人民元オフショア市場、4つの課題と対策

このほど開かれた2014年国際通貨フォーラムで、「人民元国際化報告書」が発表された。

同報告書の編集担当でもある中国人民銀行貨幣政策委員会委員、中国人民大学校長の陳雨露氏は同フォーラムに出席し、「人民元オフショア市場の建設は、国際法との抵触が予想される。機密制度もしくは条項の制定を急ぎ、マネーロンダリングの厳格な法的対策を講じ、海外の資金のオフショア金融センターを通じた違法な移転を防がなければならない」と提案した。

同報告書は、「世界の主要な国際金融センターは、人民元オフショア金融センターの建設を歓迎している。新興の国際金融センターは、人民元オフショア事業の争奪に乗り出している。世界的に人民元オフショア市場を展開する際に、成り行きに逆らわないという伝統的な実現モデルを尊重すると同時に、市場を積極的に育成する可能性を軽率に否定してはならない」と指摘した。

陳氏は、人民元オフショア市場の発展が今後直面する課題とその対策として、次の4つを挙げた。

(一)効率・安全性・コストパフォーマンスの高いオフショア人民元決済システムの不備。これは国内外企業と金融機関の人民元使用の積極性を損ね、主な国際金融センターのオフショア人民元取引規模を制限し、人民元国際化の進捗に影響を及ぼす。

<対策>米国のCHIPSを参考にし、世界的なオフショア人民元決済システムを早期構築し、リアルタイム・全額の決済システムにする。

(二)人民元オフショア市場の法的枠組みの未構築。

<対策>国際法との抵触に対応する準備を整える必要がある。また国内の課税と管理を強化し、二国間・多国間の国際税収協力枠組みを強化し、脱税を取り締まり、税の流失を防ぎ、中国の法に基づく納税の秩序を維持する。

(三)オフショア人民元の金融商品ラインナップと金融機関のサービス力の不足。

<対策>中国系金融機関のオフショア事業は全体的に、伝統的な預金・貸付・国際決済に留まっており、金融商品の開発に革新的な進展が必要だ。中国系金融機関に人民元オフショア市場の建設でより多くの事業を担当させるほか、外資系金融機関がネットワークと評判の強みによりオフショア人民元事業を展開することを奨励し、人民元のシェアを共に高めていく。

(四)オフショア金融市場が一定規模に達すれば、オンショア市場の金利と為替の形成メカニズムに影響を及ぼし、金融政策の効果を薄め、金融管理の新たな課題を生む。オフショア市場の取引は、人民元の金利・為替決定メカニズムをより複雑にし、人民元の価格決定権を奪う可能性がある。これは金利・為替市場化改革の加速と、金融政策の量的な目標から価格の目標への変化を迫る。

<対策>新しい慎重なマクロ金融管理モデルを構築し、オフショア市場をモニタリングの範囲内に収め、健全な市場中心のメカニズムを形成し、金融管理の国際協力を強化する。これにより人民元オフショア市場の安定的かつ健全な発展を保証する。

中国人民大学国際貨幣研究所(IMI)と中国交通銀行は同報告書を2012年から毎年発表しており、人民元国際化の重大な理論および政策問題について検討している。今年の同報告書のテーマは「人民元オフショア市場の建設と発展」となっている。