世界の多くの国の中央銀行が保有増加
人民元が準備通貨になることのメリットとは何か

人民元国際化の流れが止まらず、ここ数年は国際的な決済、評価、投資面で飛躍的に発展しているばかりでなく、昨今では世界の基軸通貨の仲間に加わりつつある。国外メディアの報道では、世界では現在少なくとも40カ国の中央銀行が人民元に投資しているほか、他にも多くの中央銀行が人民元に投資しようとしている。人民元は全面的な自由交換制を実現する前に事実上の基軸通貨になるかもしれない。

 

三大準備通貨はドル、ユーロ、人民元に

これまで、全世界で広く保有されている準備通貨は一貫してドルだったが、その抜きん出た優位性はますます他国から非難されるようになっており、一部の国々ではドルの保有額を削減し始め、準備通貨の多元化に転換しつつある。国際通貨基金(IMF)のデータでは2013年終了の時点で、ドルは全世界の準備通貨の33%近くを占めているが、その比率は2000年当時には55%だった。新興市場国の準備通貨の中の「ドル以外の通貨」の比重は2003年と比較して400%近く増えており、先進国でもドル以外の通貨は200%以上に増えている。

中国経済の成長が続くのに伴って、突然に姿を現した「ドル以外の通貨」の中で、人民元の存在がますますはっきりとしてきた。報道では、2013年11月から12月の間、世界での人民元の使用量は15%増加し、現状では東南アジア、東欧、ラテンアメリカやアフリカの一部の国々が人民元を公式な備蓄通貨とすることを検討している。

専門家は「中国は世界の貿易大国で、しかも世界一の外貨準備と潜在的市場規模(人口)を持ち、経済成長が世界で最も著しい国のひとつでもあります。中国が今まさに進めている経済構造調整は国内外の環境にチャンスをもたらします。こうしたことが背景になって、人民元は準備通貨として有利な条件を備えているのです」と指摘している。

北京大学国家発展研究学部教授で全国工商聯合会副主席の林毅夫氏は「2020年から2030年、国際的な主要準備通貨はおそらく3つになるでしょう。1つはドルが引き続き国際準備通貨の地位を維持し、もう1つはユーロ、それ以外に人民元が国際的な準備通貨の1つになるでしょう。他にも日本円やスイスフラン、英国ポンドなどが小規模ながら準備通貨になっています」と展望している。

 

準備通貨のメリットとリスク

専門家は「準備通貨になれば、資本循環のチャネル構築に望ましく、膨大な外貨備蓄と輸入インフレ圧力が軽減され、世界の金融市場でより大きな自主性を発揮する上で有利に働きます」と指摘している。

曁南大学国際商学部の孫華妤副学部長は「人民元が国際備蓄通貨になることは通貨の価値を安定させ、人民元での評価と決済のリスクを減らし、取引コストを下げて、中国経済の国際的な影響力強化にとってメリットとなります」と語っている。

世界の舞台に躍り出た国際準備通貨はいっそう大きな責任とリスクも負わなければならない。孫華妤副学部長は「仮に人民元が国際準備通貨になれば、中国の通貨政策は全世界の通貨政策になります。これは中国が経済政策を実行する上でより多くの要因の影響を受けることを意味しています」としている。

林毅夫氏も「実際、国際準備通貨になることは確かに大変光栄なことではありますが、経済的には相当大きな代償を払わねばなりません。ですから、短期的、長期的を問わず、それを埋め合わせるさらに良い方法を考え始めなければなりません」と懸念を表明している。

そして、林毅夫氏は「第1に、ある国の主権通貨が国際的な準備通貨になることはその国の利益と世界全体の利益が衝突するという矛盾を潜在的に秘めています。しかも主要備蓄通貨として、その国の通貨政策にとってはほぼ何の制約もなく、何の制約もないという構図はどんなものであれ、どれもベストの構図ではあり得ません。これは長期的に潜む問題です。第2に、仮に2030年に人民元が国際的な主要準備通貨の1つになっていたとすると、その時にはすべての国際準備通貨が今よりさらに不安定さを増している可能性があります。今より不安定である以上、その時に国際的主要備蓄通貨になることは、資本勘定を完全にオープンにし、資金は完全に自由に流動し、国際的投機家の投機問題が頻繁に起こり、大量の資金が国内に流入して不動産バブル、株式バブルを生むなど、通貨が急激に値を上げて、輸出が影響を受けるでしょう」と分析している。

 

人民元国際化の「宿題」

孫華妤副学部長は「多くの国の中央銀行が人民元を国際的な準備通貨にしようとしていますが、これは中国経済と中国政府に対する彼らの信頼を物語っています。長期的にみると、人民元が国際準備通貨になることは大いに希望が持てますが、それまでには紆余曲折と困難があるでしょう」と語っている。

林毅夫氏は「ドルは依然国際的な主要貿易決済通貨で、およそ全体の60%から70%を占めており、人民元の比率は世界全体でいえば5%にも足りません」として「人民元がドルに取って代わるまでにはやはり非常に大きな距離があります」としている。

この距離を埋めるには、中国はまだ多くの「宿題」をこなさなければならない。孫華妤副学部長は「人民元の国際化を推進するには、まず人民元を相対的に安定した通貨にする必要があり、変動が大きすぎてはなりません。さもないと恐慌を招くでしょう。ただし為替の変動を抑制しようとすれば、国際的な圧力が起こるでしょう。次に、対外開放を引き続き堅持し、対外開放は中国経済の構造転換と国際的な影響力の強化にメリットがあることを大衆に理解させ、経済や政治の政策決定は国際的に歩調を合わせ、政策の透明度を向上させなければなりません。最後に、資本勘定を開放する必要があります。ただ、短期的に急いで推進してはいけません。何故なら中国の金融体系はまだ十分完備しているとはいえないからで、これには慎重さが求められます」と語っている。