「雲隠れ」を防ぎ、ネットローン詐欺を根絶
インターネットバンキングの秩序構築を

先日、中国初の『中国インターネットバンキング発展レポート(2013)』が発表された。このレポートは中国電子情報産業集団が中国人民銀行金融研究所など多くの組織と共同でまとめたものだ。レポートでは、インターネットバンキングの規模と影響が徐々に拡大するのに伴い、情報保護、リスク防止と管理監督問題が差し迫った解決を迫られていると指摘している。

 

 

 

便利さに伴うリスク

近年、急速に発展を続けるインターネットバンキングは、正に中国の金融システムと金融サービスの方式を静かに変えつつある。中国人民銀行の劉士余副頭取は「インターネットバンキングは、少額性、迅速性、利便性という特徴があり、それによって多くの人々を受け入れる受容性を備えています。伝統的な金融システムがうまく解決できなかった問題の多くを解決し、伝統的な金融システムと互いに組み合わさって、促進し合い、補完し合いながら、広い意味での金融システムを共同で作り上げています」と語っている。

だが、それに伴ってもたらされたインターネットバンキングの安全性問題がそれ以上に顕著になって来ている。2013年3月、グーグルが収集したアリペイの口座情報と機密性の高い個人情報がネット上で大量に漏れ始めた。アリペイは声明を出し、漏れた情報の中には実名やパスワードなどの重要なプライバシーは含まれていないとしたが、インターネット環境の中で決済サービス情報の安全性が直面している課題は確かに懸念すべきものだ。

中国金融認証センターの王梅社長補佐は「インターネットバンキングでのリスクは主に2つの面から生じます。第1は情報のセキュリティーリスクで、犯罪者は往々にしてハッキングのテクニックやこうした重要情報を掌握している一部の組織の管理上の盲点を利用して情報を盗み、それを売って利益を得ます。第2には、信用リスクで、ピアツーピア(P2P)のネットローンを例にとると、クレジットカードの不正な現金化や資金洗浄目的の取引が頻繁に発生します。しかも、それがますます密かに行われるようになって来ています。同時に、利用する側の情報が不透明で、第三者機関による借り手の適格性評価がないため、ネットローンでの『雲隠れ』が頻発しています」としている。

 

バーチャル空間の

安全を保障

しかし、インターネットバンキングの急速な発展の勢いを阻むことは難しい。レポートでは、今後のインターネットバンキングはモバイル化とイーコマース化の方向に発展し、総合的なビジネス•インテグレーション•プラットフォームを構築して、インターネットバンキングサービスと商品の全面的な革新を促進し、広く認知されたサービスブランドが出現して、伝統的な金融サービスとインターネットバンキングの融合が加速するだろう、と指摘している。

中国人民銀行科学技術司の王永紅司長は「インターネットバンキングも、実際はインターネット企業が金融業を行っている訳で、企業の事業拡大です」として「現状のインターネットバンキングの安全性について言えば、物理的には社会秩序を維持する系統的な体制とメカニズムがすでに出来上がっていますが、バーチャル空間については、私たちは再度系統的な秩序を作り上げなければなりません。併せて、ネットワーク空間と物理空間の対応関係も構築しなければなりません。具体的な金融の分野で言えば、つまりネットワーク上での金融情報の安全性です」と語っている。

王永紅司長は「金融は応用部門であり、その安全は2つのベースの上に成り立っています。まず必要なのは国による情報安全保障体系で、この体系がなければ私たちは安心して暮らせません。その次にはメーカーで、メーカーが安全な製品を開発してこそ、業務部門は安心してそれを応用できるのです」と語っている。

 

違法な資金調達は断固処罰

中国人民銀行金融消費者保護局の焦瑾璞局長は「現在はインターネットバンキングに対する管理監督が不明確です。インターネットバンキングはどれも、通常は業界をまたいで運営されています。タオパオの『余額宝』(注)を例にとると、金融、インターネット、小売りなど多くの業種にまたがっていて、こうした商品はいったい銀監会(中国銀行業監督管理委員会)が管理するのか、あるいは証監会(中国証券監督管理委員会)、その他の関連部門が管理するのか、現状ではまだ不明確です」と語っている。

インターネットバンキング専門委員会の馬明哲会長は「インターネットバンキングの本質はやはり金融で、業界の秩序ある健全で、持続的な発展を確保するには『一行三会(中国人民銀行、中国銀行業監督管理委員会、中国証券監督管理委員会、中国保険監督管理委員会)』の指導の下で絶えずプラットフォームを強化し、リスク管理を改善することしかありません」と語っている。

劉士余副頭取は「P2Pプラットフォームは違法な資金プールになってはならないだけでなく、保障と融資をセットにしてはなりません。伝統的なオフラインの金融業務をオンライン上で展開するには、オフライン金融業務の管理監督規定を遵守する必要があります。中国人民銀行などの管理監督部門は各公安機関と歩調を合わせ、インターネットバンキング業務を利用して詐欺を働く犯罪活動に打撃を与え、正常なインターネットバンキングの健全な発展を促進していきます。別の面では、業界は自律作用を積極的に発揮して、インターネットバンキングに従事する組織の適正な管理を指導、支援して遵法経営によってポジティブな力を発揮しなければなりません」と語っている。

王梅社長補佐は「インターネットバンキングの安全性と信頼性を保障するには3つの面から着手すべきです。第1は安全で信頼できるネットの認証システムを作ること。第2は多様な方法を用いて金融取引の安全性を保障すること。第3には教育、指導と広報を強化することです」としている。

(注)余額宝:アリババが決済サービスの支付宝(アリペイ)に付加した新機能。支付宝にチャージした金額を余額宝に移すと高い利息が付く上に、チャージした金額はネットショッピングや携帯電話、各種公共料金の支払いに使える