通販が開く世界の新販売ルート

国境を越えた海外通販はインターネットと国際物流網をよりどころとし、末端の消費者に直接向き合うもので、顧客のニーズに対応しやすく、参入のハードルが低い、中間プロセスが少ない、コストが安価、周期が短いといった強みをもつ。ここ数年、上海市、浙江省、青島市などは海外通販プラットフォームを十分に活用して、世界に向けた企業の新しい販売ルートを構築し、外資系企業の業績の安定化・回復を後押ししている。

浙江省義烏市の日用品マーケット・義烏小商品城で玩具を取り扱う店舗を経営する王立平さんは、今年になって欧米地域から18万ドル(約1930万円)に上る注文を受けた。これまでの大口注文や長期にわたる注文とは異なり、今年の注文は基本的に中期・短期で、2~3カ月で1回商品を引き渡しすれば終わるものだという。中期・短期の注文が多数を占めるのが、浙江省の対外貿易でここ数年みられる新たな特徴だ。これと呼応するように、国境を越えた通信販売が隆盛になりつつあり、その原因として通販が短期の注文に強みを発揮するということが挙げられる。

商務部がまとめた統計データによると、中国の海外通販取引額は2011年に約1兆6000億元(約28兆195億円)、12年に約2兆元(約35兆円)に達し、13年は3兆1000億元(約54兆2878億円)を突破し、16年は6兆5000億元(約113兆8293億円)に達することが予想され、年平均増加率は30%に迫るとみられる。


通関をより便利にしている税関のスタッフ

通販が輸出市場を拡大利益はオフラインより上昇

現在、インターネットで商品を展示し、売買双方がネットで連絡を取り合い、バイヤーが海外のサプライヤーと少額の取引を直接行うという形式が徐々に主流になりつつある。

浙江省金華市の業者・李遥遥さんはこれまでずっと実店舗を経営してきたが、3年前からネットで海外通販を始めた。蘭亭集勢やアリババの全球速売通などのプラットフォームに仮想店舗を開設し、今では世界各地から一日あたり平均2000件ほどの注文を受けるという。

李さんは、「ネット通販は中間プロセスを省略でき、利益はオフラインでの注文を約20%上回る」と話す。小商品城では、李さんのように小商品城に実店舗を構えつつ、ネット市場の店舗も開拓するというケースが増えている。

義烏市商務局がまとめたデータによると、今年1~6月に義烏市で通販取引の金額は472億元(約8274億円)に上り、前年同期比35%増加した。海外通販サービスの第1期テスト都市に選ばれた広州市では、今年7月末現在、輸出監督管理検査を経た海外通販の郵便小包が28万件に達し、輸出先は178カ国・地域に上った。

新型の貿易業態である海外通販の急速な発展にともない、浙江、上海、青島などの沿海地域では、対外貿易が安定回復傾向をみせる、構造の最適化が進むなどの特徴が現れている。

中国(上海)自由貿易試験区で行われている「跨境通」は、国内の海外通販テスト事業プラットフォームである。現在、韓国の現代百貨店など10店舗が参入し、取扱商品は1600種類、数万点を超える。参入店舗は年内に30に達する見込だ。

輸出税還付が始動通関がより便利に

上海市商務委員会の尚玉英委員長は、「上海は今後、海外通販をめぐる通販の利便化レベルを一層引き上げ、より多くの企業が海外通販に主体的に参与することを奨励していく。輸出については、コード番号『9610』の税関監督管理方式に基づく海外通販のシステム建設を推進し、システムを飛躍させる。貿易環境については、関連部門とともに海外通販企業の参入制度および海外通販の対象商品のネガティブリストを検討して適切な時期に改善策をうち出していく」と話す。

今年1月、国の海外通販テスト事業都市に選ばれた青島市は、通販向けプラットフォーム「陽光通路」を開設させた。6月には海外通販向け税関プラットフォームの「陽光快速通路」が運営をスタート。

青島紅領集団有限公司の張代理董事長(会長)は、「弊社の通販市場の90%は欧米にあり、毎月800件あまりの輸出申告書を提出しており、決済と税還付の手続きからくる圧力は大きかった。これまで弊社が輸出を1件申告するごとに、申告、決済、税還付といった一連の煩瑣な手続きを行わなければならなかったが、海外通販向け新プラットフォームが開設されると、毎月報告書を1枚提出するだけでよくなり、税還付や決済も一回で済むようになった」と話し、新モデルを高く評価する。

輸出をめぐる税還付は通販テスト事業が秩序をもって進めている重要な内容だ。青島市商務局の関係者の説明によると、海外通販における輸出税還付政策の実施を保証するため、青島市国家税務局は関連部門と提携して、輸出の税還付申告に必要な資料や証明書などを明確にしたという。


アモイ港の風景