中国経済は「新常態」(ニューノーマル)を認識する段階から新常態を誘導する段階への移行過程にあり、今まさに坂を上り高みに至るための「関所」を通過しつつある。そこでどのように経済を安定的に運営するかが、各方面が回答を求める問題となっている。国務院の李克強総理はこのほど政府活動報告の中で、「中国は消費を拡大し、投資を増やし、新興産業と新興の業態を支援することなどを着手点として、経済モデルのバージョンアップを促進し、慎重に行動して大きな成果を上げていく」と述べた。この力強い報告が消費、投資、新興産業を焦点にし、さまざまな関連産業に発展の黄金期をもたらすことは確実だ。
全人代で政府活動報告をしている李克強総理
消費を拡大小さな流れが大きな川に
中国経済のモデル転換の過程では、消費市場が転換にともなってバージョンアップするというのが業界の共通認識だ。政府活動報告の中では、これから必要なことは消費の成長源を早急に育成することだとしている。大衆の消費を奨励し、「三公消費」(公費による外遊、公務接待、公用車の購入・使用)を抑制する。これと同時に、介護や家事や健康にまつわる消費を促進し、情報消費を拡大し、観光やレジャーの消費を引き上げ、グリーン消費を推進し、住宅関連消費を安定させ、教育・文化・スポーツ消費を拡大することが必要だ。それだけではなく、中国は今後、「三網」(通信網、インターネット、有線テレビ網の三大ネットワーク)の融合を全面的に推進し、光ファイバーネットワークの建設を加速させ、ブロードバンドネットワークの速度を大幅に引き上げ、物流・宅配便業務を発展させ、インターネットをベクターとし、オンラインとオフラインが連動する新興の消費スタイルを大いに発展させることが必要だという。李総理は、「消費を拡大するためには小さな流れを集めて大きな川にすることで、億万人の国民の消費の潜在力を経済成長牽引の力強い動力としなければならない」と強く指摘した。
業界のアナリストの間では、「先進国や世界の平均水準に比べ、中国国民の消費率は低すぎる。経済発展を牽引する『トロイカ』(消費、投資、輸出)の一つである消費を促進することは、中国人に『使える金があり、その金を使う』ようにさせることにほかならない。消費を奨励するとは、人々の所得水準を引き上げ、所得分配政策を調整し、社会保障を強化し、消費の成長源を育成することを意味する。全体としてみれば、中国人の消費の潜在力は非常に高い」との見方が一般的だ。
投資を増やすたくさんの矢を一斉に放つ
消費を拡大するだけでなく、投資も政府が成長を効果的に安定させるための主要な手段だ。李総理は、「第12次五カ年計画(2011~15年、十二五)の重点建設任務を確実に達成するために、中国は一連の新たな重要プロジェクトの実施をスタートし、これにはバラック密集地の改造、鉄道、土木工事などへの各種投資を一斉に行い、中部・西部地域に重点的に配置し、巨大な内需パワーをよりよく発揮させることが含まれる」と述べた。
これについて、中投顧問産業・政策研究センターの関連部門責任者は、「これまでインフラ建設投資は主に地方政府が行っていたが、投資が回収されるまでの期間が比較的長いことから政府の債務比率が高止まりしていた。経済ペースの鈍化にともない、経済を喚起し、民間投資を奨励することが、最良の選択肢になる」と話す。
全人代の会場の様子
新業態新興産業を主導産業に
実際、経済の新常態を牽引しようとするなら、新興産業や新興業態の拡大発展と離れるわけにはいかない。政府活動報告では、「今年は先端設備、情報ネットワーク、集積回路、新エネルギー、新材料、バイオ医薬、航空機エンジン、ガスタービンなどの重要プロジェクトを実施し、一連の新興産業を主導産業に育成することが必要である」ことが明確に示された。また、「『インターネット+』行動計画を制定し、モバイルインターネット、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、モノのインターネットなどの現代型製造業との結びつきを推進し、ネット通販、インダストリアルインターネット、ネットバンキングの健全な発展を促進し、ネット企業の国際市場開拓を誘導することが必要だ」としている。
全国人民代表大会の代表を務める杭州娃哈哈集団有限公司の宗慶後董事長(会長)兼総経理(社長)は、「中国はすでに高度成長の段階を過ぎた。もともと私たちはお腹一杯食べるため、暖かい服を着るため、懸命に経済を発展させてきた。こうすることで一連の問題も引き起こされ、資源の消費や環境汚染が起こった。新常態の下で、過度の拡張型の発展モデルを、質と効率に配慮した発展モデルへ、また金山や銀山もあれば澄んだ水や緑の山もあるという環境保護型の発展モデルへと転換させることが必要だ。現在、経済成長率が低下していることは、中国経済の衰退を物語るものではなく、モデル転換やバージョンアップの一つの過程に過ぎない。経済の新常態の下で、私たちはイノベーションを駆動力とし、もともと遅れていた部分を改良することで、よりよい発展を遂げなければならない。そうして新興産業が主導産業へと成長する過程で、企業には多くのチャンスがもたらされることになる」と述べた。
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