中国は世界一のロボット市場に

ある国の科学技術イノベーションのレベルや先端製造業の水準をはかる重要な指標として、ロボット産業が各国の注目をますます集めるようになっている。主要エコノミーはロボット産業の発展を相次いで国の戦略に格上げした。「ロボット革命」は第3次産業革命の着手点の一つであり、重要な成長源であり、グローバル製造業にも影響を与えるものだ。

中国ロボット産業連盟がまとめた統計によると、2013年の中国工業用ロボットの販売台数は3万6860台で、前年比41%増加し、中国は日本を抜いて世界一のロボット市場に成長した。第3次産業革命の着手点の一つであり、重要な成長源であるロボットは、中国の工業のモデル転換・バージョンアップ、製造大国から製造強国への転換における重要な手段になりつつある。

 
2014年中国国際ロボット展覧会の様子

2014年ロボット販売急増製造業はロボット時代へ邁進

工業・情報化部の蘇波副部長は、「人件費コストが徐々に上昇し、労働力の構造的な供給が低下し、新興エコノミーの間の競争が激化し、欧米の先進国が再び製造業を重視するようになるなどの複雑な局面が、中国の製造業にモデル転換・バージョンアップを迫っており、各産業ではロボットによる自動化設備への需要が勢いよく伸びている。効率を引き上げる、品質を向上させる、コストを引き下げる、事故を回避する、劣悪な環境下でも作業が可能といった強みをもつロボットが、中国の自動車産業や電子産業などの製造業や日常生活のさまざまな分野に徐々に浸透している」と話す。

同連盟がまとめた最新のデータから、中国の製造業市場におけるロボットの勃興がうかがえる。2014年第1~3四半期(1~9月)の国内の工業用ロボット販売台数は3万3600台で前年同期比32.5%増加し、通年では4万5000台に達する見込みだ。工業ロボットは国民経済を構成する25の産業分類の52産業に幅広く貢献し、製造業のさまざまな分野に進出しているという。

だが国際ロボット連盟のまとめた統計では、製造業の従業員1万人あたりのロボット保有台数は、韓国の396台、日本の332台、ドイツの273台、世界平均の58台に対して、中国は23台に過ぎず、中国の工業用ロボット市場には引き続き大きな発展の可能性があるといえる。

蘇副部長は、「今後数年間、中国の工業用ロボット市場は急速に伸びていく。国際ロボット連盟がこのほど発表した報告によると、中国の工業用ロボット需要の年増加率は25%以上になり、2017年の市場での販売台数は10万台に達し、工業用ロボット保有台数は40万台を超える見込みだ」と話す。

 

独自ブランドが販売の4分の1占める

哈爾濱(ハルビン)工業大学ロボット研究所の趙傑所長は、「中国はロボット応用の基礎研究から産業化に至る研究開発体系を基本的にうち立てており、工業用ロボット、サービス用ロボット、特殊なロボットなどの各産業が基本的な形を整えている」と話す。

中国ロボット産業連盟がまとめた統計によると、13年に中国で販売された工業用ロボットのうち中国独自ブランド企業のものが9500台を超えて4分の1を占めた。工業用ロボットのサーボモーター、減速器、サーボドライバー、コントローラーといった重要部品の産業チェーンも形を整えている。サービス用ロボットの分野では、科沃斯や銀星智能などのお掃除用ロボットが100万台近く売れて、一般家庭で使用されている。医療や介護などの分野でも、最近開発された一連のロボットのサンプルがテスト段階に入った。

 
2014年中国国際ロボット展覧会に展示されている中国製ロボット

重要部品の国産化未達成コスト高の原因

蘇副部長は、「中国の工業用ロボット産業は急速に発展しているが、先進国と比較すれば、なお大きな開きがある。中国独自ブランドの工業用ロボットは3軸の座標型ロボットと4軸の多関節型ロボットが中心で、6軸の多関節型ロボットが全国の工業用ロボット販売台数全体に占める割合は6%にも満たない。外資系ブランドが販売する多関節型ロボットが国内の工業用ロボット販売台数全体に占める割合は62%に達する。独自ブランドロボットは国民経済の各分野の発展ニーズにまだ全然対応できていない」と話す。

現在、中国の工業用ロボット企業が真に利益を出すことができる事業はシステム集積だ。重要部品はまだ国産化を達成したとはいえず、国産ロボット本体のコストは海外メーカーよりもはるかに高く、事業規模の拡大を難しくしている。165キログラムの6軸多関節型ロボットの場合、現在の海外製品のコスト総額が16万9000元(約320万4264円)であるのに対し、国産ロボットは29万9000元(約566万9082円)にもなる。減速器だけでも、国内メーカーの調達価格は海外企業の約5倍で、価格差は7万元(約132万7200円)を超える。

上海通用(瀋陽)北盛汽車有限公司の第3期車体製造現場の賈永泉経理(マネージャー)は、「設備調達の入札で、企業はこれまで国産ブランドの溶接ロボットを検討していたが、評価の結果、精度や信頼性が十分ではないことがわかった。重要部品を輸入に頼るため、価格は海外製品を70~80%上回る」と話す。

だがこのような局面はもうすぐ打破される見込だ。工業用ロボットの4大コア技術の1つであり、総コストのうち25%を占める減速器は、すでに広州数控設備有限公司が開発に成功している。同公司の何敏佳董事長は、「6年前、広州数控は研究員の2チームを投入して減速器の開発に着手し、最終的に重大な飛躍を遂げた」と話す。

また何董事長は、「ロボットの最重要『4大部品』を掌握すれば、国産ロボットは『価格決定権』をもつようになる。工業・情報化部が13年に発表した指導意見によると、20年をめどに国内に整った工業用ロボット産業システムが形成される見込で、ハイエンド市場の占有率は45%を超えることが予想される」と話す。