、在庫の警戒ラインへの接近が一般的な現象になっている。

この調査研究では年間販売量20万台以上の自動車ブランド25ブランドが調査対象となった。集まったサンプル数は329に上り、一線都市、二線都市、三線都市、四線都市を網羅した。対象ブランドのディーラーの満足度平均は48.3ポイントで、上位3ブランドは哈弗(ホーバー)、シボレー、ベンツで、ホーバーは73.3ポイントだった。ワースト3は比亜迪、フランス系のプジョー、シトロエン。前回1位のアウディは今回は下から5番目だった。

注目すべき点は、満足度が平均の48.3ポイントを上回る14ブランドに、独自ブランドの哈弗、奇瑞、栄威、奔騰、吉利が入ったことだ。フランス系ディーラーの満足度が最低で、中でもプジョーは36.1ポイントで24位になり、シトロエンは32.6ポイントで最下位の25位だった。

現在、自動車販売価格の逆転現象が業界では当たり前になっている。全体としてみると、今年4月以降、一部メーカーが一部車種の定価を相次いで引き下げ、疲弊した市場を活性化しようとした。25ブランドの主要車種完成車の販売価格はメーカーの希望価格の87%にとどまり、19ブランドが希望価格の90%以下で、最高は哈弗の97%、最低は奔騰の79%。アウディ、BMW、東風日産の車種で価格逆転が起きた割合はいずれも80%を超えた。

自動車ディーラーの危機

投資リターンの状況をみると、ディーラーの65%は投資でリターンが得られるまでの周期が5年以上となっている。収益力をみると、3年間赤字が続いたディーラーは33%に上ったのに対し、3年間黒字が続いたディーラーは22%しかいなかった。

北方工業大学自動車産業イノベーション研究センターの紀雪洪センター長(博士)の話によると、調査対象となったディーラー数百社のうち、77%がメーカーに在庫を強制する行為があったこと、73%がメーカーに不人気車種を抱き合わせで売りつける行為があったことをそれぞれ指摘したという。

CADCCの王冀・秘書長(事務局長)補佐は、「ある日系ブランド車のディーラーの話では、メーカーが抱き合わせで売りつけてきたある車種は、売ると15万元(約278万円)の損失が出ることになるので、これを他の車種で穴埋めしなければならないという」と話す。

CADCCの朱孔秘書長(事務局長)は、「メーカーとディーラーの間で矛盾が起こる最も根本的な原因は在庫にある。在庫がたまってディーラーのキャッシュフローが滞り、『夜逃げ』や『閉店ラッシュ』のような状況も起きている。自動車ディーラーは今まさに『優勝劣敗』のプロセスを経ているところだ。在庫をみると、25ブランドの平均在庫量は月間販売量の1.62倍で、在庫量は軒並み多く、在庫圧力は大きい。棚卸資産回転周期は平均49.5日で、1.66カ月分に相当し、最も好調な宝信汽車は1.25カ月分、最も大きな在庫圧力がかかった厖大集団は10週間の約2.3カ月分に迫る。哈弗、トヨタ・広汽トヨタ、ホンダ・広汽ホンダ、ビュイックの4ブランドは1.2カ月分を下回り、栄威、日産・東風日産、奇瑞などは2カ月分を上回った」と述べた。

また調査により、ディーラーが販売量と車種の選択権をもたない割合は69%、メーカーが不人気車種を抱き合わせする割合は73%、メーカーが在庫を強制する割合は77%、ディーラーがメーカーと価格交渉を行えない割合は84%、ディーラーが試乗車の買い取りを強制される割合は85%に達したことがわかった。