広東省のLNG受入ターミナルで魚介類を養殖するプロジェクトが進行中

中国初の液化天然ガス(LNG) の冷熱エネルギーを利用した養殖モデルプロジェクトが実施されている中国海洋石油集団有限公司(中国海油)広東大鵬LNG受入ターミナルで最近、水揚げが行われた。試験養殖されている経済価値の高い魚介類の各種生長・生理指標が安定しており、最も脂がのった時期に入っている魚介類もある。

LNGと魚介類との出会い

一見「接点」がないように見えるLNGと魚介類はどのようにして「出会い」、その「コラボ」にはどんなメリットがあるのだろうか。

養殖拠点の責任者である樊さんは、「魚の養殖をして30年以上になるが、LNG受入ターミナルでの養殖は今回が初めて。ここは水がよく、低温が特にありがたい」と話す。

指を水につけてみると、確かに水は非常に冷たかった。大型養殖用水槽の横に設置されている温度計を見ると、15℃を指していた。なぜLNG受入ターミナルで魚を養殖するかについて説明するためには、まず水温から始めなければならない。

LNGタンクでは、零下162℃という超低温でLNGが貯蔵されている。そのため、受入ターミナルに到着すると、まず加熱してLNGを気化してから、ガス管を通して各世帯へと届けられる。その気化の過程では、大量の冷熱エネルギーが発生する。

広東大鵬LNG有限公司の牛軍鋒・エネルギー技術シニアマネージャーは、「いわば、受入ターミナルは『大きな冷凍庫』のようだ。2023年、当社の受入ターミナルの冷熱エネルギー処理量は800万トン以上だった。100%転化できるとすると、十数億kwh(キロワットアワー)の電気に相当し、利用しないともったいない」と説明する。

何に利用するのか

では、何にそれを利用できるのだろうか。魚介類の養殖が妙案の一つとなる。LNGの気化の過程では、大量の海水が使われる。濾過処理された海水は、受入ターミナルシステムに送られ、熱交換して、LNGが気化する。熱交換が終わると、海水は、南方地域では非常に貴重な低温海水となる。分かりやすく説明すると、その過程は熱湯で冷たい牛乳を温めるかのようで、牛乳が温まると、熱湯は冷めていく。

広東大鵬LNG有限公司の郝雲峰総裁は、「LNGとの熱交換が終わった海水の水温は5℃くらい下がる。季節によって違うが、15-25℃の間でキープされており、経済価値の高い魚の生長に非常に適している」と説明する。

また、水質については、同プロジェクトでは、フィジビリティスタディの時から、厳しい水質の検査を定期的に行っているという。大鵬受入ターミナルは、水質が高い海域にあるほか、海水は何度も濾過され、電気分解して発生した微量の次亜塩素酸ナトリウムによって殺菌されたうえで、熱交換システムへ入る。こうしてできた海水は低温・無菌で、酸素溶解効率も高く、非常に貴重な養殖に使うことができる天然で高品質の低温海水となる。

どのように水温を

安定させるのか

では、どのように水温を安定させているのだろうか。牛氏は、「設計の段階で、養殖に必要な冷熱エネルギーを算出し、マッチング度の研究も行った。そして、養殖技術のシミュレーションを繰り返し行い、ベストな冷熱エネルギー供給技術を選出した。経済価値の高い冷水魚は、水温に敏感であることを考慮し、プロジェクトグループは、LNGの冷熱エネルギー専用の水温コントロールシステムを開発した。魚介類が『クーラーのきいた部屋』に住んでいるかのようで、快適に暮らすことができる」と説明する。

この養殖場で育った最初の魚介類が今年3-4月に、市場で販売される見込みだ。それに向けて、現在、プロジェクトの関連の検査や証明書の申請といった準備が行われている。

海水1立方メートルの温度を5℃低くするために、5.8kwhのエネルギーが必要と試算されるが、養殖プロジェクトで冷熱エネルギーを利用すると、一般社会で使われる電気を年間197万kwh節約し、二酸化炭素の排出を1800トン削減することができる。1年に1800本の植林に相当し、典型的なグリーン、リサイクル、低炭素経済だと言える。