対外的上昇と国内的下落の大きなコントラスト
人民元の対外価値の上昇と国内価値の下落

昨今、人民元の対外価値の上昇と国内価値の下落という問題が広く関心を集めている。多くの人が生活の中でこうした疑問を持っている。人民元はずっと価値を上げ続けているのではないのか。物を買うのに、何故今は昔よりはるかに高いのか。人民元はますます値打ちが低くなり、これでは切り下げではないか。人民元は何故国外では価値が上昇し、国内では値打ちを下げているのか。

 

人民元を追い求める大量の外資

データによると、2005年7月21日の人民元の為替改革以前は、人民元の対米ドル為替レートの中間値は8.2765だった。昨今では、それはすでに6.1450にまで上昇している。

首都経済貿易大学の蘭紀平経済学教授は「8年前は人民元の対米ドル交換レートは1ドル8.28元(約135円)で、当時の1000人民元(約1万6330円)は120.77ドルにしか交換できませんでした。この8年で人民元の米ドルに対する上昇は累計で34%を超えています。現在、人々が持っている人民元はもっと多くの米ドルと交換でき、米ドルとの交換という点で言えば、為替レートの上昇で人民元はますます価値のあるものになっています」と語っている。

人民元の為替レート変動の根本原因は中国経済の大きな変化にある。深?都市研究会の顔安生エキスパートアドバイザーは「以前の中国は生産力の面で立ち遅れており、輸出できる商品も少なく、大量の商品や消費物資は輸入に頼っていました。このため人民元を持ちたいと願う人はいませんでしたが、現在では中国は世界第2の経済大国であり、また世界の輸出大国です。同時に、中国の投資環境が改善され、その価値が高まったことで、大量の国際的な資金が中国に流れ込みました。こうした状況下で、輸出によって生まれた巨額の外貨であれ国外から流れ込んだ大量の外資であれ、どちらも人民元に変換する必要がある訳で、これが大量の外資が人民元を追い求める構造を作った」としている。

同氏はまた、「市場の規律に従えば、国際的な交わりの中で人民元だけが供給不足なら、為替レートは当然上昇します。つまり中国の輸出が伸びる状態が続く限りは、外貨と外資はそのまま増え続け、人民元の価値が対外的に上昇するという市場のパワーは変わらないでしょう」と語っている。

 

マネーサプライは世界一だが

国内にいる人間にとっては、人民元の価値が下落しているという感覚はますます強くなって来ている。蘭紀平教授は例を挙げて「米は2005年に基準価格が500g当たり1.90元(約31円)だったのが、昨今では3.30元(約54円)になっており、この8年で毎年平均9.2%も値が上がっています。米を買うという価値で言えば、2005年の1000元の価値は、すでに2013に年576元に落ちています。つまり人民元は国内的には価値が下落しているのです」と語っている。

中国社会科学院金融重点実験室の劉煜輝主任は「一国の通貨の『対外価値が上がり、国内価値が下がる』という現象は新興市場国では比較的普通に起こること」として「特に柔軟性の乏しい為替制度を採用し、米ドルに対してソフトペッグ制を実行した場合、そのメリットはファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が過小評価されることによって短期間に貿易黒字を獲得し、外貨準備を蓄積して、国外から資本が流入することです。ただし、国内経済が徐々に活発になり、極端な場合加熱したりします。それにつれて物価上昇やインフレが生じます」と語っている。

蘭紀平教授は「長年、国内の経済成長が投資に依存し、信用貸付の大量の増加に依存していたことで中国のマネーサプライは過多の状態になっています。2013年の第1四半期末時点で、広義の通貨(M2)はすでに100兆元(約1633兆円)を超えています。2002年の年初の16兆元(約261兆2790億円)から、5倍を超える伸びです。中国の通貨総量とGDPの割合も200%を超えています。中国経済のボリュームは世界第2で、米国のおよそ3分の1ですが、通貨供給量は米国より1.5倍も多く、世界第1位です」と語っている。

 

病巣は投資への過度の依存

「もし資産バブルと物価上昇が続けば、経済コストも相応に上昇して貿易にマイナスの抑制作用が働き、外需吸収力の減退を招いて経済の成長スピードに下向き圧力が加わります」。劉煜輝主任は、政府が経済成長目標を維持するために最もコントロール可能な方法は、インフラ投資の拡大、国有経済部門の生産能力拡大だとして「こうした状況は直接、国内の貯蓄と投資の剰余資金の減少につながります。また国民経済の中では、対外貿易黒字と貯蓄や投資の剰余資金はバランス関係にあり、投資の拡大は対外的国際収支を一部減少させ、経済競争力を損ない、経済成長を減速させることになるのです」と語っている。

劉煜輝主任は「もし、高い成長率を維持しようと思うなら、投資をさらに拡大しなければなりません。絶えず追加投資を行うことは必然的に投資回収率の逓減を招いて資産回転率が低下し、通貨の流通速度が減速し、大量の信用資金による回転が徐々に消滅します。こうした場合、政府はさらに多くの通貨を追加し、信用貸付をさらに高い水準まで拡大することで一定の経済成長率を維持するしかありません」と語っている。

さらに劉煜輝主任は「そのため、過度に投資に依存する大まかな経済成長モデルは必ず改める必要があります。現在の中国経済の潜在成長レベルと資本収益率を十分に測定し、毎年の経済成長の目標とスピードを科学的に決めるべきです。正に習近平総書記が言うように『方式を転換し、構造を調整することは中国が必ず越えなければならないハードルであり、そのためにはスピードを合理的な範囲内に抑えなければならない。さもなければ資源、資金、市場などどれも逼迫(ひっぱく)し、転換できなければ調整もできなくなる』のです」としている。