サービス効率化の挑戦でリテール業務が受ける衝撃
銀行が冷や汗をかくインターネット金融とは

中国ではインターネット金融の急速な発展により、銀行業は一律に大きな衝撃を受けている。中国人民銀行が発表した『中国金融安定性報告書(2014)』でも、インターネット金融の問題がテーマに取り上げられており、インターネット金融が零細企業の融資環境の改善に役立ち、金融資源のバランスを合理化し、金融システムの包括性を上げ、普恵金融(社会の各階層やグループにサービスを提供する金融体制)を発展させるとしている。同時にこの報告書では、初めてインターネット金融の五大管理原則が明記され、根底にある考え方を保ちつつ、引き続き堅実に発展させていくよう促している。

 

技術の進歩と

巨大マーケットの展開

近年中国では、インターネット技術とモバイル端末の使用拡大に伴い、ネットを利用した決済システム、資金流通や情報の仲介サービスなどを行うインターネット金融が飛躍的に発展してきている。

ネット決済の技術は確立されつつあり、ネット経由の信用貸付、不特定多数の人がネット経由で財源の提供や協力などを行うクラウドファンディング、ネット決済、電子商取引大手のアリババが開発した「余額宝」などのインターネット金融商品が、急速な勢いで展開されている。

「余額宝」は昨年6月から今年3月末までに、8100万のユーザーを抱え、その総規模は5413億元(約8兆8662億円)に達し、世界十大ファンドにあげられるまでになった。

ネット決済の発展の勢いも同じく急速である。2013年8月までで、許可を受けた第三者決済機関250のうち、ネット決済サービスを提供しているのは97にのぼる。2013年に決済機関が扱った業務処理数は153.38億回にわたり、その合計金額は9.22兆元(約151兆円)にもなる。

ネット決済の利用はネットショッピング、費用の納付などに留まらず、積立金運用、旅行、教育、保険、地域サービス、医療衛生など広範囲に浸透しつつある。

中央財経大学中国銀行業研究センター主任の郭田勇氏は「インターネット金融が、この数年でここまで早く発展したのは、当然の成り行きである」と分析。その外的要因として、管理不備による弊害はあるものの、インターネット関連企業に生き残りの余地を与えたこと、内的要因としてはユーザーが5億人を超え、利用者と顧客の裾野が広がったことが考えられるとしている。

 

銀行業が迫られる足場固め

インターネット金融の急速な台頭につれて、銀行を代表とする伝統的な金融業は積極的にネット化に対応している。商業銀行はリスクヘッジを積み重ねてきた強みがあり、ビッグデータ時代のチャンスを上手く捉えれば、インターネット技術を利用して零細企業への融資や個人の顧客へのサービスを充実させることが可能になり、新しいニーズを引き出すことができると業界関係者は見ている。

「短期的に見ると、インターネット金融により、銀行は主に個人や中小・零細企業向けのリテール業務に大きな影響を受けている。銀行は方向性を定め、顧客を満足させるシステムやサービスルートにインターネットを活用して質を向上させなければならない」と郭田勇氏は述べている。

中央銀行の報告によると、インターネット金融の発展には五大意義があるとされる。

1、普恵金融の発展に役立ち、伝統的な金融サービスの不足点を補う。

2、民間の資本力を発揮させる作用があり、民間金融の規範化を促す。

3、電子ビジネスのニーズを満たし、社会の消費を拡大させる。

4、コストを下げるのに役立ち、資産配分の効率と金融サービスの質を上げる。

5、金融商品のイノベーションを促し、顧客の多様なニーズに応える。

 

五大管理原則で堅実な発展を

「金融を取り扱う以上、必ず管理をしていかなければならない」。郭田勇氏は以下のように指摘する。産業の発展において、その法則から見ると、新興産業は初めは発展スピードが速く、リスクも低い。しかし、その早すぎる発展と利潤への誘惑のせいで、業務や組織において玉石混淆になり、リスクが高まっていく。今、インターネット金融はこの段階に入ってきている。

「中国におけるインターネット金融は、まだその発展の観察期にある。新機軸へのサポートと消費者の利権保護、そしてリスクヘッジのバランスをうまくとらなければならない」。中央銀行の報告においては、インターネット金融の管理は、その根底にある考え方を保ちつつ、引き続き堅実に発展させていくよう促している。